英国の名門KEFの神髄が表れた ユーザー思いの高音質ワイヤレス・スピーカー
1961年に創業した英国の老舗ブランドKEFが、従来のコアなファンだけでなく多くの人に音楽を楽しんでもらいたいという意向のもと、ワイヤレス・スピーカーの製造に積極的に取り組んでいます。
今注目されているLS60 WirelessとLSX IIは、主要ストリーミングサービスに対応し、CDやレコードプレーヤーなど様々な機器と接続するための端子が揃っている上に、HDMIケーブルでTVと連動させることも可能。
しかもこれらのスピーカーの内部には、KEF独自の開発による高度なテクノロジーが詰まっています。その一つが、部屋の中の異なる場所に座る誰もがナチュラルかつディティールなサウンドを楽しめること。しかもスリムでスタイリッシュな色味で、インテリア・アイテムとしての存在感も抜群。
オーディオを囲むさまざまな人に開かれた、このKEFの真髄が表れたワイヤレス・スピーカーを、DJ/音楽ライター/プロデューサーの大塚広子さんが体験しました。
オーディオはライフスタイルを映す鏡だと、最近つくづく思う。現実的な生活空間と直結しているオーディオ機器は、一人の人生の中でも生活スタイルの変化とともにカスタマイズする時代になっているようだ。
住環境の変化で、家庭の音をリビングで一本化するケースや、ピュアオーディオ・ファンも自分が持てる重さにまでスピーカーをスリム化する動きもある。
また音楽をデジタル化したり、サブスクリプションサービスに乗り換えたりする音楽ファンもいる。断捨離という目的よりも、デジタルによる管理のしやすさによって、探すことより本来の目的である聴くことに時間を使えるからいい、という理由からだ。
仮に私の場合でも、子どもが遊んでコードに引っかからないかとか、埃の掃除をしなきゃといった家事目線の心配から解放されたらどんなに楽だろうと思う。ライフスタイルに合うやり方でオーディオ選びをしないと、音楽を聴くことを手放しで楽しめなくなってしまう。だからこそ人の生活に合わせた多種多様なオーディオが今必要なのだろう。
KEFは、1961年に創業した今年で61年目を迎える老舗スピーカーブランドだ。BBC国営放送のエンジニアが、ロンドンの南東にあるメイドストーンでスタートし、これまでにトラディショナルなスピーカーを多く作ってきた。
中でもBBCのモニターとして使われていたLS3/5a規格のスピーカーは業務用モニタースピーカーの用途のみならず、オーディオファンにも愛用されてきた。
そんな英国の名門KEFだが、従来のコアなファンだけでなく多くの人に音楽を楽しんでもらいたいという意向のもと、ワイヤレス・スピーカーの製造に積極的に取り組んでいる。
KEFが最初にアンプ内蔵スピーカーを発売したのは、2017年。この展開はハイファイオーディオとしては業界的にも早い方で、ワイヤレスモデルのLS50 Wirelessと、そのコンパクト版であるLSXの初代モデルが登場。その後、モデルチェンジしたLS50 WirelessⅡを経て、今年新たにLS60 Wirelessと、LSXの第二世代となるLSXⅡが加わった。
¥880,000 (税込) / set
●内蔵アンプ出力(1本スピーカー):700W
●最適な部屋の広さ:10-200 m2
Deezer、QQ Music、Internet Radio、Podcast、
主要ストリーミングサービスに対応 音質を余すことなく享受できる
このLS60 WirelessとLSXⅡのスピーカーで何ができるかというと、手持ちの端末の操作だけで高音質の音楽体験ができるということだ。
KEFのオリジナルアプリケーションである、KEFコネクトをダウンロードすれば、設定から再生、音量、スピーカーのR/L変更などをすべて操作できる。
SpotifyやApple Musicなどの主要サブスクリプションサービスの他に、TIDAL、Qobuz、Amazon Music HDといったハイレゾ配信サービスの正規認証を受けており、現在のストリーミングサービスが扱う最高音質の音楽を余すことなく再生できるのが最大の特徴だ。
無線の状態では、24ビット/96kHz、左右をケーブルでつなぐと、24ビット/192Khzのデータ再生が可能になる。これによって、24ビット/48kHzにダウングレードされてしまうWi-Fi経由の「AirPlay」や「クロームキャスト」とは別次元の体験を得られるだろう。また再生アプリの中には、世界中のラジオチャンネルも登録されていて、簡単に聴けるのも嬉しい。
拡張性が高い入出力端子 家族にも嬉しいHDMI入力搭載
CDやレコードプレーヤーなどさまざまなアナログ機器と接続するためのRCA端子やデジタル入力も搭載。特にHDMIケーブルでTVと連動させ、映像と連携させてリビングで使用するケースも増えているようだ。現在のTVは解像度が上がっている反面、スピーカーの性能を省く傾向にあるため、こうした使い方は整合性が取れている。
中でもこれらのスピーカーは、コンサートやライブ演奏のニーズに大いに答えてくれるだろう。また、LSXⅡには、デスク上でのスピーカーとしてもフレキシブルに使えるよう、USB接続も可能になっている。
