音楽映画ランキング! 8名のナビゲーターがオススメする35の名作
10月は「音楽映画」特集。近年話題になった名作はもちろん、映画史に名を残す傑作、通好みの知られざる名作まで、音楽好きならチェックしておきたい音楽映画をランキング形式でご紹介します。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
10月は「音楽映画」特集。現在公開中の『蜜蜂と遠雷』、11月から公開する『マチネの終わりに』など邦画界も話題作が目白押しですね。そこで、音楽が劇中で重要な役割を果たしている名作をランキング形式でご紹介します。
「クラシック」「ジャズ」「ロック&ポップス」「ミュージカル&歌」部門ごとに編集部でノミネートした作品に、映画好きのONTOMOナビゲーターが、3位 3点/2位 6点/1位 10点の配点で投票。
あなたのお気に入りはランクインしていましたか?
投票に参加したナビゲーター:
飯尾洋一/岩崎由美/オヤマダアツシ/小室敬幸/水野蒼生/東端哲也/山﨑隆一/よしひろまさみち/編集部(五十音順、敬称略)
クラシック部門
第3位 不滅の恋/ベートーヴェン(10ポイント)
ベートーヴェンの秘書を務めたアントン・シントラーが、謎めいた「不滅の恋人」(ベートーヴェンが名前を明かしていないラブレターの相手)の正体を探るミステリー風味の伝記作品。音楽もいろいろ聴けて飽きさせないが、ベートーヴェンを演じるゲイリー・オールドマンが、同年公開の『レオン』でベートーヴェン聴きながら人をバンバン殺しちゃう麻薬捜査官を演じていて、個人的にはそこがツボです。(オヤマダアツシ/音楽ライター)
上映時間: 121分
製作年: 1994年
配給: ギャガ
監督: バーナード・ローズ
出演: ゲイリー・オールドマン、ジェローン・クラッベ、他
1827年、ウィーン。一人の偉大な作曲家が息を引き取った。彼の名はルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン。耳が不自由だという、音楽家としては致命的な困難を抱えながらもその才能で数々の名曲を残した男。その死後まもなく、彼の書いた遺書が発見された。そこには彼が〈不滅の恋人〉と呼ぶある一人の女性に想いを込めて書かれた愛の言葉がしたためてあった。だがそこに宛て名はない。彼の弟子であり親友だったアントン・シンドラーは、彼の本当の心を知る為にその“相手”を探しはじめる…。
第3位 Brassed Off!(ブラス!)(10ポイント)
イギリス映画の定番、炭鉱と炭鉱町には必須のブラスバンドをちゃんと取り上げたうえで、めちゃくちゃ感動するストーリーに紡ぎ上げているから。しかも、タイトルは皮肉たっぷりのダブルミーニング。今公開したら以前以上に盛り上がるかも。(よしひろまさみち/映画ライター・編集者)
上映時間: 107分
製作年: 1996年
配給: シネカノン
監督: マーク・ハーマン
出演: ユアン・マクレガー、ピート・ポスルスウェイト、他
鉱山閉鎖に揺れ動くイングランド北部の小さな街グリムリー。街では炭坑で働く男達のブラスバンドグループ、グリムリー・コリアリー・バンドが結成されている。
音楽に全情熱を注ぐリーダーで指揮者のダニーは、活気を取り戻そうとブラスバンドの全英選手権に出場するつもりだった。しかし失業の恐怖に脅かされたメンバー達はダニーのように熱心には取り組めない。崩壊していくコミュニティを舞台に、音楽と共に生きる喜びと、友情に支えられた人生の素晴らしさを描く。
第3位 クララ・シューマン 愛の協奏曲(10ポイント)
生まれてくる時代や環境、人間関係にも恵まれ、劇的で波瀾に富んだ感動的な生涯を送った音楽家クララ・シューマンを描いた伝記映画は他にもあるが、本作はキャスティングが絶妙。名優パスカル・グレゴリーのシューマンもハマり役だが、フランス人俳優、マリック・ジディくん演じる青年ブラームスがカワイすぎて衝撃。シューマン家で子どもたちのお世話する、明るくて面倒見の良いお兄ちゃんなヨハネスが眩しい……私の中で巨匠ブラームスのイメージ変わったかも。ちなみに監督はブラームスの末裔とか……どおりで。(東端哲也/ライター)
