ミマス連載「歌と旅と星空と」

第2章:想いが曲になるまで  Vol.5 心のなかの広い宇宙を

読みもの
2017.01.10

日本全国の学校や合唱団で歌われ続けている合唱曲《COSMOS》や《地球星歌》。旅の体験や星空の影響を受けた作者のミマスさんが自身の想いをこめた歌です。そのメッセージが、十数年の時をかけて歌とともに広まっています。この連載ではプロローグ《地球星歌の旅》に続き、ミマス作品に込められたご本人の体験をエピソードとともに紹介していきます。

文・写真
ミマス 作詞・作曲家/音楽ユニット「アクアマリン」メンバー
ミマス
文・写真
ミマス 作詞・作曲家/音楽ユニット「アクアマリン」メンバー
Sachikoの澄みわたるボーカルと、ミマスの詞と曲を基盤とする音楽ユニット「アクアマリン」( http://aqumari.com/ )のメンバー。1998年6月結...

合唱曲《心のなかの広い宇宙を》は、2016年に楽譜が世に出た新しい曲です。これからいろいろな所で歌っていただけると嬉しいです。タイトルだけを見ると何だか壮大な感じですが、詞の内容は児童の皆さんにとって身近な学校生活や日常の風景を歌ったもの。普遍的な内容ですから、多くの方々に自然な気持ちで歌っていただけることと思います。今回は、この歌が誕生した経緯についてお話しすることにしましょう。

岩手県に、花巻市立若葉小学校という学校があります。この学校は平成27年度に創立50周年を迎えました。その大きな節目を祝う記念事業として「みんなで一つの歌を作る」というプロジェクトが立ち上がったのです。

花巻市立若葉小学校の玄関にて
花巻市立若葉小学校の玄関にて。キレイな校舎と広い校庭で、みんな元気に学んでいます。とても明るい雰囲気の小学校です。

歌作りには、6年生の3クラス121名の児童全員が携わることになりました。児童の皆さんが歌に込めたい言葉や想いを自分たちで出してまとめた上で、それを元に僕が作詞作曲をするという形です。学校関係者の皆さんは、児童のみんなと僕が実際に何度も対面し、お互いによく知り合うことが重要だとお考えになったのでしょう。僕は神奈川県から、1年度に3回も岩手県にお招きいただき足を運ぶことになりました。まず2015年10月に、アクアマリン(僕がピアノを弾きボーカルのSachikoが歌う音楽ユニット)のコンサートをお届けしました。児童の皆さんは、僕たちがどんな音楽を作っている人たちなのか知ることができたでしょう。翌月もまた学校を訪れ、6年生を対象に『歌の作り方』の授業とワークショップを実施。とくに作詞の仕方や、言葉の選び方のコツについて解説しました。その後、児童さんたちは班ごとに分かれて話し合い、歌詞に入れたい言葉、込めたい想いをたくさん出してくれたのです。曲が完成した後も、歌唱指導のためにもう一度みんなに会いに行っています。こうした一連の交流は、一緒に歌をつくるためにはとても重要なプロセスだったと思います。

作詞作曲をする際に自分で作ったシート
作詞作曲をする際に自分で作ったシート。児童さんたちが出してくれた膨大な数のワードをこのように自分が見やすいようにまとめ、この紙を眺めながら歌作りを進めてゆきました。

そうして完成した歌が《心のなかの広い宇宙を》。この曲は、タイトルだけではなく詞の中にも「宇宙」「星」「星座」という言葉が登場します。ふつう、校歌や学校の愛唱歌には、こうした「夜」をイメージさせる言葉はあまり使われません。しかしこの歌を作るなかで、僕はこれらの言葉を積極的に使おうと早い段階から決めていました。児童のみんなが出してくれた言葉のなかにも、星や宇宙はひじょうに多かったのです。そこには、この学校ならではの、特殊な事情があったのです。

宮沢賢治を知っていますか。「銀河鉄道の夜」「雨ニモマケズ」「風の又三郎」など、数々の名作を残した人です。岩手県出身の人で、とくにこの花巻市には深いゆかりがあります。なかでもこの若葉小学校は宮沢賢治にきわめて「近い」学校なのです。学校の隣には文化会館のホールがあるのですが、ここは昔、宮沢賢治が先生として教えていた花巻農学校があった場所。さらに、よく本などで見かける宮沢賢治の有名な写真(黒いコートと帽子に身を包み、うつむきながら歩いている姿)も若葉小学校のごく近所で撮られたものなのだそうです。ある保護者の方が、「私の祖父が賢治さんに本をもらったことがあるそうだ」と言っていたのには驚きました。この地域の人々にとっては、今も宮沢賢治は近所のお兄さんといった感じの身近な存在のようです。各学年の授業でも積極的に、地元の誇りである賢治の作品に取り組んでいます。素晴らしいことだと思います。

