あの大ヒットから18年、最後のステージを意識したかっこいい生き様

音楽の女神に愛された高齢バンド再び! 『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』

読みもの
2018.07.14

音楽ドキュメンタリー映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』のヒットから18年。さらに高齢となった彼らバンドが“最後のステージ”を意識してワールドツアーを決行。音楽の女神に愛された彼らの人生すべてが込められた今作。映画ライターのよしひろさんが感じ取った、「かっこいい老人」像とは……?

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© 2017 Broad Green Pictures LLC
よしひろまさみち 映画ライター・編集者
よしひろまさみち
よしひろまさみち 映画ライター・編集者
音楽誌、女性誌、情報誌などの編集部を経てフリーに。『sweet』『otona MUSE』で編集・執筆のほか、『SPA!』『oz magazine』など連載多数。日本テ...

前作『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』は日本でも大ヒット

99年の『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』というドキュメンタリー映画はご存じかしら。これ、当時海外はもちろんのこと、日本でもすっごい話題になった音楽ドキュメンタリーなのね。なんで話題になったかっていうと、ひとーつ、お達者くらぶよろしく、平均年齢が70歳のバンドのお話だったから。ふたーつ、当時西側諸国とは国交がなかったキューバのお話だったから(観光はできたんだけど)。みっつー、作中の主人公達(映画と同名のバンド)も音楽もめちゃくちゃかっこよかったから! もひとつプラスすると、この当時の日本はミニシアター大全盛期で、アート映画やドキュメンタリー、小規模の娯楽作などをミニシアターに足を運んで観ることがオシャレとされていたこともありますが。

そんなこんなで、日本でもとてつもなくヒットしたうえ、サントラもバカ売れ。キューバ音楽が一気に身近になり、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの皆さんも2001年に来日してくれました。すげー、マジすげー。だってよ、公の文化交流事業は別としても、基本的には国交がない国の文化に触れる機会なんてめったにないし、ましてやその国の伝統芸能ではなくて、大衆音楽のアーティストが来日公演。そのうえ、バンドはお達者くらぶ。もーね、ありえなーい、ってわけですよ。映画と音楽は国境を越える、そして年齢がいくつになってもやりたいことをやりたいようにやっている人は元気、ということを、肌身を持って感じさせてくれたのが『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』だったわけ。

なんせ、最高齢のコンパイ・セグンドなんて、映画撮影時には92歳だったけど「まだまだ子作りを!」とのたまう元気の良さ。いや~、音楽の力って偉大。っていうか、彼らの知られざる才能を発掘して、映画にしちゃったライ・クーダーとヴィム・ヴェンダース、エライ。

 

あれから20年弱。世界はあれやこれや大きく変わり、東西の分け隔てもとっぱらわれ、オバマ政権最後の大仕事として、アメリカとキューバの国交回復までしちゃった。こうなってくると、もはや長らく閉ざされた島国と言われたキューバも大きく変わっていくわけで。

ここ数年の間にキューバを訪れた友人は、「ぎりぎりキューバのまま。じきにアメリカや中米と同じになっちゃうんじゃないかしら~」という、ちょっとさびしいお話もあるんで、キューバらしさを観たい、という人はお早めに。そして行けない方、前作の紹介を読んで前作が気になった方はこちらを。というのが、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』。

 

世界的ヒットを目の当たりにしたメンバーたちの裏側に注目

これは、あの映画の後も活動を続けたブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブによる最後のツアー「アディオス・ツアー」を追っかけつつ、前作の裏話を盛り込んだドキュメンタリー。あいにく何人かはすでに亡くなってしまったんだけど、それでも人気はまだまだ衰えることはなく、一部メンバーなんかお孫さんと一緒にライブとか。最高ジャン!

そのツアーの模様はもちろんなんだけど、さらにすごいのは、前作の裏話。特に、前作がヒットするなんて夢にも思っていなかったメンバー達が、世界的大ヒットを目の当たりにしたとき、どうなったかってこと。

なんとね、変わらなかったの。遅咲き過ぎるバンドだけに、全員の生活は一変したんだけど、その変化はいいことしかなかったのね。たとえば、ヴォーカルのイブライムは、バンドに戻ってくるまで靴磨きで生計を立てていたけど、バンドのヒットによって好きな音楽で食っていけるように。そういうことが起きると、そこでいい気になったり、性格変わったりして総スカンなんてことが起きがちだけど、さすが人生の大先輩。セレブにはならなかったのよ。酸いも甘いも知っているご老人達だからこそ、彼らをサポートする若者達をたてながらも、自分がやりたいことだけをやっていく、という方向にシフトしたのね~。

ご老人なんで、まぁまぁワガママも言いますわ。「機械なんて信じられん!」といって、チューニングを自分基準でやろうとしたり(いや、間違ってるんですけど)、ライブ中に「酸素吸入を!」っていうこともあるんだけど、それでも彼らのブレのない人生は尊敬すべき。超高齢化社会に突入する日本でこそ、彼らの生き方から学び取れることが多いはずよ~。

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブとは……

アメリカの偉大なるギタリスト:ライ・クーダーが、キューバを旅した際にセッションした、地元の老ミュージシャンに声をかけ、当時なんと92歳のギタリストを筆頭に、かつて第一線で活躍していたキューバのベテラン歌手や音楽家たちを集めたビッグバンド「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」。1997年に、彼がプロデュースし、発売した同名のアルバムは、ワールド・ミュージックのジャンルとしては異例となる400万枚を売り上げ、世界の音楽シーンに、驚きと至福のセンセーションを巻き起こした。やがてそのアルバム:「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」は、グラミー賞を受賞。さらに、名匠ヴィム・ヴェンダースが彼らの音楽と人柄に惚れ込んで監督したドキュメンタリー映画が、全世界で破格のヒットを飛ばし、アカデミー賞®長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた。日本でもミニシアターの枠を超える大ヒットを成し遂げ、その熱狂は、音楽・映画にとどまらず、サルサダンスのブームやキューバレストランの流行、キューバへの直行便の就航が始まるまでの社会現象へと広がることになる。

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』
イベント情報
『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』

アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされ、ミニシアターの枠を超えた大ヒット!社会現象まで巻き起こした伝説の傑作『ブエナビスタ・ソシアル・クラブ』。あれから18年。グループによるステージでの活動に終止符を打つと決めた現メンバーが、“アディオス(さよなら)”世界ツアーを決行。カメラは、メンバーのこれまでの旅路や、その死にも迫る。音楽の女神に愛された彼らの人生哀歌、至極の音楽ドキュメンタリー。いよいよ日本へ。

製作総指揮:ヴィム・ヴェンダース 他   監督:ルーシー・ウォーカー

出演:オマーラ・ポルトゥオンド(ヴォーカル)、マヌエル・“エル・グアヒーロ”・ミラバール(トランペット)、バルバリート・トーレス(ラウー)、エリアデス・オチョア(ギター、ヴォーカル)、イブライム・フェレール(ヴォーカル)

7月20日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開

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