レポート
2023.03.28
5月5日(金・祝)横浜みなとみらいホール 「楽しんでほしい」気持ちが詰まったプログラム

中学生がプロデュースする「こどもの日コンサート」?! 大人顔負けの仕事ぶりを拝見

「海の見えるホール」としても愛されている横浜みなとみらいホールで、毎年ゴールデンウィークに開催される「こどもの日コンサート」。このコンサートの一風変わったところは、なんと中学生が「プロデューサー」を務めていること! 一体彼らは、どんな仕事をしているのでしょう。

小島綾野
小島綾野 音楽ライター

専門は学校音楽教育(音楽科授業、音楽系部活動など)。月刊誌『教育音楽』『バンドジャーナル』などで取材・執筆多数。近著に『音楽の授業で大切なこと』(共著・東洋館出版社)...

公演の構成および台本作成について、新井鷗子・横浜みなとみらいホール館長を講師に迎えて話し合う中学生プロデューサーたち(2月26日・京セラみなとみらいリサーチセンター)

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子どもの気持ちは子どものほうが分かりやすい

子ども自身でプロデュースすることで、大人にはない視点で新たなコンサートの形が生み出せると考えています」「中学生なら小学生や幼稚園生の気持ちもまだわかるので、コンサートを聴く子どもたちがどう感じるのか、大人よりも考えやすいですから」。取材陣にそう話してくれたのは、広報担当の西川汐里さんと石川華那さん。はきはきと受け答えする2人は、実は小学6年生と中学1年生! 彼女たちは「こどもの日コンサート」の制作を務める“中学生プロデューサー”。30名の中学生(公演日時点の学年)が5月の公演に向け、1月から会議や研修を重ねています。

コンサートの成功を大きく左右する“構成”を考えるのも彼ら。クラシック音楽だけでなくポップスから映画音楽までの魅力的な曲目を決めたのは昨年の中学生プロデューサーたちで、自分たちがプロデュースしたコンサートの反省を生かして次年度の選曲までを終えたところで「プロデューサー」を引退しました。

大人顔負けの仕事をこなす中学生プロデューサーたち

今年のプロデューサーたちはそれを引き継ぐところから仕事を始め、「初めは《バック・トゥ・ザ・フューチャー》で観客を引き込む」「児童合唱が入る《主よ、人の望みの喜びよ》の前にMCを入れて転換の時間を作った方がいい」「小さい子たちはMCが最初にあった方が安心するのでは」などと、重要な観客層である未就学児たちの心境にも寄り添い、合唱団の入場・退場にかかる転換などさまざまな要素を考慮しながら構成を組んでいきました(最終決定した構成は秘密!)。

コンサートの構成をめぐって中学生プロデューサーたちからさまざまなアイディアが出され、通常のコンサートと変わらぬプロセスを経て、次第に形になっていく

広報や配布プログラムの編集、MCの原稿なども中学生プロデューサーたちが担当。西川さんと石川さんも所属する広報班ではこの日、チラシ配布や広告出稿について会議を持ち、費用や具体的な集客効果なども勘案しながら検討していました。予算表などを自分たちで作成することも。「小学校の算数って社会でどう役立つのかなと思っていたけど、大人がする仕事でも計算は必要なのだなと。それなら学校の勉強も頑張りたいと改めて思いました」と西川さん。

こちらはプログラム作成班。菊地健一チーフプロデューサーが会議に加わる。中学生プロデューサーたちの真剣な表情をご覧ください

楽しんでほしいという思いが盛りに盛られたプログラム

「今回のコンサートには、みなとみらいホールのパイプオルガン“ルーシー”が登場します。パイプオルガンを聴く機会はあまりないと思うし、オーケストラはもちろん合唱団も入って楽しいコンサートになるので、ぜひ来ていただけたらと思います」「ポップスや中学生からのおすすめ曲とともに小さい子もクラシックに触れ、親子で楽しむ1日にしていただけたら嬉しいです」と西川さんと石川さんはPRし、広報の役割をしっかり担ってくれました。

広報担当の石川華那さん(左)と西川汐里さん(右)の言葉からは、とにかく楽しんでほしいという熱い思いが伝わってきました

コンサートを“自分事”にすることで社会を学ぶ経験を

横浜みなとみらいホールの館長を務める新井鷗子さんは、プロの構成作家として中学生プロデューサーたちを導きつつ、プロジェクトの意義をこう語ります。「一昔前はコンサートを見て裏方に興味を持つ子どもはまずいなかったし、“裏方”について知る機会もなかった。でも今はあらゆる情報が伝えられるようになり、“舞台裏を見る面白さ”も一般的になってきましたよね。舞台裏を知り、関わってみることで、コンサートやクラシック音楽も“自分事”になる。それが次世代の聴衆の拡大にもつながると考えています」。

横浜みなとみらいホールでは、「子ども達が社会を学ぶ場」の創出を目的に2021年より「こどもの日コンサート」の公演制作に中学生プロデューサーが携わっている。館長の新井鷗子さんはプロの構成作家でもあり、今後もグラフィックデザインや舞台のプロが講師を務めるという贅沢さ



そして“コンサートホール”が社会の一員として、子どもたちの成長に寄与できる役割についても……。「音楽に限らず、仕事というのはそれぞれの人が自分の役割を果たし、協力しあってできているもの、『1人では何もできないんだ』ということを知ってほしいなと。音楽を通して音楽を学ぶのではなく、音楽を通して社会を学んでほしいんです」(新井さん)。

コンサートのプロデュースという体験を通して社会を多面的に学び、大きく成長する中学生プロデューサーたち。そんな彼らの成果をぜひ、5月5日のコンサートでご覧ください!

こどもの日 コンサート2023
公演情報
こどもの日 コンサート2023

日時:2023年5月5日(金・祝)13:00~(1回目)/15:30~(2回目)※2回公演

会場:横浜みなとみらいホール 大ホール

出演:岩村力(指揮) 神奈川フィルハーモニー管弦楽団、近藤岳(パイプオルガン)、岩崎里衣(司会)、赤い靴ジュニアコーラス、横浜少年少女合唱団

プログラム:アラン・シルヴェストリ《バック・トゥ・ザ・フューチャー》、J.S.バッハ《主よ、人の望みの喜びよ》、【ボディパーカッションコーナー】モーツァルト《トルコ行進曲》、SEKAI NO OWARI《炎と森のカーニバル》、他

問い合わせ:横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000

小島綾野
小島綾野 音楽ライター

専門は学校音楽教育(音楽科授業、音楽系部活動など)。月刊誌『教育音楽』『バンドジャーナル』などで取材・執筆多数。近著に『音楽の授業で大切なこと』(共著・東洋館出版社)...

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