読みもの
2020.04.28
100周年の節目に問われる文化活動の社会的役割

オーストリアでリハーサル再開、どうなる、ザルツブルク音楽祭?!

新型コロナウィルスの感染拡大により、3月10日以降、すべてのオペラ、演劇、コンサートの公演が中止となっているオーストリア。4月17日には、6月からリハーサル再開が許可されると発表されるも、大規模イベントは8月末まで禁止のままで、この定義が大炎上しています。
ザルツブルク音楽祭の開催はどうなるのか。毎夏をザルツブルクで過ごす筋金入りのザルツブルク音楽祭愛好家でもある山之内克子さんが、現在の状況をレポートします。

ザルツブルク音楽祭への愛が止まらない
山之内克子
ザルツブルク音楽祭への愛が止まらない
山之内克子 西洋史学者

神戸市外国語大学教授。オーストリア、ウィーン社会文化史を研究、著書に『ウィーン–ブルジョアの時代から世紀末へ』(講談社)、『啓蒙都市ウィーン』(山川出版社)、『ハプス...

2019年のザルツブルク音楽祭より、フェルセンライトシューレで行なわれたクレンツィス指揮、モーツァルト《イドメネオ》
写真:山之内克子

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欧州の先頭を切って規制緩和が始まるオーストリア

イースターが明けた4月13日、オーストリアは、新型コロナウイルス感染拡大にともなって発令していた住民の外出制限と商店の営業禁止を、EU諸国の先頭を切って一部緩和する措置に踏み切った。3月初旬、1日あたりの新たな罹患者数がまだ50人程度の段階で、人の集まるあらゆる場所を徹底的に閉鎖した政策がおおむね功を奏し、感染者の増加ペースが1%台まで減少したためである。

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生活の維持に必要不可欠だとして、厳戒態勢下にも営業を続けたスーパーマーケット、薬局とならんで、13日以降はホームセンターや小規模店舗が1ヶ月ぶりにシャッターを開けた。ニュースの映像では、マスクの下から笑顔をのぞかせて春の花鉢を選ぶウィーンっ子の姿が印象的だった。

これに続いて、5月半ばには教会での礼拝、そして学校の授業についても再開が予定されている。

秋の新シーズンに向けてリハーサルを再開

こうしてふだんの日常生活が徐々に回復しつつあるオーストリアで、つぎに検討課題となるべきものは、いうまでもなく文化芸術のジャンルである。3月10日、セバスティアン・クルツ首相が緊急会見を行なって以来、国内のすべてのオペラ、演劇、コンサートがいまも実質的に公演中止となっている。劇場やコンサートホールがかつての賑わいを取り戻すのはいつになるのか。

3月初旬、コロナウイルス感染拡大と政府の指示を受けて当面の公演中止を知らせるウィーン国立歌劇場のポスター掲示

いら立ちを胸に待ち望む音楽ファンの心に、わずかながら希望の灯を点したのが、4月17日、副首相ヴェルナー・コーグラーと文科長官ウルリケ・ルナチェクによる記者会見であった。この会見では、文化セクションにおけるおおまかな緩和スケジュールが提示され、国立の美術館・博物館は5月末からの開館が決まり、さらに、オーケストラや劇場に対しては6月1日よりリハーサル再開が許可された。

とはいえ、ウィーン国立歌劇場や楽友協会ホールは、すでに6月末まですべての公演の中止を決めている。このタイミングでのリハーサル許可は、明らかに秋の新シーズンをスムーズに再開させるための措置であろう。条件として示された「稽古時のマスク着用」と「参加者間の確保」は、一部の芸術監督や演出家の失笑を買ったとはいえ、リハーサルの許可は公演再開の明らかな予兆であり、ファンや関係者に大いに希望を持たせることになった。

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