弁護士・阿友子の ミュンヘンからの音楽便り#7 ミュンヘンから、Xmasの贈り物
大好評のONTOMO連載「インターネットと音楽についての法律相談室」でおなじみの弁護士、橋本阿友子さんが、ミュンヘンでの研究生活や、社会人として音楽を学ぶ意義を考えながら徒然なるままに思いの丈を綴る連載。
最終話となる今回は、Xmas マーケットで使用される音楽使用料とGEMA(ドイツの音楽著作権を管理する団体)にまつわる話をお届けします。
京都大学法学部卒業、京都大学法科大学院修了。ベーカー&マッケンジー法律事務所を経て、2017年3月より骨董通り法律事務所に加入。東京藝術大学利益相反アドバイザー、神戸...
ドイツの冬といえば、Xmasマーケット。例年は12月に雪が降らないミュンヘンですが、今年は1933年以来の大雪に見舞われ、少し早いホワイトXmasとなりました。
幼い頃は、Xmasマーケットといえば、どこの市でもメイン広場で行なわれるもので、地域によっても大して変わらないと思っていましたが、今回オーストリア・ドイツのマーケットをまわった結果、それぞれに個性があることに気づきました。
とくに、森の中で開かれているマーケットでは、いたるところに舞台があり、人形劇やら紙芝居、読み聞かせなど、いろいろな趣向が凝らされていました。もちろん音楽の舞台もあるのですが、意外にも、宗教的な雰囲気のあるクラシック音楽や、誰もが知っているXmasソングではなく、明るいポップなリズムが聞こえてきます。
実は今年、このXmasマーケットで流れる音楽が、ここドイツで世間を騒がせていました。前回の「#6 リヒャルト・シュトラウスの置き土産」でご紹介したGEMA(日本でいうJASRACにあたる音楽著作権管理団体)が、Xmasマーケット主催者に対して、音楽使用料として法外な金額の請求書を送付したというのです。フランクフルトでは、2019年以降、なんと40倍まで膨れ上がったとか。
Xmasマーケットで使用する音楽の使用料は敷地面積をベースに計算されるそうですが、GEMAの職員が抜き打ち検査を行なった結果、実際と異なる面積が申告されていた例があり、これまでの支払いより多額の支払いを求められたXmasマーケットが散見された、というのが事実のようです。
この件に関しては、各地でも抗議運動が起きており、ポツダムはいわゆる著作権フリーの曲のみを使用することにし、ライプツィヒは交渉により当初の半額を支払うことで合意したそうです。
個人的には、パブリックドメイン(古くに作られ自由に[無許諾かつ無償で]使えるもの)になっている讃美歌や、伝統的なXmasソングのほうが好みなのですが、なかには子どもむけのマーケットもあり、著作権使用料を一切支払わない選択肢を採り難い事情もあります。はて、ドイツ人の魂ともいえるXmasマーケットは、今後どうなるのでしょうか。
その終焉を見届けることなく、私のミュンヘン滞在は終わりを迎えようとしています。聴き損ねた演奏や観劇できなかった舞台は山ほどあり、たくさんの未練を残したまま去りますが、私にとってドイツは縁の深い国。本コラムの連載は、いったんここで幕を閉じますが、きっと近いうちに渡独すると思います。またどこかでお会いできることを祈りつつ、読者の方々にはこの場をお借りして、感謝申し上げます。
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