上映時間: 109分
製作年: 2008年
配給: アルバトロス・フィルム
監督: ヘルマ・サンダース=ブラームス
出演: マルティナ・ゲデック、パスカル・グレゴリー、 マリック・ジディ、他
天才芸術家たちの秘められた三角関係を美しい旋律にのせて描く究極の愛の物語。後世の残る名曲を輩出した天才作曲家ロベルト・シューマンの妻クララは、ピアニストとしてヨーロッパツアーを回りながら、精神薄弱な夫を支え、7人の子供の母として多忙な日々を送っていた。そんな時、彼女の前に若き新進作曲家ヨハネス・ブラームスが現れる…。“ブラームス家の末裔”ヘルマ・サンダース=ブラームス監督が音楽界のタブーに迫る。(「Oricon」データベースより)
第2位 アマデウス(14ポイント)
仕事柄、クラシック音楽を題材とした映画は相当な数を見ているのだが、趣味性を満たす「良作」はたくさんあっても、映画として心底よく出てきていると思う「傑作」はめったにない。そんな数少ない大傑作が「アマデウス」。選曲の巧みさ、説得力のある人物造形、映像の美しさ、そしてなにより万人に訴える普遍的なテーマ性がある。モーツァルトと対比させて、サリエリという(映画の設定上は)「凡庸な秀才」に光を当てるとは、なんという発想の鋭さ。(飯尾洋一/音楽ライター・編集者)
上映時間: 158分
製作年: 1984年
配給: 松竹富士
監督: ミロス・フォアマン
出演: F・マーリー・エイブラハム、トム・ハルス、他
凍てつくウィーンの街で自殺を図り精神病院に運ばれた老人。彼は自らをアントニオ・サリエリと呼び、皇帝ヨゼフ二世に仕えた宮廷音楽家であると語る。やがて彼の人生のすべてを変えてしまった一人の天才の生涯をとつとつと語り始める…。
第1位 カストラート(23ポイント)
評価の優先順位を「音楽」「映画」のどちらにするかで判断が変わってくるだろうが、前者を優先して(ノミネート作のなかでは)これをナンバーワンにしたい(後者を優先すればベタに「アマデウス」を推す)。ミュージカルとは異なる形で、音楽そのものが映画のドラマツルギーと分かち難く噛み合い、その音楽そのものが映画のテーマを表現しているもの。そうした映画こそを真の音楽映画と呼びたい。(小室敬幸/作曲・音楽学)
カストラートという存在を知らなかった時に見て、衝撃を受けた作品。バロック・オペラ時代に全盛期だったカストラートは、スター歌手として絶大な人気を誇っていた。少年の声で居続けるために去勢し、超高音域の声の高さと技量で人々を魅了した。実在したカストラート歌手ファリネッリの生涯を描いた伝記映画で、その声にも、耽美的な映像にもとりこになった。映画ではコンピュータを駆使して声をつくり上げていたが、本物のカストラートはどんな声だったんだろう。(岩崎由美/ジャーナリスト、フリーアナウンサー)
上映時間: 111分
製作年: 1994年
配給: ユーロスペース
監督: ジェラール・コルビオ
出演: ステファノ・ディオニジ、エルザ・ジルベルスタイン、他
その声に男たちはただ驚嘆し、女たちは肉体をささげた―。かつて18世紀のヨーロッパに実在した、禁断の声を持ったカストラート。そのボーイソプラノを維持する為に去勢され、20世紀の現代では存在そのものが禁じられているカストラートのバロック・オペラの中でも、伝説のカストラートと呼ばれたファリネッリ。物語は、彼を取り巻く陰謀、政略、裏切り、苦しみを史実を基に展開してゆく(「Oricon」データベースより)
ジャズ部門
第3位 COLD WAR あの歌、2つの心(12ポイント)
上映時間: 88分
製作年: 2018年
配給: キノフィルムズ
監督: パベウ・パブリコフスキ
出演: ヨアンナ・クーリク、トマシュ・コット、他
音楽家で指揮者のヴィクトルと生徒だったズーラはポーランドの音楽舞踏学校で出会い、愛し合うようになる。冷戦中、ヴィクトルは政府に監視されるようになり、ベルリンでの公演時にパリに亡命する。歌手になったズーラは公演活動で訪れたパリやユーゴスラビアでヴィクトルと再会する。
