音楽之友社編集者より追悼の言葉

管楽器や古楽器などを専門に多くの名著を残した佐伯茂樹さんの仕事

読みもの
2019.08.09

古楽器演奏家・音楽評論家の佐伯茂樹さんが、8月1日、心不全のための亡くなりました。享年58でした。
ONTOMOを運営する音楽之友社では、佐伯さんと共に仕事をし、記事や本を作ってきた仲間、佐伯さんに音楽や楽器にまつわる多くのことを教えていただいた恩人と仰ぐ者が多く在籍しています。突然のことに日々連絡を取り合っていた編集者も驚きを隠せませんでしたが、ここに生前の仕事ぶりを紹介するとともに哀悼の意を表したいと思います。

音楽之友社 出版社
音楽之友社
音楽之友社 出版社
昭和16年12月1日創立。東京都新宿区神楽坂で音楽の総合出版、並びに音楽ホール運営事業を行なっています。

音楽之友社 編集者からの追悼文

「レコード芸術」

『レコード芸術』では単発記事で2000年代後半から執筆を始めましたが、2010年1月号から新譜月評に「吹奏楽/管・打楽器」部門が新設されたのに伴って月評を担当され(2019年8月号まで)、同時にレコード・アカデミー賞選定委員も務められました。その後もインタヴューや特集記事、海外盤Reviewなど、弊誌になくてはならない筆者の一人として活躍されました。9月号の特集「珠玉の小品たち」48‐49ページにご寄稿いただいたのが最後の仕事になりました。

謹んで冥福を祈りたいと思います。

——「レコード芸術」編集長 大高達夫

「レコード芸術」2019年9月号(8月20日発売)
佐伯さんが担当された9月号の特集「珠玉の小品たち」より「意外に少ない管楽器の小品名曲」

「バンドジャーナル」

佐伯茂樹さんとは、エリックミヤシロさんの連載で2011年7月号から毎月いろいろなやり取りをしてきました。佐伯さんから送られてくる原稿は、いつも頭にスッと入ってくるものでした。ごく稀に「この言葉は子どもには分かりづらいです」「そんなことありませんよ」という両者の応酬もありました。凄い人なのに、編集者と同じ土俵で本音で付き合ってくれました。また、「読者に正しい情報を」ということを、常におっしゃっていたことが印象に残っています。電話での「あ、佐伯ですけど……」という、どこか人なつっこい声は忘れることができません。

心よりご冥福をお祈りいたします。

——「バンドジャーナル」副編集長 赤井淳

「バンドジャーナル」2019年9月号(8月10日発売)
佐伯さんがインタビュー・構成を担当した連載「エリック宮城さんに聞く 楽器の悩みなんでも相談室」。第100回となる最新号が佐伯さんの最後の原稿となった。

「音楽の友」

「音楽の友」で連載「新名曲解体新書」を執筆していただいていた佐伯茂樹さん。その前には連載「楽器ものしり講座」をご執筆、音楽之友社で行われた「レクチャー版」で講師も務められました。2019年9月号では連載のほかフルート奏者の柴田俊幸さんのインタヴュー記事も担当され、両記事についてやり取りを終えたばかりのタイミングでの悲報でした。

楽器に関する幅広く膨大な知識をわかりやすく伝えることに、いつも心を砕いてくださった佐伯さん。深く感謝するとともに、ご冥福を心よりお祈り申し上げます。

——「音楽の友」編集長 荒井幸太

「音楽の友」9月号(8月18日発売)
連載「新・名曲解体新書」は、9月号が最後となった。

「ムジカノーヴァ」

2016年5月号にご寄稿いただいた、「バロック時代の舞曲とヴァイオリン」という子ども向けのふりがな付き記事を、現在発売中のムック「これで万全!バロックの教え方」に収録させていただきました。
「音楽の友」編集部時代にも、折りに触れて楽器に関する膨大な知識を、本当に楽しそうに披瀝してくださいました。偉ぶらず、気さくなお人柄で、気負わずにお話しさせていただくことができました。
まだまだたくさん、なさりたいことを計画されていたことでしょう。音楽界にとっても本当にご逝去が惜しまれます。

心よりご冥福をお祈り致します。

——「ムジカノーヴァ」編集長 西脇朗子

ONTOMO MOOK

「ぜひまた大ヒット作をつくりましょう。」

佐伯さんから最後に届いたメッセージ。いま思えば、その時本づくりができる状況になかった自分を励ましてくれていたのかもしれません。それから1か月余、8月1日付けで編集企画開発課に異動になり、再び編集の仕事ができるようになったその日に、佐伯さんは旅立ってしまいました。無念でなりません。