色味は、LS60 Wirelessはチタニウム・グレー、ロイヤル・ブルー、ミネラル・ホワイトの3色展開で、インテリアに溶け込ませることもアクセントにすることもできる色味を揃えている。LSXⅡは、5色展開で、中でもカーボンブラックとコバルトブルー、サウンドウェーブはファブリック素材を使用しており、背面のデザインのこだわりも含めインテリア・アイテムとしての存在感を感じさせるものだ。
●対応ワイヤレス ストリーミング:AirPlay 2、Google Chromecast、Roon Ready、UPnP Compatible、Bluetooth 4.2
試聴位置を選ばない音場設計
これらのスピーカーの内部には高度なテクノロジーが詰まっていて、すべてKEF独自の開発によるものだ。
中でもLS60 Wirelessは、KEF創業60周年記念となるモデルで、これまでのKEFのイノベーションを凝縮したスペシャルな機能が搭載されている。KEFのフラッグシップスピーカーであるBLADEのコンセプトが採用され、そこにワイヤレス・アクティブスピーカーの性能を加えたオールインワンのモデルとなっている。
このBLADEから引き継がれているのが、珍しい位置に設置されたスピーカードライブだ。中心に設置されているのは、KEF独自の技術であるUni-Q®ドライバーで、中域と高域を共有する。音の周波数が同時に耳に届くことで、範囲の限られた「スイートスポット」が広くなり、部屋の異なる場所にいる人が、同じ様に自然で精細な音像を楽しむことができるという。
このUni-Q®ドライバーを囲むように、4つの低域のドライバーが側面に配置されている。向かい合わせに設置することで低音の振動が相殺され、それによって迫力ある音が小スペースな筐体からでも再現可能になった。
見た目には感じさせない マニアックな音質へのこだわり
そう、このLS60 Wirelessは、実物を見てもとても小ぶりな印象を受ける。圧迫感がほとんどなく、正面から見た時の横幅は、一般的なiPhoneの縦サイズよりも狭い。
このスリムな本体は大きく分けて2つの部屋に分かれていて、上部はスピーカードライバーがある場所、下部はアンプ、DACの場所になっている。
下部は、高域、中域、低域用にそれぞれ3つのパワーアンプが搭載され、音響の補正や音の制御をする役目のDSPと、デジタルデータから出力の際にアナログ変換するためのD/Aコンバーター、そしてストリーミングのためのプリアンプが設置されている。
DSPにも自社開発ならではの技術が注がれていて、音の周波数や部屋の広さ、位相を制御して細かく補正をかけており、将来的にはさらに緻密にコントロールできるようになる見込みだ。
これらの機器は自然対流で放熱され、24時間動かし続けた場合でも、後ろがほんのりあったかくなる程度だそうだ。
重さはどうかというと、片方だけで30キロを超える。細いので安定感を出すためにしっかりとした台座があり、地震にも強いピラミッド型の重心バランスになっているのだ。
この重さは音響のためにも外せない要素である反面、封開けや移動の時の大きな負担になることは否めない。通常であれば、スピーカーが家に届いた後、大きな箱に入った本体を、よいしょ、とひっくり返す大作業が待ち受けている。
しかしこのLS60 Wirelessが梱包される箱は3分割に分かれていて、力がない人でも楽に取り外せる。社内でも5分以内で開封できるかのテストが行なわれていたほど手の込んだこの工夫に、私は心底感動した。
スピーカーを使うさまざまな人のことを考え、身近に扱いやすくしようという意図がしっかりと窺えた。ワイヤレスという形態やデザイン、豊富な色味においても、同じことが言えると思う。
包まれるような感覚 サイズを超えた低音
実際に楽曲を聴いてみたが、クラシック・オーケストラの演奏は圧巻だった。リッチな質感があり、音に包まれているような気持ちになる。低音の厚みもあり、まるでシアターにいるような感覚を覚えたと同時に、この省スペースのスピーカーのどこから迫力の音が出てくるのだろうと不思議に思えてくる。
イーグルスのライブナンバーは、手元で奏でられた楽器の響きと会場の歓声も含めた臨場感、その遠近感が顕著に感じられた。
現代を象徴するヴォーカリスト、テイラー・スウィフトのナンバーでも細部の声質をしっかりと拾っていてギターの粒立ちも良い。
グルーヴを求めるハード・ドライブなジャズの喚起力はレコードが勝るだろうが、スタン・ゲッツのカルテット作品『Sweet Rain』では、ベールをまとったようなミステリアスな空気感が広がり、聴きなれたアルバムの裏に隠れた崇高さに引き込まれるようだった。音量を上げても抑制が効いて、その質感は損なわれない。
さらに、どの曲でも聴いていてもっとも嬉しかったのは、スピーカーの真ん中に居座らなくても、細やかな響きや人が発する息遣いが当たり前のように感じられたことだった。
オーディオを囲むさまざまな人のストレスを取り除き、フレンドリーな姿に変えていく。この前向きで確かな実践力にKEFの真髄を見た気がする。
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