レポート
2021.03.30

葵トリオ、カルテット・アマービレが第22回ホテルオークラ音楽賞を受賞!

アマービレ (C)T.Tairadate、葵トリオ(C)Nikolaj Lund

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1996年から続く、将来を嘱望される音楽家を支援するメセナ活動である「ホテルオークラ音楽賞 」の第22回受賞者が「葵トリオ」(ピアノ三重奏)、「カルテット・アマービレ」(弦楽四重奏)に決定した。

ホテルオークラ音楽賞とは

ホテルオークラが、社会貢献・芸術文化事業の一環として1996年の開業35周年を機に、近年めざましい活躍を遂げ、さらに将来が嘱望される音楽家を支援・育成するための制度として創設された。2000年以降は同賞の授賞式および受賞記念演奏会を毎年実施し、今回で22回目を迎える。

葵トリオ」は、ピアノ秋元 孝介、ヴァイオリン小川 響子、チェロ伊東 裕によるピアノ三重奏のグループで、第67回ARDミュンヘン国際音楽コンクールのピアノ三重奏部門で、日本人団体として初の優勝を受賞している。3人は、東京藝術大学、サントリーホール室内楽アカデミーで出会い、2016年に結成。これまでに、第28回青山音楽賞バロックザール賞、第29回新日鉄住金音楽賞フレッシュアーティスト賞受賞。現在はドイツを拠点に、ミュンヘン音楽・演劇大学でフォーレ四重奏団のD.モメルツに師事しながら国内外で活動している。

カルテット・アマービレ」は、ヴァイオリン篠原 悠那、北田 千尋、ヴィオラ中 恵菜、チェロ笹沼 樹からなる弦楽四重奏。第65回ARDミュンヘン国際音楽コンクールの弦楽四重奏部門第3位に入賞、あわせて特別賞(コンクール委嘱作品の最優秀解釈賞)を受賞。2019年11月には、ニューヨークで行なわれたヤングコンサートアーティスト国際オーディションで第1位を獲得。2015年桐朋学園大学在籍中のメンバーにより結成されている。マルタ・アルゲリッチ、クシシュトフ・ヤブウォンスキ、ダン・タイ・ソンらと共演するなど、今後の活躍が期待されているカルテットである。

選考委員の一人である寺西 基之(音楽評論家)の選評は以下のとおり。

葵トリオ

ピアノ、ヴァイオリン、チェロによるピアノ・トリオは、4つの同質の弦楽器の調和を主眼とする弦楽四重奏とは違って、性格の違う3つの楽器がそれぞれの個性を発揮しつつ協調するところに特質がある。それだけに3人のソリストがその都度集まってもさまになるジャンルであり、そのためか徹底したアンサンブルを日頃からめざす常設のピアノ三重奏団は決して多くない。しかし「葵トリオ」はまさにそうした本格的な室内楽団体としてのピアノ三重奏団を志向し、室内楽本来の緻密なアンサンブルを追求している。全体の造型から細部の表情の彫琢まで、考え抜かれた音楽作りによって作品の本質に迫ろうとする彼らの厳しい姿勢は、ピアノ・トリオのあり方を再認識させるものといっても過言ではないだろう。また一般に知られていない隠れた名作の発掘に力を入れている点も特筆される。世界的にも数少ない常設のピアノ三重奏団としての今後の活動の広がりがおおいに楽しみである。

カルテット・アマービレ

弦楽四重奏は4つの弦楽器の紡ぎ出す音の綾が縒り合わされてひとつの世界を作り上げるという点で、他の室内楽ジャンル以上に奏者たちの緊密な一体化が求められる。すなわち4人のメンバーが奏法や解釈を共有し、それぞれが自身の奏でる声部の役割を認識した上で他の声部と密な関係を作っていかなくてはならないといういわば室内楽の究極的な形態である。そのため一流の弦楽四重奏団への道は、4人が心をひとつにして切磋琢磨していくことで初めて開けるが、「カルテット・アマービレ」はまさにその道を真摯に追い求めている新世代のカルテットだ。お互いの音をしっかり聴き合い、表現上の意思の疎通を図りつつ、濃やかに表情を練り上げながら緊密な統一体を作り上げていく彼らの演奏からは、弦楽四重奏の真髄に肉迫しようという強い意志が窺える。レパートリーも古典から現代まで幅広く、今後の活動を通してこのジャンルの奥義をさらに窮めていくことを期待したい。

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