電話をめぐる恋人たちの喜劇〜“かけない”スマホ時代に思うこと
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
そういえば最近、長電話ってしなくなりました。
メールや、SNSのメッセージで手軽に、「ひとこと」を交わすことが多くなったからでしょうか。“スマホ”がもともと電話機だったということすら、忘れかねない勢いです(笑)。
少しずつのコミュニケーションの積み重ねはけっこう大きくて、久しぶりに会う人でもすぐに打ち解けたお話ができたりします。
まだ一家に一台の電話もなかった時代は連絡するのも大変だっただろうな。ご近所の電話機を借りに行く、というようなことも普通だったそうですね。大急ぎのときは、電報。
今とは時間の流れ方が違ったでしょう。
時間感覚が違えば、当然、音楽に対する感じ方、捉え方、付き合い方も違ったはず。長大な交響曲や、完結に何日もかかるオペラでも、当時の人々の生活にはしっくりきたのでしょうか。
今の社会は慌ただしいけれど、いやだからこそ、1時間や2時間を「音楽を聴く」ということに特化して(!)大事に使うことは、やはり尊いことだなぁと思います。
*
さて、話を電話に戻します。
イタリア出身のアメリカで活躍した作曲家ジャン=カルロ・メノッティ(1911〜2007)に、1幕ものの小さなオペラコミック《電話》という作品があります。初演は1947年、ニューヨークにて。
エディンバラ国際フェスティバルがコロナ禍で展開した《電話》の映像(2020年8月)
彼女の部屋でプロポーズをしたい男性ですが、何度もタイミング悪く電話が鳴ってしまい、しかも彼女が長電話をしてしまう……。最後には部屋を飛び出した彼が、公衆電話から彼女にプロポーズするという顛末。ハッピーエンドで何より。
けたたましい電話のベルは、今では聞かないものですが、電話に邪魔されるということ自体は、現代にも通じるところがあるかもしれませんね(苦笑)。
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