指揮者・佐渡裕の“推し”の見つけ方「壁を作らず好奇心を持って」
Apple Music Classical「ストーリー・オブ・クラシカル」日本語版で案内人を務める指揮者の佐渡裕さん。中世から現代に至るまで、さまざまな時代の音楽の謎を佐渡さんのガイドで解き明かしていく、初心者にもぴったりな音声ガイドです。今回、佐渡さんにクラシック音楽の楽しみ方、推しの見つけ方を伺いました。
名も知らない音楽家との出会いは発見だった
——ご自身が案内人を務めている「ストーリー・オブ・クラシカル」を実際に聞いてみていかがでしたか。
佐渡裕(以下、佐渡) 自分の声を聞くのは恥ずかしいですね。こんな声をしているんだ、と。全編ガッツリと話している自分の声を聞くのは、なかなか抵抗がありました(笑)。
——収録はかなり苦労されたそうですね。
佐渡 もともと英語の原文があって、それを日本語訳しているので、普段使わない言葉が出てきたり、わかりづらい音楽の専門用語が出てきたり、チェックしながら変えていく作業は大変でした。それに、僕は普段関西弁を話すので、この仕事をいただいた時に、「関西弁のイントネーションを直さなくていいですか?」と聞きました。そのままでいいという許可はもらったのですが、標準語っぽくしゃべっているのを聞いて、うわっと思いました(笑)。
京都市立芸術大学卒業。故レナード・バーンスタイン、小澤征爾らに師事。1989年ブザンソン指揮者コンクール優勝。1995年第1回レナード・バーンスタイン・エルサレム国際指揮者コンクール優勝。これまでパリ管弦楽団、ベルリン・ドイツ交響楽団、ケルンWDR交響楽団、バイエルン国立歌劇場管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団等、欧州の一流オーケストラに多数客演を重ねている。2015年9月より、オーストリアを代表し110年以上の歴史を持つトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督に就任し、欧州の拠点をウィーンに置いて活動している。
国内では兵庫県立芸術文化センター芸術監督、シエナ・ウインド・オーケストラの首席指揮者を務める。CD録音は多数あり、最新盤はトーンキュンストラー管弦楽団を指揮した21枚目のCD「マーラー:交響曲第7番」を2024年10月にリリース。著書に「僕はいかにして指揮者になったのか」(新潮文庫)、「棒を振る人生~指揮者は時間を彫刻する~」(PHP文庫/新書)など。出光音楽賞(1991年)、モンブラン国際文化賞(2003年)、渡邉暁雄音楽基金音楽賞(2003年)、岩谷時子賞(2014年)、文部科学大臣表彰(2024年)などの受賞歴がある。
2023年4月より新日本フィルハーモニー交響楽団第5代音楽監督に就任。
http://yutaka-sado.meetsfan.jp
――どんな人に向けて話すか、意識はしましたか。
佐渡 やはり専門的な話もあるので、オーケストラが好き、クラシックの世界にもう少し深く入ってみたいという人にとってはすごくいいなと思います。素晴らしいのは、たくさんのパートがあって、いろいろな時代のことがわかるところ。バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンなど誰でも名前を知っている作曲家に、どういう背景があって誕生するのか、どのように曲を作るに至ったのかなどを知ることができます。僕ですら知らない音楽家がいっぱい出てくるのですが、そういう人たちがいたからこそ、天才たちが生まれるきっかけになったのは発見があり、おもしろかったですね。
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