「木管五重奏曲 変ホ長調(オーボエ、3本のホルン、ファゴットのための)」——ついにボン時代最後の作品!
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
ついにボン時代最後の作品! 「木管五重奏曲 変ホ長調(オーボエ、3本のホルン、ファゴットのための)」
オーボエ、ホルン3本、ファゴットという変則的な編成による管楽五重奏曲は、1792年11月にウィーンに進出する以前にボンで作曲されたもの。
ホルン3管の響きが大変に魅力的で、完成度の高い第1楽章。
長調でありながら物悲しさが支配する第2楽章の開始部は、ファゴットがラメントバス(嘆きのバス)にも似た下降音階をバス声部で演奏することで性格が決定されている。
未完の第3楽章は短い動機的な分散和音音形で律動する快活なフィナーレとなることを予感させるが、トリオ部もない断章となっている。それでも、先行する2つの楽章のホルンの響きと高音のオーボエ、低音のファゴットのアンサンブルの絶妙な響きは他に例を見ないほど魅力的だ。
解説:平野昭
未完ながら、ボン時代に培った創造力を十分に感じさせる作品ですね。
今日で【ボンでの少年・青年時代】は最終夜となります。ベートーヴェンが作曲を始めた12歳から、ウィーンに旅立つ22歳までの作品を聴いてきましたが、いかがだったでしょうか。早くもベートーヴェンらしさを感じさせる曲もあれば、眉間にシワを寄せた肖像画からは想像できないような、かわいらしい曲もありましたね。明日からのウィーン時代もお楽しみに。
「木管五重奏曲 変ホ長調(オーボエ、3本のホルン、ファゴットのための)」WoO208
作曲年代:1792年旅立ち直前(ベートーヴェン22歳)
作品構成:
第1楽章が変ホ長調、4分の4拍子(テンポ表記なし)、全277小節で、第2楽章はアダージョ・メスト、変ホ長調、4分の2拍子の55小節。これに対して第3楽章がメヌエット表記のアレグレット、変ホ長調、4分の3拍子で、わずか19小節だけしか残されていないため、未完の断章とされている。
補足:
以前はHess19及びHess316として整理されていたが、ベートーヴェン新全集(ヘンレ社)で批判校訂出版されてからWoO208という整理番号で呼ばれている。近年では、第3楽章のメヌエットを、19世紀の作曲家L.A.ツェルナーが補完した楽譜などもあり、まとまりある管楽五重奏曲として演奏されている。
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