8つの歌曲(リート)第8曲「小さな愛らしい花」——愛する人の悲劇的な結末を嘆く
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
愛する人の悲劇的な結末を嘆く――8つの歌曲(リート)第8曲「小さな愛らしい花」
さまざまな詩人による、ほらふき話、恋のときめき、厭世、死への憧憬、戯言、謙虚といった人生の機微について歌った8曲からなる。
その第8曲は、1789年にゲッティンゲンで出版されたゴットフリート・アウグスト・ビュルガー(1748~94)の『G.A.ビュルガー詩集』に発表された詩を歌ったもの。
「小さな花が咲いている、どこかの静かな谷間に。花は人の目と心を楽しくさせる、夕陽の光のように。花は黄金よりも貴いもの。夜にも美しい花を胸に抱く者は天使のように美しくなる。ああ! 私の宝であったあの人、死が彼女を私の手から奪っていった、残酷にも、婚礼のすぐ後に。その時お前にはわかるだろう、真実の光の中で世にも愛らしい小さな花が何を成し得るかを」
悲劇的な結末になるメルヒェンが淡々と語られる。
全12節からなる有節歌曲であるが、初版譜の段階で第1、2、3、10節の4節だけが印刷された。最終第12節の最後の詩句は「だから、私はそれを世にも愛らしい小さな花(ブリュームヒェン)と呼ぶ、だからその名は慎み深さ」となっている。
解説・平野昭
悲劇的な詩と淡々とした旋律が印象的な作品です。可愛らしいタイトルにも、深い意味が込められているのですね。
8つの歌曲(リート)第8曲「小さな愛らしい花」Op.52
作曲年代:1790年代半ば頃か?
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