
読みもの
2021.04.01
飯田有抄のフォトエッセイ「暮らしのスキマに」 File.54
ジュエリーのような、コンテクストから解放された音楽


飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
日曜日、雨の夜の銀座。
濡れた地面に反射する色とりどりの光、車窓によってさらに光は広がり、まるでジュエリーのようだなと思いました。それも、ちょっとチープなフェイクのジュエリー。
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キッチュなものの愛おしさ、可愛さ、世界観ってあると思うんです。
子どもの頃、指輪の宝石の形をしたキャンディーがありました。赤とか緑の。
あれは可愛かった。うっとり眺めては舐め……子どもって、そんなふうにシンプルに幸せを噛み締める天才ですよね。
光や色を、何も考えずに見惚れて楽しむ姿勢。
音楽にも、何も考えず、その音に集中して楽しむ作品というのがありますね。
ソナタ形式で書かれてるだの、このモチーフが全曲を支配してるだの、何調から何調になっただの、そういうコンテクストから解放されて、その音その音を楽しめばよい音楽。
たとえばこんな作品はいかがでしょう。
打楽器奏者リチャード・サックスの2007年のアルバム『Ten Planets』。まるで宝石の光の反射を思わせてくれるような、ロドニー・シャーマン作曲「アポロのタッチ」、そしてバーバラ・モンク・フェルドマン作曲「グロッケンシュピール」が収められています。
しっとりしたい春の夜に、オススメです。
リチャード・サックス『Ten Planets』より「アポロのタッチ」、「グロッケンシュピール」
飯田有抄のフォトエッセイ「暮らしのスキマに」

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