プレイリスト
2025.07.21
ONTOMOプレイリスト・プロジェクト「髙木竜馬×FANTASISTA!」

サッカー好きのピアニスト・髙木竜馬が選ぶ「ファンタジスタ」なピアノ演奏!

アーティスト×WebマガジンONTOMOがお送りする「ONTOMOプレイリスト・プロジェクト」。今をときめくアーティストの皆さんがテーマに沿ったプレイリストを作成、選曲についてのコメントも公開します。今回はサッカー少年でもあったピアニストの髙木竜馬さんが、サッカー用語「FANTASISTA!(ファンタジスタ)」のお題でファンタスティックなピアノ・プレイを集めてくれました。

©︎Yuji Ueno

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選曲ノート by 髙木竜馬

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皆さま、はじめまして! ピアニストの髙木竜馬と申します。

今回は、私が思わず「ファンタジスタ!」と叫びたくなるような珠玉の音源をご紹介させていただきたく筆を執りました。私が心から魅了された演奏をぜひご紹介させてください! 偉大な巨匠たちによる、目くるめくファンタジックな音の世界へとご案内いたしますので、どうぞ最後までお付き合いいただけましたら幸いです。

「ファンタジスタ」というテーマをご提案いただいた際に真っ先に浮かんだのが、ヴラディミール・ホロヴィッツでした。

実は私、小学生のころからホロヴィッツに夢中でして……。ホロヴィッツが編曲した作品を演奏したり、お小遣いをコツコツと貯めて、ホロヴィッツのCD全集(お値段3万円!)を購入したことなど、今でも懐かしく思い出されます。

そんなホロヴィッツの魅力は、人の心を深く捉えて離さないその表現の魔力と、時に”悪魔的”とすら形容される桁外れのヴィルテゥオーゾ性にあると私は思っております。

このドビュッシーのなんたる美しさ! どんな言葉を尽くしても、この演奏の前ではかえってチープに響いてしまう気がします。ぜひ耳を傾けて聴いてみてください。きっと見たことのない景色が広がり、感じたことのない温もりが、そっと包んでくれることと思います。

ドビュッシー:《子どもの領分》~「お人形のセレナーデ」ヴラディミール・ホロヴィッツ(ピアノ)

こちらのプロコフィエフ、一聴すると簡単な曲に聴こえてしまうほどの完成度の高さですが、実はとんでもなく難しい!

極めつけは最後のコーダ、なんとホロヴィッツは音を増やして、さらに派手にしてるんです。……え、それアリ? って思わず突っ込みたくなってしまいます(笑)。

プロコフィエフ:「トッカータ Op.11」ヴラディミール・ホロヴィッツ(ピアノ)

ホロヴィッツといえば、ラフマニノフ。中でもラフマニノフのピアノ協奏曲第3番は、ホロヴィッツがキエフ音楽院の卒業試験で演奏して以来、生涯の十八番のレパートリーであり続けました。ラフマニノフ本人もその演奏の素晴らしさに感嘆したと言われています。

75歳を目前にしてズービン・メータ指揮 ニューヨーク・フィルハーニックと共演した記念碑的ライブ録音も捨て難いですが、ここではぜひ、フリッツ・ライナー指揮 RCAビクター交響楽団との演奏をお聴きいただきたいです。

技術と音楽性が融合して、極めて高い次元でシナジーを起こしている、奇跡のような瞬間が息づいています。

これまでに何度聴いたか分からないこの演奏は、私にとってまさに“青春”そのもの。何度聴いても胸が熱くなり、今でもふと聴き返すたびに、思わず涙が込み上げてくるのです。

ラフマニノフ:「ピアノ協奏曲第3番」ヴラディミール・ホロヴィッツ(ピアノ)

さて、このままではホロヴィッツ特集の記事になってしまいますので、その他のピアニストによる演奏もご紹介させていただきます。

私がもっとも敬愛するピアニストの一人が、アルトゥール・ベネデッティ・ミケランジェリです。ミケランジェリといえば、極限まで磨き抜かれた精緻な演奏、すべての音が完璧な場所に配置されたような構築美を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし——ご存知でしょうか? 若き日のミケランジェリは、ホロヴィッツにも引けを取らない、凄まじいヴィルトゥオーゾとしての姿を見せていたのです。コーダではオーケストラを置いてきぼりにしてしまう疾走感で、聴衆の尋常ならざる熱狂的な拍手と歓声からも興奮が伝わります。

リスト:「ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調」アルトゥール・ベネデッティ・ミケランジェリ(ピアノ)

現代のピアニストでもっともファンタジスタという形容が似合うピアニストに、ダニール・トリフォノフが挙げられます。トリフォノフの魔力的な表現に何度心を奪われたことでしょう。

