
インタビュー
2026.06.06
ピアニスト務川慧悟が語る ワインと音楽#3 音楽もワインも深めるほどに味わいが増...
――それでは最後に。務川さんがワインに魅了される、そのいちばんの理由を教えてください。
M ワインの味が比類なく独特だと思う理由、それは“熟成”です。何十年もの年月による熟成を経たワインには、「枯れ葉」とか「雨上がりの森」などと形容されるものがありますが、その深みは僕らが日常生活で経験する味覚の理解の範疇を超えているように思います……。
テクノロジーの進んだ現代ですから、数十年分の熟成を科学的な技術で大幅に短縮することもできるような気がしますが、それは不可能なのだそうです。熟成が進むプロセスで起きている化学反応にも順序があり、それがひとつひとつ連なっていくためには、長い時間が必要だからです。すべてには順番があります。若い音楽家がいきなり巨匠の演奏を真似てもうまくいかないし、誰の心も動かせないのと同じでしょうか。
ピアニストの熟成も、長い年月と修練を要します。僕は聴衆の方々とともに自分の音楽を深め、これからも歩んでいきたいと思っています。
