6月特集「夏至」 天文学×音楽

夏至の夜空に浮かぶ星とは? ~天文学者ハーシェルの交響曲を聴きながら

読みもの
2019.06.17

人気の合唱曲《COSMOS》や《地球星歌》を作曲したアクアマリンのミマスさんによる、夏至の星空にまつわる音楽のお話。梅雨のおかげで星とは縁遠くなりがちな6月の夜空ですが、地球を飛び出して宇宙へ想いを馳せてみましょう。音楽家から転身した偉大なる天文学者ハーシェルの音楽を聴きながら……。

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メイン画像:国立天文台
旅の写真提供:ミマス
星と旅と歌の案内人
ミマス 作詞・作曲家/音楽ユニット「アクアマリン」メンバー
ミマス
星と旅と歌の案内人
ミマス 作詞・作曲家/音楽ユニット「アクアマリン」メンバー
Sachikoの澄みわたるボーカルと、ミマスの詞と曲を基盤とする音楽ユニット「アクアマリン」( http://aqumari.com/ )のメンバー。1998年6月結...

そもそも夏至とは?

「夏が暑い理由は、夏になると地球が太陽に近づくからである」——。

理科のテストなどで、そう回答する小中学生が少なからずいるのだそうです。確かに1年をとおして地球と太陽の距離は微妙に変化します。でも実は、地球が太陽にもっとも近づくのは1月で、もっとも遠ざかるのは7月なのです。それならば1月が夏で7月が冬にならないとおかしいですよね……。

なぜ1年の間に夏や冬などの季節が生じるのか。その仕組みを感覚的に理解するのに役立つのが「地球儀」です。地球儀は傾いていますよね。その傾きは23.4度。地球はこの傾きのまま、太陽の周りを1年かけて公転しています。

すると、地球が太陽の周りをぐるっと1周巡るあいだに、北極を中心とする北半球のほうを太陽に向ける時期と、逆に南極を中心とする南半球側を太陽に向ける時期がでてきます。毎年6月22日頃に北半球側がもっとも広く太陽に向く日となり、これが北半球の夏至となります

この前後の時期は、地球がいくらコマのように自転しても、北極周辺には太陽の光が当りっぱなしになります。これが、何ヶ月も昼間の状態が続く「白夜」という現象です。

日本など北半球の中緯度の国々では、1年をとおして太陽がもっとも空高く輝くようになります。太陽が真上近くから照らせば地表の温度も上がります。これが、北半球での夏となります。

ところで、世界地図や地球儀には、赤道を挟んで「北回帰線」と「南回帰線」という2本の線が描かれています。

回帰線とは簡単にいうと、夏至の日の正午に太陽が天頂で輝くようになる地点をつないだもの。北緯23.4度と南緯23.4度のラインがそれにあたります。もしあなたが夏至の日の正午に回帰線の上に立てば、頭の真上で輝く太陽を見ることができるでしょう。

ちなみに回帰線を英語でいうと「tropic(トロピック)」。「熱帯」を表す「トロピカル」という言葉は、南北2本の回帰線に挟まれたゾーンという意味合いです。

2005年、オーストラリア大陸を縦断するスチュアート・ハイウェイをレンタカーで旅しました。大陸の真ん中の町アリススプリング近郊で南回帰線を越えるのですが、ここに地球儀を模したモニュメントがあります。
プレートには「TROPIC OF CAPRICORN」(トロピック・オブ・カプリコーン=南回帰線)と書いてあります。カプリコーンとは「やぎ座」の意味なのですが、やぎ座がなぜ関係あるのかは、天文学的な複雑な話になってしまうので割愛します……。

初夏の夜空を見上げると

五月晴れ(さつきばれ)」という美しい日本語があります。ゴールデンウィークに絶好のお出かけ日和になると、つい「素晴らしい五月晴れだね!」なんて言ってしまいがちです。でも、本来この言葉は旧暦の五月、梅雨の時期の晴れ間をさすものでした。

梅雨の時期は雨が続き、星好きにとってはしばらく大好物を取り上げられたような気分(笑)になります。ところが、いわゆる五月晴れ、長雨が止んで晴れ上がった日の星空はたいへん美しいものです。空気中の細かいチリを雨が洗い流してくれるため、台風一過の晩と並んで素晴らしい星空が見られるタイミングの一つなのです。