ズーラは彼に会うために、コルシカ島出身の男性と結婚し、パリに住み始めるが、やがてポーランドに戻ってしまい、ヴィクトルも後を追う。しかし、ポーランドへ戻った彼は拘束されてしまう。二人の愛が結ばれる日は来るのだろうか……。
第2位 セッション(19ポイント)
とっつきにくいジャンルのジャズを、鬼教授のパワハラ&上昇志向高過ぎ問題の学生の物語に落とし込んだのは◎。スタンダードナンバーにワクワクしました。日本においては、吹奏楽のコンクールバンドの経験がある人なら、絶対に共感を得られるはず。(よしひろまさみち/映画ライター・編集者)
上映時間: 106分
製作年: 2014年
配給: ギャガ
監督: デミアン・チャゼル
出演: マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、他
名門音楽大学に入学したニーマン(マイルズ・テラー)はフレッチャー(J・K・シモンズ)のバンドにスカウトされる。ここで成功すれば偉大な音楽家になるという野心は叶ったも同然。だが、待ち受けていたのは、天才を生み出すことに取りつかれたフレッチャーの常人には理解できない〈完璧〉を求める狂気のレッスンだった。浴びせられる罵声、仕掛けられる罠…。ニーマンの精神はじりじりと追い詰められていく。恋人、家族、人生さえも投げ打ち、フレッチャーが目指す極みへと這い上がろうともがくニーマン。しかし…。
第1位 ラ・ラ・ランド(23ポイント)
1位にしておいて何だが、あくまで『ラ・ラ・ランド』はジャズ映画ではなくミュージカル映画である。映画のなかで演奏される「ジャズ風」の音楽はすこぶるジャズミュージシャンやリスナーから評判が悪いし、あくまでもジャズ的な要素の入ったミュージカルの音楽として聴くべきなのだ(なお2位の『セッション』もジャズ映画ではなく、スポ根モノである)。では何がすごいのかといえば、詳細は別記事をご参照いただきたいが、物語と音楽のシンクロ度合い。これこそが映画(付随の)音楽ではなく、音楽映画の醍醐味だ。(小室敬幸/作曲・音楽学)
ジャズ部門の候補が少なすぎ……例えば天才ミシェル・ルグランのめくるめくサウンドに彩られたジャック・ドゥミ監督の2大傑作フレンチ・ミュージカル《シェルブールの雨傘》と《ロシュフォールの恋人たち》はこの部門では? ……ということで《ラ・ラ・ランド》を第1位に選んだのはその2作品へのオマージュ込みで。とはいえ、薄明の桟橋の上でライアン・ゴズリングの物憂げな声で歌われる〈シティ・オブ・スターズ〉と、ブロードウェイ経験もあるエマ・ストーンが熱唱する〈オーディション〉とか必見。(東端哲也/ライター)
上映時間: 128分
製作年: 2016年
配給: ギャガ/ポニーキャニオン
監督: デミアン・チャゼル
出演: ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、他
夢を叶えたい人々が集まる街、ロサンゼルス。映画スタジオのカフェで働くミアは女優を目指していたが、何度オーディションを受けても落ちてばかり。ある日、ミアは場末の店で、あるピアニストの演奏に魅せられる。彼の名はセブ(セバスチャン)、いつか自分の店を持ち、大好きなジャズを思う存分演奏したいと願っていた。やがて二人は恋におち、互いの夢を応援し合う。しかし、セブが店の資金作りのために入ったバンドが成功したことから、二人の心はすれ違いはじめる…。
ロック&ポップス部門
第3位 アリー/スター誕生(12ポイント)
上映時間: 135分
製作年: 2018年
配給: ワーナーブラザース
監督: ブラッドリー・クーパー
出演: ブラッドリー・クーパー、レディ・ガガ、他
自分に自信がなく歌手の夢を諦めかけていたアリー。有名ミュージシャン=ジャクソンとの偶然の出会いが、彼女の人生を大きく変える。――「君の歌は奇跡だ」ウエイトレスから一気にスターダムを駆け上っていくアリー。激しく惹かれあうジャクソンと、全米のステージで一緒に歌う幸せな日々を過ごすが、次第に自分を見失っていき…。愛と成功のはざまで、最後に彼女がつかんだものとは――?
