郷古 廉に50の質問!〈前編〉舞台に上がる時の気持ちは?これまでで最大の試練は?
この4月、30歳の若さでNHK交響楽団の第1コンサートマスターに就任した郷古廉さん。オーケストラでの雄姿と、ソロの舞台での凛とした中にパッションを秘めた佇まい。その両方に魅せられている方も多いことでしょう。いま熱い注目を浴びるヴァイオリニストが、舞台上で思うこととは?舞台を下りたオフの姿も知りたい。そこで50の質問をぶつけてみました。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
ふだんから音楽に接している時は、いつも緊張感があるかなと思います
1 舞台に上がるときの気持ちは?
郷古 廉(以下、G) 自分の演奏を通じて、音楽や、その作品を良いものだと思ってほしいなという気持ちです。
2 本番前のルーティンは?
G ないです。まったくない。
—―これをしたら落ち着くというものもない?
G そういうことをしたら、多分、(これはよく言われることだけど)それができなかった時に不安になりそうだから。 できるだけ自然な形で舞台に上がれるように、というのはあります。
――おまじないみたいものもない?
G まったくないです。(笑)
3 本番前に食べるものは?
G 本番前はあまり食べないです。とくに食べるものも決まっていないです。
4 本番前は緊張するタイプ?
G 緊張はしますし、練習の時から緊張しています。
――練習の時から!
G ふだんの練習のときから。もちろん本番ではとくに緊張しますけど。ふだんから音楽に接している時は、いつも緊張感があるかなと思います。
5 客席のどこを見る?
G 何となくいろいろなところを見ています。いちばん前の寝ている人を見ていることもあるし(笑)、どこかをぼーっと見ていることもあるし。
目線ってけっこう大事で、目の前の人にパーソナルに伝えたい場合と、広くホールの端の人にまで伝えたい場合とでは、全然違うと思うんですね。
すごいピアニッシモを弾いている時も、ホールのいちばん後ろの人にまで聞こえるようにという意識はあります。それが目線に表れているかどうかは分からないけど。
――目線はホールの大きさによっても変わりますか?
G もちろん。サロンで弾くときと、2,000人のホールで弾くときとでは違うし。コンチェルトと、ピアノとの室内楽でも違います。
2013年ティボール・ヴァルガシオン国際ヴァイオリン・コンクール優勝ならびに聴衆賞・現代曲賞を受賞。現在、国内外でもっとも注目されている若手ヴァイオリニストのひとり。1993年生まれ。宮城県多賀城市出身。2006年第11回ユーディ・メニューイン青少年国際ヴァイオリンコンクールジュニア部門第1位(史上最年少優勝)。2007年12月のデビュー以来、読売日響、大阪フィル、名古屋フィル、仙台フィル等を含む各地のオーケストラと共演。共演指揮者にはゲルハルト・ボッセ、フランソワ=グザヴィエ・ロト、秋山和慶、井上道義、下野竜也、山田和樹、川瀬賢太郎各氏などがいる。サイトウ・キネン・フェスティバル松本、東京・春・音楽祭、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンにも招かれている。また2017年より3年かけてベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲を演奏するシリーズにも取り組んだ。
これまでに勅使河原真実、ゲルハルト・ボッセ、辰巳明子、パヴェル・ヴェルニコフの各氏に師事。国内外の音楽祭でジャン・ジャック・カントロフ、アナ・チュマチェンコ各氏のマスタークラスを受ける。2014年にEXTONレーベルより無伴奏作品によるデビューCDをリリースし、2015年にはnascorレーベルよりブラームスのヴァイオリン・ソナタ集を、2020年にはEXTONレーベル第4弾となる「ベルギー・アルバム」をリリース。
使用楽器は1682年製アントニオ・ストラディヴァリ(Banat)。2019年第29回出光音楽賞受賞。2022年4月よりNHK交響楽団のゲスト・アシスタント・コンサートマスター、2023年4月より同団ゲスト・コンサートマスターを経て、2024年4月より同団第1コンサートマスターに就任。
6 舞台衣装のこだわりは?
G 涼しいこと、動きやすいこと。
――オーケストラの燕尾服は、絶対汗をかきますよね。
G ああ、もうオケはしかたがないです。はっきり言って燕尾服は、演奏するのには最悪の衣装だと思っているんで。(笑) ただ、形としてというのはあるので。
――上下黒1色の衣装が多いですよね。何か理由があるのですか?
G 黒がいちばん何も考えずにすむので、黒ければいい。(笑) 別にそんなに強くこだわっているわけではないです。
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