レポート
2019.02.20
短期連載「もっと知りたい! だから楽しい! 電子ピアノの旅 2019」file.03

打鍵・離鍵・ハーフペダル……タッチを磨きたくなる! ヤマハのハイブリッドピアノ アバングランド「N1X」

楽器選びに悩む人に向けて、驚くほど楽器として飛躍している電子ピアノのメーカー各社を人気作曲家・春畑セロリさんが巡り、いまイチオシの電子ピアノを弾きまくって実況する連載。

第3回は(株)ヤマハミュージックジャパンの本社を訪ねました。響きに耳をすませて気持ちよさそうに弾き続けるセロリさん。さて、どんな楽器なのでしょうか?

旅する音楽家
春畑セロリ
旅する音楽家
春畑セロリ 作曲家

作曲家。東京藝術大学卒。鎌倉生まれ、横浜育ち。舞台、映像、イベント、出版のための音楽制作、作編曲、演奏、執筆、音楽プロデュースなどで活動中。さすらいのお気楽...

取材・文:飯田有抄
撮影:満田 聡
提供:(株)ヤマハミュージックジャパン

この記事をシェアする
Twiter
Facebook

東京・高輪にある(株)ヤマハミュージックジャパンの本社へ。そこには発表前のハイブリッドピアノ「AVANTGRAND(アバングランド)『N1X』」が佇んでいました。なんとも有機的なフォルム。

ヤマハのアコースティックとデジタルの技術の粋が融合されたアバングランド「N1X」。
奥行きは618mm。ラウンドした形で壁際に置かなくてもカッコいい。

知りたいポイントその1:タッチ

「スイッチ感」ゼロ! タッチをリアルに追求したくなる

「N1X」は、ヤマハの伝統あるアコースティックピアノ製造技術と最新のデジタル技術を融合させたモデルです。グランドピアノのアクション機構を搭載しており、グランドピアノにしかできないと思われてきた演奏表現、たとえば素早い連打などの表現を可能にしてくれる楽器なのです。

ふわりと優しい響きに包まれる、セロリさんの《イリオモテヤマネコ》。演奏には繊細なpやppのタッチが求められる曲ですが、最新機種の「N1X」で弾いたセロリさんは、「こんなにppがどこまでも出せるなんて!」と驚きを隠せません。

数あるヒミツの一つは、打鍵・離鍵を捉える光センサー。鍵盤の下のみならず、アクション機構のハンマー部分との2箇所に付いています。アコースティックの楽器は打鍵してから音が鳴るまでに、微細なタイムラグがありますが、私たちは日頃それを無意識で感じ(生かし)て演奏しています。「N1X」は、むしろそのことに改めて気付かせてくれるほど、繊細に反応してくれるのです。

「デジタル楽器に指摘されがちな、『スイッチのON / OFF』という感覚はもはやないですね」とセロリさん。

「打鍵と離鍵の速度に応じた音がちゃんと出てくるので、『楽器と対話をしながら演奏する』ということに集中できます。自分が出した音を聴いて、それを踏まえて離鍵し、次の音をイメージしながら打鍵するという行動を、このピアノは自然に促してくれるし、タッチの仕方を磨きたくなりますね

グランドピアノと同じ鍵盤アクション機構で指もうれしい!
上の写真で鍵盤の先に見えていたのは、このアコースティックのアクション機能。

知りたいポイント その2:音

弾く人の耳に心地良い コンサートグランドピアノ「CFX」の響き

「今朝、調律と調整を済ませました! というグランドピアノを弾いている気分。ペダルもアコースティックの楽器と同様、最初は遊びの部分があって次第に重さを感じます。濁らせないように踏み続けるようなハーフペダルの表現も追求できますね」と気持ちよさそうに弾き続けるセロリさん。

