シャガールの《聖書のメッセージ》と青森県立美術館に揃ったバレエの舞台背景
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
自由に旅に出られないなか、過去の写真を見返し、あぁ、また行きたいと旅への思いをつのらせている方も多いのではないでしょうか。
私も、わりとしょっちゅうやっています。そのなかでもっともよく見返すもの。一つは、去年ルガノの宿で庭を歩いていたねこを撫でまわしたときの動画。そしてもう一つは、ニースで行った、シャガール美術館の写真です。
マルク・シャガール(1887〜1985)は、ロシアのユダヤ系の家庭に生まれました。20代でパリに渡りましたが、二度の世界大戦のなか、ナチス政権が台頭したころはアメリカに亡命。戦後はフランスに戻り、南仏を安住の地としました。後半生はフランス国籍を取得しています。
ニースのシャガール美術館は、彼の晩年である1973年に開館しました。
メインの部屋には、シャガールがフランス国家に寄贈した《聖書のメッセージ》が展示されています。人間が創造された創世記から、モーセがユダヤ人を率いてエジプトを脱出する出エジプト記までが描かれた、12の作品群です。
独特の色彩と生き物の表情に囲まれているだけでも、あたたかいような不思議な気分。シンプルな聖書の物語だけでなく、シャガール自身の祈りや願いも盛り込んで描かれているらしいことが感じられます。
これほどすばらしい美術館なのに人が少なかったので、ゆっくり過ごしました。撮影OKのため、この雰囲気をいつでも思い出せるようにと動画も撮影。まさかコロナ禍でこれほど見返すことになるとは。
昨年春に行った、フランス、ニースのシャガール美術館。旅先で立ち寄った美術館の中でも特に印象に残っていて、また行きたいなぁとすごく思う場所。独特の空気と明るさがあった。12点の「聖書のメッセージ」が展示されているメインルームをぐるりと撮った動画です。 pic.twitter.com/TtRw83O0cj
— 高坂はる香(音楽ライター) (@classic_indobu) October 29, 2020
シャガールのクラシック音楽に関係する作品といえば、まずはパリ・オペラ座の天井画が知られています。
加えて、アメリカ亡命時代には、ストラヴィンスキーのバレエ『火の鳥』の舞台装置、そして、バレエ『アレコ』(音楽はチャイコフスキーのピアノ三重奏曲Op.50「偉大な芸術家の思い出に」)の舞台背景と衣装デザインを手がけています。
チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲Op.50「偉大な芸術家の思い出に」
『アレコ』には全部で4つの幕のための背景画があるのですが、そのうちの第1、2、4幕の背景画は、青森県立美術館に所蔵されています。私もまだ行ったことがなく、行ってみたい。
そしてなんと2017年から、欠けている第3幕も揃っているらしいのです。なんでも、所蔵しているフィラデルフィア美術館が改修工事中のため長期借用している、とのこと。
青森県立美術館で4幕揃った状態が見られるのは、2021年3月までの予定だそう。国内でも気軽に旅行できないのが辛いところですが、なんとか期間中に訪れたいものです。
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