とにかく話好き。「音楽の友」編集部時代、〆切が迫ってくると決まって夜深い時間に電話が鳴り、深夜の講義が始まります。その面白さに時間が経つのも忘れ、何度終電を逃したことでしょう。音楽への情熱に溢れ、飽くなき探求心を持ち続けた佐伯さん。まだまだ研究成果を発表して欲しかったです。

「佐伯さん、3冊目のMOOK、一緒に作りたかったです!」

——編集企画開発課 今橋学

出版部

佐伯先生のご本——『名曲の「常識」「非常識」 ~オーケストラのなかの管楽器考現学』と『名曲の暗号 ~楽譜の裏に隠された真実を暴く』、どれも音楽への愛と、まさに常識を覆す知識に溢れています。

また「バンドジャーナル」誌の連載「エリック宮城さんに聞く楽器の悩みなんでも相談室」をもとに再構成した『エリック・ミヤシロがガイドする管楽器奏者のための楽器スーパー上達術』では、エリックさんのスケジュールを縫って追加取材をし、雑誌とは違う単行本の組み立てを読者目線で考えてくださり、さまざまなシチュエーションを想定したたくさんのアドヴァイスをいただきました。「これは電子書籍にすると中高生には便利ですよ」と勧めてくださったのも佐伯先生です。本のタイトルについても長々とお電話したことを思い出します。おかげでエリックさんの現場の経験から培ったノウハウを、この1冊に展開できたと思います。

その後も、本とは関係ない質問にも快く応えていただきました。突然のご逝去はたいへん残念です。心よりご冥福をお祈りいたします。

——出版部担当取締役執行役員 塚谷夏生

佐伯茂樹(さえき・しげき)さん プロフィール

古楽器演奏家・音楽評論家

 

1960年東京生まれ。早稲田大学卒業後、東京藝術大学でトロンボーンを学ぶ。ピリオド楽器を中心に演奏活動をし、クラシカルプレイヤーズ東京を始め、国内の古楽オーケストラで古典アルトトロンボーンを担当し、古楽器を中心とした演奏活動を行なっている。日本で数少ないオフィクレイド奏者としても定評があり、バッハ・コレギウム・ジャパンなどにも参加した。ピリオド楽器による東京ヒストリカルブラスを主宰。

 

管楽器全般の研究でも知られており、2008年4月から2012年4月まで東京藝術大学大学院で楽曲と楽器に関する講議を担当。2012年には同大古楽器科で集中講義を担当した。放送大学の講義ビデオに出演。東京藝術大学古楽科、浜松市楽器博物館、福岡古楽音楽祭、日本ワーグナー協会などの招きで講演会をおこなった。2012年には、NHKテレビの「N響アワー」に、2015年には、同「らららクラシック」にゲスト出演した。

 

一方、数多くの音楽雑誌で記事や論文を執筆。国内外アーティストのインタビューでも定評がある。ラトル=ベルリンフィルなどのCDでライナーノートを執筆もしている。NHK交響楽団、読売日本交響楽団、東京都交響楽団の機関誌で連載を執筆するほか、コンサートの監修も手掛けている。『バンドジャーナル』(音楽之友社)でディスクレビューとコラムを担当。『レコード芸術』(音楽之友社)で月評を担当している。レコードアカデミー賞選定委員。ミュージック・ペンクラブ・ジャパン会員。

 

著書に『名曲の暗号』(音楽之友社)『金管楽器 演奏の新理論』『木管楽器 演奏の新理論』『管楽器おもしろ雑学事典』(ヤマハ・ミュージック・メディア)『カラー図解 オーケストラの世界』『カラー図解 吹奏楽の世界』『カラー図解 楽器の歴史』(河出書房新社) 『オーケストラ・吹奏楽が楽しくわかる楽器の図鑑(全5巻)』(小峰書店)『オーケストラの中の管楽器考現学 名曲の常識非常識』(音楽之友社)『楽器博士 佐伯茂樹がガイドするオーケストラ 楽器の仕組みとルーツ』(音楽之友社)など多数。最新刊は「名曲の真相」(アカデミアミュージック)『リチェルカール古楽器ガイド1』『リチェルカール古楽器ガイド2』(マーキュリー)日本語版監修。

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