あれだけ多忙な日々の中で、常に新しいプログラムに挑み続け、ひとつひとつの作品に新たな息吹を吹き込み、曲ごとにハッとするような未知の世界を私たちに見せてくれる——。そんな彼のようなピアニストと、同じ時代を生きていけることは、この上ない喜びであり、至福です。

プロコフィエフ:「ピアノ協奏曲第2番」ダニール・トリフォノフ(ピアノ)

現代に生きるピアニストで最も好きなピアニストは誰か——。この問いにわたしは考える間もなく、骨髄反射のように「グリゴリー・ソコロフ」と答えることでしょう。

ウィーン留学時代に、ソコロフの実演に何度となく触れる機会を得られたことは、今もなお、私の人生でもっともかけがえのない体験として、心に深く刻まれています。あれほどまでに美しい音、そして意味のある響きを聴く機会というのは、ソコロフの演奏からでしか得られない特別な体験でした。特に、シューマンの幻想曲、ショパンのピアノソナタ第3番、そしてブラームスの3つの間奏曲を聴いた際には、知らず知らずのうちに涙が頬をつたいました。

ソコロフはレパートリーが膨大なことから、多くの録音、というより演奏音源がYouTubeなどにもアップされていますが、正規録音として残されているこちらのプロコフィエフは、このソナタにおける決定盤と言って差し支えないでしょう。完成度の高さに加えて、ライブ特有の熱量によって、異次元の世界へと導かれます。

プロコフィエフ:「ピアノ・ソナタ第8番」グリゴリー・ソコロフ(ピアノ)

今回はピアニストに当てて「ファンタジスタ!」な演奏を紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか? 私も日々、新しい演奏、新しい曲を聴いては、そのたびに心を動かされていますので、正直に申し上げてまだまだ、まだまだ! ご紹介したい演奏が尽きることはありません。けれども、まずは今回ご紹介した演奏をお聴きいただけましたら、これほど嬉しいことはございません。

最後までお読みいただきまして、有難うございました。どうぞ皆さまの毎日が、音楽とともに温かく輝きますように!

髙木 竜馬
第16回エドヴァルド・グリーグ国際ピアノコンクールにて優勝及び聴衆賞を受賞し一躍世界的に脚光を浴びる。その他にも第26回ローマ国際ピアノコンクールなど7つの国際コンクールで優勝。オスロフィル、ベルゲンフィル、ウクライナ国立フィル、ウィーン室内管、NHK交響楽団、読売日本交響楽団、東京フィル、東京交響楽団、日本フィル、新日本フィル、大阪フィル、大阪交響楽団、関西フィル、日本センチュリー交響楽団、京都市交響楽団、群馬交響楽団、神奈川フィル、富士山静岡交響楽団、ARKシンフォニエッタ等のオーケストラと、ハンス・グラーフ、エドワード・ガードナー、ゲルゲイ・マダラシュ、アンドレア・バッティストーニ、小林研一郎、秋山和慶、尾高忠明、高関健、佐渡裕、藤岡幸夫、沼尻竜典、下野竜也、鈴木優人、杉本優、三浦文彰等の指揮で共演。ウィーン楽友協会やシェーンブルン宮殿等の世界各地の著名なホールで演奏するなど広範な演奏活動を続けている。NHK総合『ピアノの森』では雨宮修平メインピアニスト役で出演した他、映画『アナログ』やテレビ朝日『題名のない音楽会』、NHK Eテレ『青のオーケストラ』などメディアや音楽祭への出演多数。2024年4月にはイープラスミュージックよりデビューアルバムとなる『Metamorphose』をリリースし好評を博す。京都市立芸術大学専任講師に就任し後進の指導にも当たっている。
髙木竜馬さん出演情報
イープラス presents 『ピアノの森』ピアノコンサート 2025 SUMME
2025年7月30日~9月14日 全14公演
 
【神奈川】7/30(水) 杜のホールはしもと
【茨城】8/2(土) 水戸市民会館ユードムホール 中ホール
【東京】8/3(日) 東大和市民会館ハミングホール 大ホール
【千葉】8/8(金) 市川市文化会館 小ホール
【愛知】8/11(月・祝) アマノ芸術創造センター名古屋
【大阪】8/16(土) 住友生命いずみホール
【北海道】8/22(金) 札幌コンサートホール Kitara 小ホール
【北海道】8/23(土) 函館市芸術ホール
【千葉】8/27(水) スターツおおたかの森ホール
【埼玉】8/30(土) 大宮ソニックシティ 小ホール
【栃木】8/31(日) 小山市立文化センター 大ホール
【熊本】9/6(土) 益城町文化会館
【福岡】9/7(日) FFGホール
【東京】9/14(日) 浜離宮朝日ホール
 
詳しくはこちらから
イープラスpresents スタクラ 2025 in 横浜─ STAND UP! CLASSIC ─

日時: 2025年10月4日(土)、10月5日(日)

※髙木竜馬は10月5日(日)に出演

会場: みなとみらいホール大ホール

詳しくはこちらから

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