音大生という肩書への複雑な思い

大学の付属高校ではありましたが、大学進学のための試験はあったので、友達にも先生にも、AKBに入ったことは言っていませんでした。受験前で、ピアノに集中しなければいけない時期だと、自分でもよくわかっていたので。

こんなに大変なことを、なんでやっているんだろう……と思いながらも、絶対に合ってないと目立つ場所だけは間違えないように、少しずつ要領をつかみながら、がむしゃらに頑張っていました。

音楽大学(東京音楽大学)に入ってからもますますAKBの仕事が忙しくなっていき、あまり学校には通えませんでした。きっと同級生には、別にそんなに毎日テレビに出ているわけじゃないのになんで授業に来られないんだろうと、さぼっているように見られていたかも。

AKBが秋葉原でライブをやっていて、研究生がぜんぶのステージのダンスを覚えるレッスンを受けているなんて、みんなは知らないので、自分の状況をわかってもらえないもどかしさはありました。

学校に行けていないのに現役音大生と肩書がつくのは心苦しかった面もありますが、当時は音大生のアイドルは珍しかったこともあり、何をするにも「現役音大生」という肩書がついてまわりました。クイズ番組とか「(芸能界特技王決定戦) TEPPEN」に呼んでいただけたのも、音大生という肩書のおかげだと思います。

イラストー松井咲子
山本美芽
山本美芽 音楽ライター

ピアノ教育とジャズ・フュージョンを軸に執筆。ピアノ教本研究家として全国で講演を行なう。著作に「ひとりですいすいひける!はじめてのピアチャレ」1〜3、「練習しない子のた...