第2位 ハイ・フィデリティ(16ポイント)
ヒップホップ&ストリート・ファイトが見事にマッチした「TOKYO TRIBE」は現代のミュージカルなんじゃないか?と思うのだが、それはいいとして、流行っていなさそうな中古レコード店を舞台に曲者の客が集まる「ハイ・フィデリティ」は、レコードヲタク必見の映画。店先でトリビアクイズ始めちゃったり、ベルセバを愛聴するリスナーが軟弱者呼ばわりされたり、登場人物の誰かに「あれは自分だ」と共感すること間違いなし。(オヤマダアツシ/音楽ライター)
上映時間: 113分
製作年: 2000年
配給: ブエナビスタ
監督: スティーヴン・フリアーズ
出演: ジョン・キューザック、イーベン・ヤイレ、トッド・ルイーゾ、他
シカゴで小さな中古レコード・ショップ〈チャンピオンシップ・ヴァイナル〉を経営している、音楽オタクで、30代、独身男のロブ・ゴードン(J・キューザック)。ある日突然、同棲中の恋人ローラ(I・ヤイレ)が理由も告げずに出て行ってしまう。「なぜ?」「もしかして、自分には恋愛相手として何か重大な欠点が?」。ふと思い出したのは、過去に自分が経験した辛い失恋トップ5。昔の彼女たちに「自分の何が問題だったか」を問いただし、ローラの本当の気持ちを理解しようとするが…。
第2位 ロケットマン(16ポイント)
モーツァルトやベートーヴェンに匹敵する存在感を示すコンポーザーで、音楽史上最強の“サヴァイヴァー”な作曲家、エルトン・ジョン。そんな彼の創造性の秘密やアーティストとしての生き様をミュージカル仕立てで綴った傑作。ハンサムな顔とセクシーな身体つきで知られるナイスガイ俳優のタロン・エジャトンくんが、卓越した演技力とメイクで個性的な容姿のエルトンになりきっている。歌唱力抜群の彼が煌びやかな衣装に身を包み、ピアノを弾き語りする圧巻のステージ・パフォーマンスを見逃すな!(東端哲也/ライター)
上映時間: 121分
製作年: 2019年
配給: 東和ピクチャーズ
監督: デクスター・フレッチャー
出演: タロン・エガートン、ジェイミー・ベル、他
不仲な両親の間で孤独に育った少年は音楽の才能を開花させ、古くさい本名を捨て「エルトン・ジョン」と名乗り、レコード会社の公募で出会ったバーニー・トーピンの美しい詩の世界に惚れ込み、一緒に曲作りを始める。そして誕生した、彼の代表作として世界的に知られる名曲「ユア・ソング(僕の歌は君の歌)」が注目され、デビューが決まる。LAのライブハウスでのパフォーマンスをきっかけに、エルトンは一気にスターダムへ駆け上がっていくのだが…。
第1位 ボヘミアン・ラプソディ(20ポイント)
最初のフレーズを聴いただけで、心が踊りだしそうになる作品。はじめは「クイーンはあまり知らないからなぁ」と興味を持っていなかったのだけれど、あまりのSNSでの過熱ぶりに、ついに劇場に足を運んだらハマってしまい、抜けられなくなった。一緒に足踏みしたり手をたたいたり、くせになる。フレディの4オクターブを超える声域や、音を的確にとらえ、美しく優しく、時に繊細に、そして力強く観客のハートをがっちりとつかむ歌は何度聴いてもいい。(岩崎由美/ジャーナリスト、フリーアナウンサー)