若葉小学校の周辺には、宮沢賢治ゆかりの場所が点在しています
若葉小学校の周辺には、宮沢賢治ゆかりの場所が点在しています。児童のみんなは空気を吸うように賢治作品に親しみ、日々その精神に触れています。

宮沢賢治はふつう「童話作家」と紹介されます。しかし同時に優秀な科学者でもありました。地質学と天文学に関する知識は学者レベル。実際に地質学の学術論文も書いて、地元の地層から出る貴重な化石の報告をしています。有名な「銀河鉄道の夜」など星空をモチーフにした作品も多いですが、僕のような天文ファンが読んでも、多くの作品で「この人の星座や天文学に関する知識は凄い!」と敬服せざるをえない描写に溢れています。さらに凄いのは音楽にも造詣が深かったこと。チェロなどの楽器を演奏し、自身で作詞作曲した《星めぐりの歌》は現在も多くのミュージシャンによって演奏されています。

宇宙、地球、音楽……。多岐にわたる深い知識と才能をもつ宮沢賢治が究極的に目指していたのは、「万人の幸せ」でした。みんなが一緒に幸せに生きてゆける世界。賢治の作品や生き様のすべてがその理想を目指しているように思えます。若葉小学校の皆さんと歌を作るというお仕事に携るなかで、こうした要素はぜひ取り入れたいと考えました。

しかしながらこの歌の詞には、岩手や花巻、ましてや宮沢賢治など特定の地域を示す言葉が入っているわけではありません。世界中のどの町や地域にも、それぞれ誇るべき自然や歴史や文化が必ずあります。お子さんたちには、その価値に気づき、その中で暮らしたり成長したりできる幸せを感じてほしい。そしていつかは自分が、それを大切に育てて後世に伝えながら、地域(国でも世界でもいいのですが)の未来を作る人になってほしい……。そんな願いこそ、この歌の本質です。

ミマス

 

歌の出だしは「楽しい教室」や「広い校庭」など身近な描写から始まります。ここからだんだんと世界が広がり、最後は地域や世界の未来、自分自身の将来に思いを馳せるところまで行きます。単に言葉をメロディに乗せるのではなく、イマジネーションを膨らませながら歌い進めてくださると深みが増すと思います。

サビの部分のコード進行は、F→F#dim→Gm→C→C#dim→Dmと半音上昇で動きます。主旋律はほぼ動かないのに根音が一段ずつ登ることでハーモニーが微妙に変わってゆくニュアンスは、きっと小学生でも何となく感じて楽しんでもらえるのではないかなあ、と個人的には期待してます。

もしあなたのクラスや合唱団でこの歌を歌ったら、この連載のプロローグにある、皆さまの合唱の動画を発表するコーナーに応募してみてください。この曲だけでなく、《COSMOS》《地球星歌》などミマス作品ならどの曲でもOKだそうです。世界に向けてぜひ皆さんの歌声を発表してください。応募方法は「歌声を発表しよう」をごらんください。

 

今月は少しトリビア的な話題をとりあげることにしましょう。突然ですが、星座の数はいくつかご存知でしょうか?答えは88個。意外と多いでしょう。この88個という星座の数、じつはピアノの鍵盤数と同じです。この話をしたあとに、「ですから星空と音楽は深いつながりがあるのです」なんて言うと、皆さん深く感心したような顔になります。ただの偶然なんですけどね(笑)。あなたもぜひ今度、会話のネタに使ってみて下さい。

そんなたくさんの星座のなかで、いちばん大きな星座は何でしょうか。答えは「うみへび座」。東西にひじょうに長い星座なので、頭が西の地平線に沈みかけた頃、シッポの先がやっと東の地平線の上に昇りきります。春の星座なのでちょうど今が見頃ですが、あまりにも長大で暗い星ばかりが続いているので上級編と言えるでしょう。逆に最も小さな星座が「みなみじゅうじ座」。有名な南十字星はそれ自体が一つの星座です。4つの明るい星が小さな菱形を作っているのですけれど、これを四角形にするのではなく対角線を結んで十字にするのです。ちょっと強引な感じがするなあと思った方も、実際に南十字星を見たらその美しさに感動することでしょう。沖縄県南部などを除く日本のほとんどの地域では見ることができませんが、南半球の国々では空高く昇ってよく見えます。こちらも旬はこれからの季節、春から初夏にかけてです。ゴールデンウィークにオーストラリアなどに行く方には、ぜひご覧いただきたいものです。

★春の星空のようす 2017年3月の星空(アストロアーツ:星空ガイド)


 

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 <ミマスのライブ映像>

星空音楽館20周年記念!ありがとうコンサート ライブ動画

 

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