読みもの
2020.07.30
飯田有抄のフォトエッセイ「暮らしのスキマに」File.19

ぶれぶれ写真に合う? スティーブ・ライヒのミニマルミュージック

飯田有抄
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

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今回はぶれっぶれの変な写真ですが、でもなぜか好きな一枚です。

この写真、どこをとってみても、ピタッと焦点が定まっているところはなくて、すべてのものの輪郭がぼやけ、光は丸みを帯びた玉状・線状になっています。

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でもこれを見た現代人はきっと、だれも「食べ物の写真ですか?」とか「洋服の一部ですか?」とは尋ねないでしょう。

きっと、ちゃんと、脳内補正して、夜の車道だとわかると思います(車の助手席から撮りました)。

とくに記憶に留めようとしていないありふれた景色であっても、日々私たちの頭の中には刷り込まれていて、目の前の視覚情報を補ってくれるんですね。

耳でもそういうことはあるのだと思います。

最近なかなかコンサートに出かけられず、生の音に触れられていない音楽ファンもいらっしゃると思います。

自宅のオーディオを久々に鳴らしてみた、という方もいるでしょうし、スマホやパソコンでライブ配信をチェックするようになった、という方も多いでしょう。

再生音源を聴いているとき、過去の何かしらの音楽体験に基づいて、おそらくは脳内で自動補正がかかっていると思います。

音楽ホールに漂うあの空気感、楽器から立ち上がるかすかなノイズ、残響とともに豊かに響く楽音、そういうものすべての経験値が、さまざまな再生機器からの音そのものに、自動的に脳内でプラスされていくのではないでしょうか。

なんとなく、そんなことを思う今日この頃でした。

ところで、ぶれっぶれの写真は、見方を変えれば「スピード感」を感じ取れなくもないと思います。ドライブは無心になれるので、とてもリフレッシュできますね。

スティーブ・ライヒのミニマルミュージックなどが合うかもしれません。

「ニューヨーク・カウンターポイント」のIII. Fastです。クラリネットの音の輪郭やまろやかで、聴いていると無心になれる感じがします。

飯田有抄
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

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