ミマスの歌づくりの旅 —宇宙飛行士 地球の縮図 未来—
これまで星好きミュージシャンとして、天文台や星空観望イベントで演奏することが多々ありました。そんな中でわずか数回ですが、宇宙飛行士の方とご一緒させていただいた経験もあるのです。
宇宙飛行士に必要なのは?
宇宙飛行士と子どもたちが交流するようなイベントでは、必ず「質問コーナー」があります。子どもたちが熱心にさまざまな質問を投げ掛けますが、よくあるのが「どうしたら宇宙飛行士になれますか?」というもの。こんなとき、質問した子も会場のみんなも、例えば勉強を頑張ってとか、体を鍛えてとか、そういう答えを予想するわけです。でも、その宇宙飛行士の方はこう答えました。——宇宙飛行士になるために一番必要なのは、その場にいる人たちと「うまくやっていく」能力です。
宇宙船の中は、地球の縮図だというのです。いろいろな国から集まった人たちが協力して一つのプロジェクトを成功させる。お互いに文化や立場が違うので、もちろん対立するときもある。そんなとき、感情的になったり、投げやりになったりしてしまったらすべてが終わりだ。過酷な宇宙では、団結が乱れれば全員の命が危険にさらされる。理性的にお互いの言い分を認め合い、現実的な解決策を見つけなければならない。それこそが本当の意味で一番必要なことだ……。そんな趣旨だったと記憶しています。
本当に大切な“何か”とは
その話を聞いたときに僕は、これは「合唱と同じだ」と思ったのです。一つの合唱をつくり上げるためには、各自が自分の声を出すのと同時に、他のメンバーの声をよく聴き、全体における自分の役割を考えることが不可欠です。互いに尊重し、理解し合い、意見がぶつかったとしても現実的な解決策をみんなで見つけ、その中で自分のベストを尽くすわけです。
宇宙船の中がそうであるように、一つのクラスもまた地球の縮図です。数十人が集まって一つの合唱をつくることと、何十億人が集まって一つの世界をつくることは同じだと、僕は思います。クラス合唱はずーっと先のほうで、世界の未来や人類の存続といった大きなテーマにつながっています。僕たちが合唱を通して学ぶのは、そうした、人が生きていく上で本当に大切な”何か”です。いま、新型コロナウイルスの影響で合唱も大きなピンチを迎えておりますが、こんな理由からも、また歌声が学校に響く日が戻ることを願っております。音楽教育の現場で大変ななか、奮闘してくださっている先生方に、心から感謝の気持ちを贈ります。
——「教育音楽」小学版/中高版 2020年8月号 連載「ミマスの歌づくりの旅」第17回より
ミマス(〔アクアマリン〕シンガー・ソングライター)
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