この世で僕がもっとも敬愛するロックバンドQUEEN、そして天才的ボーカリストのフレディ・マーキュリー。その伝記映画が製作されるニュースを初めて目にしたのはもう8年ほど前。いつも今か今かと待ち望み、過剰に膨らんだ期待を抱く僕を、この映画は見事に震わせてくれた。昨秋に六本木で試写会を観た帰り道、映画にぶちのめされ放心状態になった僕は気がついたときには徒歩で渋谷まで歩いていた。(水野蒼生/クラシカルDJ・指揮者)
上映時間: 134分
製作年: 2018年
配給: 20世紀フォックス
監督: ブライアン・シンガー
出演: ラミ・マレック、ルーシー・ボーイントン、他
1970年、ロンドン。ライブ・ハウスに通っていた若者フレディ・マーキュリーは、ギタリストのブライアン・メイとドラマーのロジャー・テイラーのバンドのボーカルが脱退したと知り自らを売り込む。二人はフレディの歌声に心を奪われ共にバンド活動をし、1年後、ベーシストのジョン・ディーコンが加入。バンド名は〈クイーン〉に決まり、4人はアルバムを制作し、シングル「キラー・クイーン」が大ヒット。個性的なメンバーの革新的な挑戦によって、その後もヒット曲が次々に生み出され、フレディは“史上最高のエンターテイナー”とまで称されるようになる。しかし、栄光の影で次第にフレディはメンバーと対立し孤独を深めていくのだった……。
ミュージカル&歌部門
第3位 グレイテスト・ショーマン(16ポイント)
これを1位に持ってくるあたり、改めて自分はミーハーな人間だなあと思う。
でも、そう思われてもいいと思うほどに、この映画は音楽のクオリティがまあ高い。ストーリーも超王道なものだけれど、大きな野心とともに自分で仲間を探し集め、ショーを企画する。そんな主人公の姿がまるで、オケを集めコンサートを企画してきた自分と強く重なった。それだけ感情移入もしてしまうから、途中からは結構観るのがキツかったりもしたけれど(笑)。(水野蒼生/クラシカルDJ・指揮者)
上映時間: 105分
製作年: 2017年
配給: 20世紀フォックス
監督: マイケル・グレイシー
出演: ヒュー・ザックマン、ザック・エフロン、他
19世紀半ばのアメリカ。幼馴染の妻と子供たちを幸せにすることを願い、挑戦と失敗を繰り返してきたP.T.バーナムは、ついにオンリーワンの個性を持つ人々を集めたショーをヒットさせ、成功をつかむ。しかし、彼の型破りなショーには反対派もいた。若き相棒のフィリップをパートナーとして迎え、彼の協力によりイギリスのヴィクトリア女王に謁見するチャンスを得たバーナムは、そこで美貌のオペラ歌手ジェニー・リンドと出会う。彼女のアメリカ公演を成功させ、一流のプロモーターとして世間から認められようとするバーナムだったが……。
第2位 サウンド・オブ・ミュージック(19ポイント)
近年の「ミュージカル」人気は目を見張るものがあるとはいえ、(言うまでもないことだが)「ミュージカル映画」を観に行く層はそれ以上に多い。それは50年代までのミュージカル映画が娯楽のど真ん中であった黄金時代の名残であるし、規模こそ違えど現在でもその流れが続いているのは『サウンド・オブ・ミュージック』という映画の存在があってこそ。音楽自体がミュージカルという範囲に留まるものでないというのも重要な要素だろう。(小室敬幸/作曲・音楽学)
