読みもの
2023.12.14
聖地や記念コンサートを一挙紹介、夏の野外音楽祭情報も

オーストリア音楽トピック2024 本場で記念年の第九、ブルックナー、シュトラウスを満喫!

2024年は、ベートーヴェン「第九」初演200周年、ブルックナー生誕200周年、ヨハン・シュトラウス2世《こうもり》初演150周年と、オーストリアの音楽にまつわるアニヴァーサリーが目白押し! それを記念するスペシャルなコンサートも数多く開かれる2024年こそ、憧れのオーストリアへ音楽の旅に出かけたい!
そこでウィーン在住のチェリスト、平野玲音さんに、知られざる名所や新名所も含め、アニヴァーサリー作曲家、作品の聖地やコンサート情報をたっぷり教えていただきました。夏にぜひ郊外で体験したい、とっておきの音楽祭や野外オペラも合わせてご紹介します。
(特別な記載のない場合には、本文中の日にちは2024年のものです)

平野玲音
平野玲音

オーストリア在住のチェリスト・文筆家。「平野玲音の演奏は、ピュアで豊かな音楽性によりウィーンの香りを客席まで運んでくれる。これはテクニック重視の現代の音楽界にあって大...

©Wien Tourismus Paul Bauer.

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「第九」初演200周年~縁あるウィーン・フィルが特別公演!ゆかりの場所で名曲誕生を祝いたい

1824年5月7日にウィーンのケルントナートーア劇場で初演された、ベートーヴェン「交響曲第9番」。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は1842年に創立されたが、メンバーの多くは「第九」初演の場でも弾いており、そのコンサートではベートーヴェン《ミサ・ソレムニス》の一部も演奏された。

この理由から、ウィーン・フィル5月4~7日に「第九」(リッカルド・ムーティ指揮)、5月25、27日に《ミサ・ソレムニス》(ヘルベルト・ブロムシュテット指揮)を取り上げるなど、200周年記念に力を入れる(楽友協会大ホール)。大晦日や元旦に滞在する予定なら、ウィーン交響楽団の恒例「第九」公演へ行こう(2023年12月30日~2024年1月1日、オメール・メイア・ヴェルバー指揮、ウィーン・コンツェルトハウス)。

ウィーン・フィルの本拠地、楽友協会。この中の大ホール(通称「黄金のホール」)で、ウィーン・フィルによる「第九」公演が5月4~7日に行なわれ、5月25、27日には《ミサ・ソレムニス》も演奏される ©Reine Hirano

美術に興味がおありのあなたは、金のキャベツの愛称をもつ「セセッション」へ。その地下にあるクリムトの壁画「ベートーヴェン・フリーズ」は、「交響曲第9番」をテーマに据えた大作だ。ドラマティックな構成は、ワーグナーによる「第九」の解釈にのっとったもの。壁画の最終場面では、楽園の天使たちの合唱の前でキスをする男女によって、芸術の神格化が表現される。

19世紀末にグスタフ・クリムトを中心に結成された「ウィーン分離派」の展示施設「セセッション」は「金のキャベツ」の愛称をもち、街の中でひときわ目立つ ©Reine Hirano
セセッションの地下には、クリムトが1901〜02年にかけて描いた全長約34メートルの大作「ベートーヴェン・フリーズ」がある ©Vereinigung bildender KünstlerInnen Wiener Secession Jorit Aust

「交響曲第9番」を心ゆくまで鑑賞したら、ゆかりの飲食店で一休み。ミッテ駅の近くには、「ビーアトイフルBierteufl」という名のビアホールがある。ベートーヴェンが1823~1824年に住み、「第九」を完成させた建物なのだが、観光客にはほとんど知られていない。

ハイリゲンシュタットにあるホイリゲ「マイヤー・アム・プファールプラッツMayer am Pfarrplatz」も、ベートーヴェンが「第九」を作曲した頃の家(ホイリゲとは「その年の新酒を出すワイン酒場」のこと)。暖かい日に中庭の席に腰を下ろせば、ベートーヴェンらもこよなく愛した、典型的なウィーン情緒を体験できる。

ベートーヴェンよりさらに昔、1683年以来の伝統をもつホイリゲ「マイヤー・アム・プファールプラッツ」の中庭。毎日夜7時からは、ウィーンのホイリゲ音楽のライブも楽しめる ©Austrian National Tourist Office/Tokyo

「交響曲第9番」の大部分が書かれたウィーン近郊の町、バーデン・バイ・ウィーンは、日帰り旅行にうってつけ。ウィーン国立歌劇場のはす向かいから、路面電車バーデン線(Badner Bahn)に乗って行くのが簡単だ。ベートーヴェンは保養のためにしばしばここを訪れており、1821~1823年の夏を過ごした住居は「ベートーヴェンハウス・バーデン」という博物館になっている。

ウィーン近郊の町、バーデン・バイ・ウィーンにある「ベートーヴェンハウス・バーデン」の展示風景。ここには「第九」第4楽章を聴くだけでなく、見たり読んだりといった特別な方法で鑑賞できる展示室がある

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