さて、各ホールに備えられたパイプオルガンはそれぞれ独自の特色を持っていることは皆さんご存じかと思いますが、主要な楽器について基本的な特徴を改めてあげてみたいと思います。
サントリーホールのオルガンはオーストリア・リーガー社製。パイプ数: 5,898本、音色を決めるストップ数:74でこれは世界最大級。バロックから現代曲まで幅広く使われています。
ミューザ川崎シンフォニーホールはスイスのクーン社製。パイプ数: 5,248本、ストップ数;71。とくに尺八と笙という日本古来の音色を出すストップをもっているのがユニークです。
日本の公立ホールの中でもっとも歴史のある神奈川県民ホールのオルガンは小ホールに設置されています。ドイツのクライス社製で柔らかい響きが特徴。開館当時はホールの舞台右側にありましたが、1990年に舞台正面に移され響きも改良。演奏の模様が観客の視界に自然に入るようになりました。
横浜みなとみらいホールのオルガンはアメリカのC.B.フィスク社製。パイプ数:4,632本。ストップ数:62。「チェレスタ」や鳥の鳴き声に似た「ナイチンゲール」などの音色も備わっています。
最後に東京芸術劇場のオルガンに関して触れたいと思います。3種類の調律法を持つ楽器で構成され、作品によって弾きわけることが可能となっています。ルネサンス(ピッチ:467ヘルツ)とバロック(ピッチ:415ヘルツ)は一体化されて、もうひとつはモダン(ピッチ:442ヘルツ)でこの2体が背中合わせに配置されており、演奏する曲によって回り舞台のように転換されます。パイプ数は約9,000、ストップ数は126という膨大な規模で、これによりオルガンの重要な作品をオリジナルの響きで楽しむことができるわけです。
こうしてみると、日本にはさまざまな国のオルガンが入ってきているのが分かりますね。それぞれの楽器の聴きわけも面白いかもしれません。
今年9月には4年に一度の「武蔵野市国際オルガンコンクール」も開催されますし、日本でのパイプオルガンへの関心がますます高まりそうです。