カーチュン・ウォンが日本フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者に就任!
シンガポール出身の指揮者、カーチュン・ウォンが2023年9月に日本フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者に就任した。10月13日に首席指揮者就任記念演奏会に先立ち、記者会見が行なわれた。
理事長の平井俊邦氏は、「首席指揮者カーチュン・ウォンとこれから5年のあゆみを共にすることで、日本フィルがどのように発展していくのか楽しみ。どのような化学変化が起こるのか胸の高まりを覚えます」と期待を込めた。
2023/24シーズンについて特に注目したいのは、マーラーとアジア。企画本部長の益満行裕は、マーラーの「交響曲第5番」でウォンと日本フィルが共演したときのことを「鮮烈な色があった」と回想し、今後の取り組みでマーラーを追い求め、「第3番」、「第9番」のほか、創立70周年に向けて「第8番」にも取り組んでいくと明かした。
また、アジアの作曲家の作品にも積極的に取り組んでいきたいという。1月にはガムランをテーマにした定期演奏会も企画しており、「シンガポールの指揮者と日本のオーケストラだからこそできるアジアへの眼差しというスタンスで、チナリー・ウンとコリン・マクフィーの知られざる名曲や、第2楽章にガムランの影響が見られるプーランクの2台のピアノのための協奏曲に取り組みます。まだ若いマエストロからどのような音楽性が見えてくるのか楽しみ」と語った。ほかにも、6月には坂本龍一の作品をメインにプログラムが組まれるなど、多彩なラインナップとなっている。
その日に就任記念演奏会を控えたカーチュン・ウォンもリハーサル前に登壇し、「1回目のリハーサルはいつも一番大変で、どのように進めていくか、どのようなテンポでいくか、楽団員にどのようにやる気を出させるか、モチベーションを作っていくか考えていて、自分の中にチェックリストがあります。日本フィルとリハーサルを始めると、数分でチェックリストがどんどん進んでいく。よき音楽的なパートナーという信頼関係も感じてきています」と日本フィルハーモニー交響楽団との演奏について語った。
また「日本に来たときには日本の文化にすごくインスピレーションを受けました。その中でも、伊福部昭の作品に携わることができました。これから伊福部昭の作品を海外でも演奏できるのも嬉しく思っています。来年、首席客演指揮者を務めるドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団で伊福部昭の《シンフォニア・タプカーラ》を演奏します。過去に演奏された際の記載がすべて残っているため、日本でもヨーロッパのオーケストラから楽譜を借りることがあります。先日、ドレスデンの方たちと話しているときに、日本フィルに連絡してみたらどうかと言いました。これまでヨーロッパから借りることが多かったが、このように逆のことができるのは大きな誇りです。日本フィルとともに海外のクラシック業界の方たちと交流できる」と新たな抱負も語った。
さらに、「クラシックをやるうえで、非ヨーロッパ文化圏の人としてどう考えているか、どんな違いがあるか」という質問に対してウォンは、「指揮者のバックグラウンドに限らず、すべての指揮者は違っている。人のバックグラウンドが違うというのは、すべての人間が違うことだと思っている。例えばドイツ人の指揮者が2人いても、アメリカ人の指揮者が2人いても、全然個性が違う。違うというのは大前提にある」と強調したうえで、「多くの意味で自分自身がマイノリティであることは意識しています。ベルリンで勉強しているときにもベルリンで初めて勉強するシンガポール人だなどと言われてきましたが、私がいる場所でできる限りのことを学び吸収したいと思い、なぜドイツ人はブルックナーやブラームスをこのように演奏するのかと考えていました。マーラー国際指揮者コンクール第1回の優勝者がドゥダメルで、彼はベネズエラ出身ですが、マーラーやストラヴィンスキーをとても素敵に演奏しました。第2回の優勝者はイスラエル出身のラハフ・シャニで、彼のマーラーやブラームスも素晴らしいです。名作の力というのは、出身地や宗教、政治などをすべて超越すると思っています。だからこそ私は毎朝起きて、今日はマーラーとベートーヴェンに向き合おうという気持ちになれるのです」と語った。
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