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2024.10.27
特集「超絶技巧のひみつ」

リスト《ラ・カンパネラ》の初版は今より何倍も難しかった!? ピアニスト・金子三勇士が解説!

現在広く知られているリストの《ラ・カンパネラ》には実は初版があり、しかもものすごく難しい!? さらには、初版からの音楽の変化を見ることで、リストの作曲家としての歩みが読み取れる! ピアニストの金子三勇士さんが、初版の激ムズポイントやリストにとっての超絶技巧とはどういうものだったのか、解説します。

©︎Seiichi Saito

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リスト《ラ・カンパネラ》の知られざる初版

作曲家フランツ・リストの名前を聞けば、真っ先に《ラ・カンパネラ》を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。この作品はとくに日本における人気が高く、中村紘子さん、フジコ・ヘミングさんをはじめ、これまで多くのピアニストによって実演され、広く愛されてきました。そんな誰もが知る名曲に、普段あまり演奏されない「初版」があったことをご存知でしょうか?

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そもそもこの作品は、リストがイタリア出身の「鬼のヴァイオリニスト」ニコロ・パガニーニの演奏を聴き、そのすさまじい技巧と熱の入ったパフォーマンスに感銘を受けて書かれたもの。パガニーニの旋律を元にした、いわば編曲なのです。

初版は Etudes d’execuion transcendente d’apres Paganini〜「パガニーニによる超絶技巧練習曲」第3番、変イ短調、1838年版。一般に知られているバージョンは Grandes Etudes de Papanini〜「パガニーニによる大練習曲集」の第3曲、嬰ト短調、1851年版。また、この間にもいくつかのスケッチ譜が発見されていることから、リストは数回に渡ってこの曲を書き直していたことがわかります。

一般に知られている「パガニーニによる大練習曲集」第3曲

初版の「パガニーニによる超絶技巧練習曲」第3番

初版はとにかく難しい!

リストが27歳のときに書いた初版は、全体的に「若い」印象が強く、エネルギーと挑戦に溢れた一曲。この頃のリストはコンサートをメインに活動していたこともあり、聴衆を意識した超絶技巧とパフォーマンス要素が目立ちます。

曲の構成とバランス、ところどころに使われている無理のある技法、さらには変イ短調という不自然な調を見ても、まだまだ作曲家としての経験が浅いことがわかります。

金子さん的に「無理があるポイント」 初版にツッコミを入れてもらいました!

対する1851年版のリストは40歳。初版からの13年間で多くの作品を書き、作風もかなり確立されたと言えます。ある意味、《ラ・カンパネラ》の変化の中に、彼の作曲家としての歩みそのものが写し出されているのかもしれません。

リストにとっての超絶技巧とは?

リストは「ピアノの魔術師」と呼ばれ、若い頃はアイドルのような人気を誇り、エンターテイナーとしてのキャラクターが面白おかしく紹介されるケースがほとんど。超絶技巧を披露したのも聴衆を楽しませるためと語られることがあります。しかし、そのようなエピソードが誕生したのはすべて彼が20代の頃、正に《ラ・カンパネラ》初版の時期なのです。

その後迎えた挫折により第一線の演奏活動から身を引き、作曲家として、また教育者として新たな一歩を踏み出します。この頃から彼の作品に登場する超絶技巧は単なるエンターテインメントではなく、感情表現のための手段へと変わっていきます。ヴィルトゥオーゾなテクニックの裏には、必ず作曲家が描きたいドラマがあるということです。

《ラ・カンパネラ》もまさしくそんな一曲。題名が意味する「鐘の音」から聴こえてくるドラマこそが、この作品が愛され続ける理由であり、本当の魅力ではないでしょうか。

晩年のリスト(亡くなる4か月前の1886年3月撮影)
出演情報
金子三勇士が届ける理系作曲家の対比 ~時空を超えた運命の出会い~ ベートーヴェン×リスト

日時: 2025年2月22日(土)14:00開演

会場: 横浜みなとみらいホール

曲目: リスト/パガニーニ大練習曲集 第3曲「ラ・カンパネラ」嬰ト短調 S.141 R.3b、リスト/超絶技巧練習曲集 第4曲「マゼッパ」ニ短調 S.139/4 R.2b、ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 Op.57「熱情」

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