AI×アンドロイド「オルタ3」の4社共同プロジェクト始動! 発表会にオペラの大野和士、渋谷慶一郎、島田雅彦も出席
人間によるオーケストラを指揮しながら、自在に動き回り、自ら歌うアンドロイド「オルタ3」。AI(人工知能)×AL(人工生命)によるオペラは、私たちにどんな未来を見せてくれるのだろう。
2020年8月下旬に新国立劇場オペラパレスで上演される企画に向けて、4社共同プロジェクトが始動した。その記者会見の様子を前編、音楽監督・大野和士氏と作曲家・渋谷慶一郎氏のインタビューを後編で紹介する。
1958年東京都生まれ。81年に早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業、(株)日本経済新聞社へ記者として入社。企業や株式相場の取材を担当、88~91年のフランクフルト支...
4社共同プロジェクト「人工生命×アンドロイド《オルタ3》」とは?
ミクシィと大阪大学、東京大学、ワーナーミュージック・ジャパンは、AI(人工知能)と人間のコミュニケーションの可能性を探るために開発された「人工生命×アンドロイド《オルタ3》」における「4社共同プロジェクト」を立ち上げ、2019年2月28日、東京・初台の新国立劇場で合同記者発表会を行なった。
大中小の3劇場をつなぐエントランス空間の階段に出席者用の椅子、国立音楽大学有志(学生と卒業生)によるオーケストラ、ピアノ、そしてオルタ3を配置。4社の代表と担当者がそれぞれの立場から、プロジェクトの概要を説明した。オルタ3を活用する新作オペラの担い手となる同劇場オペラ芸術監督の大野和士、作曲家の渋谷慶一郎、作家の島田雅彦の3氏以外の発言を、まず再現する。
木村弘毅・ミクシィ代表取締役社長執行役員
「世界初公開となるオルタ3は、コミュニケーション能力を備えたロボットです。私たちは研究を通じ、人類のコミュニケーションの根源にあるものを探っていきます。ミクシィはSNS(ソシアルネットワーキングサービス)などで培った自社のIT(情報工学)技術を生かして参画。アンドロイドの動きをコンピュータ上で再生するシミュレーターの分野を受け持ちます」
石黒浩・大阪大学教授(工学博士)
「東京大学の池上高志先生とは4年前から一緒に、人工生命とロボットの研究をしてきました。これを機会生命体のアンドロイドでさらに進め、人をつなぐプロジェクトにします。VR(ヴァーチャルリアリティ=仮想現実)は普通、非日常のリアルな再現を意味しますが、オルタ3では非日常を日常に生かす形のVRも考えています」
池上高志・東京大学教授(理学博士)
「AIは人がやっていることを(模倣して)やるのに対し、AL(人工生命)は自分でやることを決めるアルゴリズム。飛行機と鳥の違いに似ています。私たちはオルタナティヴ・マシンという株式会社を設け、飛行機や自動車とは違う新しい機械の創造に特化していきます」
増井健仁・ワーナーミュージック・ジャパン エグゼクティブ・プロデューサー
「当社は従来、人間と人間のショウを手がけてきました。今回は人間とアンドロイドのコミュニケーションを通じ、どのようなショウをつくれるかの観点から参画しました」
小川浩平・大阪大学講師(工学博士)
「オルタ3の設計開発、制作しました。今までつくってきたロボットとの比較では、現実世界の中で人間の想像力を喚起できる、強烈な存在感を備えたロボットをつくれたと自負しています。VRの概念を広げ、“そこら辺にいる”感じのロボットが人と人をつなぐメディアとして機能するのです」
土井樹・オルタナティヴ・マシン社員(東京大学総合文化研究科博士課程)
「私は池上研究室ととともに、オルタ3のすべてをコントロールする「Aライフエンジン」の開発に当たっています。オルタのシステムをより多くの人々に使っていただくエンジンとして、提供していくつもりです」
村瀬龍馬・ミクシィ執行役員CTO
「シミュレーターは仮想空間上にオルタ3を再現し、動作確認などを行ないます。オルタ本体を直接チェックできない場合にも、威力を発揮するでしょう。ミクシィが開発したゲームエンジン『Unity』を下敷きにALエンジン向けの新しいアルゴリズムをつくり、シミュレーション作業の効率化を実現しました」
内田まほろ・日本科学未来館展示企画開発課長
「2016年にオルタの実験を公開し、2017年からは常設展を代表するロボットになりました。1→2→3と段階を経て「こんなに成長したのか」と思います。機械と人間、生命とプログラムそれぞれの境界を超えながら、お客様に感動とか、思考すら与えているのです。「人工物に生命が宿る」とする日本独自のアニミズムは海外の関心も引き、世界各地の人々とオルタ3の対話が始まっています。今年3月27日から5月5日まではドイツのデュッセルドルフ、さらにロンドンでも、オルタと人間が向き合う予定です」
次いで島田雅彦(作家)の発言要旨。
「オペラとか割と得意な作家の島田です。オペラの台本を書くのは、今回が3作目に当たります。SFオペラは初めてでAIも活躍、まだ見ぬ未来への考察が含まれます。今日の子どもたちも舞台に出て、未来への人々へのメッセージを発信する作品となるはずです。とにかく「わかりやすいオペラ」を目指しており、ロッシーニのように、子どもたちが曲の一節でも歌いながら帰ってほしいと思い、台本を仕上げました」
質疑応答ではミクシィの木村社長がこれらの発言を受け、「アンドロイドと人間のコミュニケーションを究めるオルタ3のプロジェクトの演目として、音楽は欠かせません。科学技術とアートの結合により、『This is Japan(これが日本だ)!』と世界に発信できるハイ・カルチャーを目指します」と締めくくった。
3月13日にデュッセルドルフで行なわれた、アンドロイド・オペラ『Scary Beauty(スケアリー・ビューティ)』のドイツ初公演の様子(Scary Beauty / 渋谷慶一郎)
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