音色はヤマハの最高峰コンサートグランド「CFX」、そしてベーゼンドルファーの「インペリアル」を搭載。弾いた音の弦だけでなく、共鳴弦から放たれる倍音、響板の響きなども、コンピューターによって瞬時に計算されて、6箇所に埋め込まれたスピーカーから発音されます。その響きが、奏者が座った状態で、耳の位置に自然に届くように設計されているとのこと。

「弾く人の耳の位置に届く音が、もっともリアルに再現されるというのはいいですね。家庭で楽しむことがメインの楽器ですから、まず自分の耳が気持ちよくなることが大切。気持ちがよければ、いい音楽が生まれます」

グランドピアノの音の流れに沿って6箇所に配置されたスピーカーから、楽器本体の鳴りや弦の共鳴までもが再現される

知りたいポイント その3:操作性

洗練された使いやすいデザイン

ヤマハらしく、塗りの光沢も美しい仕上がり。グランドピアノのアクションが入っているため、奥行きは61.8cmとデジタルピアノとしてはやや大きめですが、アコースティックピアノを考えればかなりコンパクト。

操作のためのボタン類は鍵盤の左に集約鍵盤楽器(チェンバロ、オルガンなど)に絞った15種類の音色を選べます。アプリにも対応しており、イラストを見ながら簡単に操作が可能となります。USBメモリーやBluetoothにも対応しているので、大型オーディオとして音楽鑑賞に使用したり、録音データをアンサンブルの練習にも活用できます。ヘッドフォンで聴く音も、スピーカーからの再生音を聴くのと限りなく近い自然な響き。

ボタン類は鍵盤左側に集約。弾く際、視界に入らないので、デジタルであることを忘れさせる
スマホの楽曲をスピーカーとして楽しんだり、録音データを使ってアンサンブルの練習もできる

無料アプリ「スマートピアニスト」

セロリさんのオススメ活用法

練習で追求できることが変わる!

これだけ繊細に音楽づくりを追求できる楽器となると、ずっと練習できることが増えますね。家にこうしたピアノがあれば、指の置き場所だけを確認して間違わなければOK、という内容よりも一段上の打鍵・離鍵の速度、ハーフペダルなどについて、練習ができそうです。

アコースティックピアノにもさまざまな個性のものがありますから、いつでもコンディションの良い楽器を弾けるわけではないのが現実です。本番で出会うピアノに自分を瞬時に合わせる力を養ってもらうことも必要。そのためにも、まずは「自分の出した音を聴いて反応する」という習慣をつけてもらいたいですね。「N1X」はそうした日々の練習に役立ってくれると思います。

大人のピアノ時間にもぴったり

あるとき、ご年輩のピアノ学習者の方からお手紙をいただいたことがありました。「お子さんが巣立ち、実家に残していったピアノで今は自分が練習を始め、それが何よりも楽しいのだ」、と。

そうした『自分にとっての特別な時間』を楽しまれている大人の方にも、「N1X」のようなハイブリッドピアノはオススメです。思い出のある楽器も素敵ですが、いつでも良いコンディションで、「CFX」や、「インペリアル」のリアルな音に触れられる楽器なら、自分の演奏に一段とうっとりできることでしょう。こうした楽器で、自分だけの音楽空間を大切に、ぜひピアノを続けていただきたいです。

楽器の情報
ヤマハ アバングランド N1X

寸法: 幅146.5×奥行61.8×高さ100.1cm(譜面台を立てた場合:116.7cm)

質量: 117kg

価格: 650,000円(税抜)

発売日: 2019年3月発売

問い合わせ: (株)ヤマハミュージックジャパン Tel.0570-006-808/053-460-5272

旅する音楽家
春畑セロリ
旅する音楽家
春畑セロリ 作曲家

作曲家。東京藝術大学卒。鎌倉生まれ、横浜育ち。舞台、映像、イベント、出版のための音楽制作、作編曲、演奏、執筆、音楽プロデュースなどで活動中。さすらいのお気楽...

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