プレイリスト
2020.01.20
おやすみベートーヴェン 第36夜【ボンでの少年・青年時代】

「ひとりごと」――恋に落ちた男のコミカルなモノローグ

生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。

ONTOMO編集部
ONTOMO編集部

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

監修:平野昭
イラスト:本間ちひろ
編集協力:水上純奈

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恋に落ちた男のコミカルなモノローグ 「ひとりごと」

1792年ボン時代に作曲に着手していたが、完成はウィーンに進出して間もない1793年と推定されている。6節からなる詩の作者は、ヨハン・ヴィルヘルム・ルートヴィヒ・グライム(1719~1803)という詩人。

恋に落ちた男がわめいたり、朗々と歌い上げたり、そうかと思うと呟いたりと、心はときめき、浮き立てども成す術もなく、戸惑う様子がコミカルに描かれる劇中アリア風の作品。

 

「僕は移り気浮気な男、これまで愛など無視してた。そうすることが好きだった、ああ、それなのに、この僕が、そうだよ、わかっているよ、ああどうしよう僕は恋をしている。

僕は婚礼歌など毛嫌いしてたし無視してた、ただただ愛をもてあそぶだけ、僕は不実でだらしのない男、そうだよ、わかっているよ、その僕がドリスに恋をしているのだ。

なぜなら、なぜなら、ああそうなのだ、彼女に出会ったその日から、他のどんな美人も美しくない、そうだよ、どんな美人も美しくない、そうだよ彼女と出会ってからは。

ああ、この胸のときめき、僕の心を支配する女暴君、女暴君、わかっているよ、そうなんだ。わかっているよ百も承知さ、僕は彼女に恋してるんだ」

解説・平野昭

「ひとりごと」の作曲を始めたとされている1792年に、どうやらベートーヴェンも恋をしていた様子(詳しくは第38・39夜で)。慌てふためいているのは、もしかするとベートーヴェン自身なのかもしれませんね。

作品紹介

「ひとりごと」WoO114  

作曲年代:1792/1793年(ベートーヴェン22/23歳)

出版:1888年

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