「ひとりごと」――恋に落ちた男のコミカルなモノローグ
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
恋に落ちた男のコミカルなモノローグ 「ひとりごと」
1792年ボン時代に作曲に着手していたが、完成はウィーンに進出して間もない1793年と推定されている。6節からなる詩の作者は、ヨハン・ヴィルヘルム・ルートヴィヒ・グライム(1719~1803)という詩人。
恋に落ちた男がわめいたり、朗々と歌い上げたり、そうかと思うと呟いたりと、心はときめき、浮き立てども成す術もなく、戸惑う様子がコミカルに描かれる劇中アリア風の作品。
「僕は移り気浮気な男、これまで愛など無視してた。そうすることが好きだった、ああ、それなのに、この僕が、そうだよ、わかっているよ、ああどうしよう僕は恋をしている。
僕は婚礼歌など毛嫌いしてたし無視してた、ただただ愛をもてあそぶだけ、僕は不実でだらしのない男、そうだよ、わかっているよ、その僕がドリスに恋をしているのだ。
なぜなら、なぜなら、ああそうなのだ、彼女に出会ったその日から、他のどんな美人も美しくない、そうだよ、どんな美人も美しくない、そうだよ彼女と出会ってからは。
ああ、この胸のときめき、僕の心を支配する女暴君、女暴君、わかっているよ、そうなんだ。わかっているよ百も承知さ、僕は彼女に恋してるんだ」
解説・平野昭
「ひとりごと」の作曲を始めたとされている1792年に、どうやらベートーヴェンも恋をしていた様子(詳しくは第38・39夜で)。慌てふためいているのは、もしかするとベートーヴェン自身なのかもしれませんね。
「ひとりごと」WoO114
作曲年代:1792/1793年(ベートーヴェン22/23歳)
出版:1888年
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