夏至のころに見頃を迎える美しい星をひとつご紹介しましょう。初夏の宵に天頂(頭の真上)近くで輝く、うしかい座のアルクトゥールスという1等星です。たいへん明るく、黄金色の輝きが美しい華やかな星です。アルクトゥールスという名はギリシャ語で「熊の番人」の意味。となりの「おおぐま座」を後ろから追い立てながらついてゆくような位置にあることからついた名です。

星の名前には、西洋のものとは別に「和名」というものがあります。日本の庶民(多くは農民や漁師)によって昔から呼ばれてきた、伝統的かつ民俗的な名前です。

アルクトゥールスは、麦の収穫の時期に高く輝くことから「麦星」とも呼ばれました。また、梅雨の時期に高く昇ることから「さみだれぼし」という極めて美しい名前も伝えられています(「さみだれ(五月雨)」も梅雨をさす言葉ですよね)。

初夏には、この図での中央付近、つまり頭の真上近くに、うしかい座のアルクトゥールスが見られる。
©国立天文台

夏至の夜に聴きたい音楽

1年でもっとも短い夏至の夜が明けるころ、東の空に「天王星」が昇ってきています。太陽系の7番目の惑星です。

天王星の明るさは6等星(人間が肉眼で見ることができるもっとも暗い星)程度ですので、普通の人が肉眼で見つけるのはほぼ不可能でしょう。しかし大きな望遠鏡で見ると鳥肌が立つほど美しい薄緑色をしているので、チャンスがあったらぜひ一度ご覧いただきたいものです。

ところで、この天王星を発見した偉大な天文学者ウィリアム・ハーシェル(1738-1822/ドイツ出身)は、音楽家としても超一流でした。ハーシェルが作曲した交響曲は、こんにちCD化され、普通に買って聴くことができるのです。

年代的にはバロックが終わり古典派の時代に入る頃ですから、どちらかというと「職人的」な音楽です。毎晩星空を眺めていた人が作ったからといって、ロマン派のメンデルスゾーンみたいな甘美な音楽が繰り広げられるわけではありません。

しかし、僕個人としては、とてもわかりやすく、親しみやすい音楽だという印象を受けました。今も時おり聴いて楽しんでいます。

ハーシェルは、1781年に自作の望遠鏡で天王星を発見しただけでなく、星雲のリストを作り、無数の恒星までの距離を推定して銀河系の形を予測するなど、科学史に多くの業績を残しました。

そんな異色の人が作った音楽だと思うと、やはり聴きながら特別な感慨が込みあげてきます。

ウィリアム・ハーシェル(1738-1822)。ドイツのハノーファー出身の天文学者。軍楽隊員としてヨーロッパで活躍し、イギリスへ移住。音楽教師や楽団長として活動するうちに、天文学に興味をもつようになった。
自作した400台以上の望遠鏡のなかでも最大のものが、焦点距離40フィート(12m)、口径49 1/2 インチ(126cm)。

僕は土星の「ミマス」という衛星からミュージシャンとしての芸名をいただいているのですけれど、この衛星ミマスを1789年に発見したのもウィリアム・ハーシェル大先生です。個人的な話で失礼いたしました。

夏至や梅雨といえば、1年でもっとも星空と縁遠い季節。でも、夢のように儚い”真夏の夜”にも星たちは輝いています。魅力的な星や星座をもっとご紹介したいところですが、また機会があればということで……。

2007年には北欧諸国(フィンランド、ノルウェー、エストニア)を旅しました。写真はエストニアの首都タリンにてバルト海に触れる筆者。ちょうど6月で夏至に近い時期でしたので、北極圏では太陽が24時間沈まない白夜を体験できました。興味深い体験ですが、体内時計が狂って明らかに身体に変調をきたしますね。日本に帰っていちばん安心したのは「夜が暗い」ということでした。
左下にある天王星の衛星「オベロン(Oberon)」は、シェイクスピアの「真夏の夜の夢」(A Midsummer Night’s Dream)に登場する妖精の王様の名前からインスピレーションを得て名付けられた。©国立天文台

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