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2020.03.09
おやすみベートーヴェン 第85夜【天才ピアニスト時代】

ニ重奏曲《2つのオブリガート眼鏡付》——ユニークな名前のヴィオラとチェロのデュエット

生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。

1792年、22歳のベートーヴェンは故郷ボンを離れ、音楽の中心地ウィーンに進出します。【天才ピアニスト時代】では、ピアニストとして活躍したウィーン初期に作曲された作品を紹介します。

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

監修:平野昭
イラスト:本間ちひろ

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ユニークな名前のヴィオラとチェロのデュエット ニ重奏曲《2つのオブリガート眼鏡付》

1796年の演奏旅行でベルリンに滞在中の5月から6月ころに作曲されたようだが、しばらく放置され、97年の1月ころに書き上げられたと思われる。

 

ヴィオラとチェロによる珍しい二重奏曲の大傑作。残された自筆譜の表題にDuett mit zwei obligaten Augengläsern von l.v.Beethoven(1つのオブリガート眼鏡付きのデュエット、l. v. ベートーヴェンによる)と記されている。

 

おそらく眼鏡をつけなければ楽譜も読めない、親しい友人の弦楽器奏者のために作曲されたと考えられる。となれば、チェロ奏者はウィーン時代初期からの親友で、リヒノウスキー侯爵邸サロン・コンサートの常連でもあったアマチュアのチェロの名手のニコラウス・ズメシュカル・フォン・ドマノヴェチュ(1759~1833)であろう。

 

ヴィオラ奏者は、このころのシュパンツィヒ四重奏団(1790年代にウィーンで設立され、毎週のように個人宅でコンサートを開き、ヨーロッパ中に名声を轟かせた。ベートーヴェンの四重奏曲を数多く初演。)ベートーヴェンの四重奏曲のメンバーであったかもしれない。あるいは、ヴィオラ奏法も学んでいたイグナーツ・シュパンツィヒ(1776~1830)であったかもしれない(でも、若者たちは近視眼ではなかったので、眼鏡はつけていない)。

 

旋律楽器2艇だけとは思えないほど充実した2楽章構成の音楽。第1楽章に速度表記はないが、おそらくアレグロの4分の4拍子。全200小節だが、前半の69小節(呈示部)が反復されるソナタ形式。第2楽章はミヌエットと表記され、48小節の主部とト短調による27小節のトリオ部が置かれ、主部にダ・カーポしたあと12小節のコーダで曲を閉じる。

 

解説:平野昭

 

眼鏡をかけていた友人のために作曲したベートーヴェン。ユーモアある一面が垣間見られますね。

作品紹介

ニ重奏曲《2つのオブリガート眼鏡付》WoO32

作曲年代:1796~97年?(ベートーヴェン26~27歳?)

出版:1912年/53年

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