上映時間: 174分
製作年: 1965年
配給: 20世紀フォックス
監督: ロバート・ワイズ
出演: ジュリー・アンドリュース、クリストファー・プラマー、他
歌を愛する修道女見習いのマリアは、トラップ家の7人の子供達の家庭教師となる。軍隊式の規律で守られた厳格な家庭に戸惑うマリア。だが持ち前の明るさと歌で、子供達の心を開いていく。再び明るい笑顔が戻ったトラップ一家。だが、ナチス台頭に揺れる時代の波が一家にも襲いかかる──。
第1位 ダンサー・イン・ザ・ダーク(22ポイント)
まあ結局のところ、デンマークの鬼才ラース・フォン・トリアー監督はマジでミソジニーな本物の“クソ野郎”だったわけだけれども。だからといってこの映画の輝きが失われることがないのは、主演女優を務めつつ全編の音楽を担当したアイルランドの歌姫ビョークの力も大きい。オスカー歌曲賞にもノミネートしたトム・ヨークとのデュエット曲〈アイヴ・シーン・イット・オール〉もいいが、冒頭の真っ暗な画面の中で鳴り響く壮大なオーケストラ曲〈オーヴァーチャー〉からして超感動的。(東端哲也/ライター)
上映時間: 140分
製作年: 2000年
配給: 松竹・アスミック・エース
監督: ラース・フォン・トリアー
出演: ラーク、デヴィッド・モース、他
『メランコリア』のラース・フォン・トリアー監督が、カリスマ的人気を誇る歌手・ビョーク主演で描いたミュージカル。60年代のアメリカを舞台に、母と子の愛を描く。息子を失明から救うべく、工場で働きながらセルマは手術費を必死で貯めていたが…。(「キネマ旬報社」データベースより)
ランク外の傑作
お次に紹介するのは、惜しくもランクインは逃したけれど、投票に参加したONTOMOナビゲーターが1位に推した作品たち。こちらも要チェック!
『ONCE ダブリンの街角で』(ロック&ポップス部門)
音楽もさることながら、何よりも心に残るのが、ダブリンという街への愛情なのです。冒頭部分、主人公が泥棒に小銭をくれてやる場面、スーツを買う古着屋の親父が放つ「ゴージャス!」というひと言、自作の曲を臆面もなく(?)聴かせる銀行の偉い人、「オレはシン・リジィしか演らないぜ」というバンドマン、などなど。そんな細かい場面の数々から、どうしようもないほどに愛を感じ、見ていると心が健やかになる気がします。(山﨑隆一/ライター)
『スクール・オブ・ロック』(ロック&ポップス部門)
ブロードウェイ・ミュージカル化もされた最強にハッピーになれる作品。ジャック・ブラックと子どもたちの共演は見事で、子どもっぽさが抜けないドリーマー中年にはたまらん仕掛け。ロックに興味がない人でも絶対ハマるはず。(よしひろまさみち/映画ライター・編集者)
『リメンバー・ミー』(ミュージカル&歌部門)
ディスニーとか、普段は気恥ずかしくて観ないのですが、本作は仕事の関係で観ることになって、案の定号泣してしまいました(笑)。故人への想い、好きなもの(ギター)への情熱、そして嫉妬や妬みなど、人が生きるうえで直面する課題というか葛藤というか、そんなものがすべて入っていると思います。ちなみに、主題歌をギターで演奏しようとすると、簡単そうで実はかなり難しい。記者発表会で藤木直人さんが弾くのを観たけれど、さすがだなぁと思いました。(山﨑隆一/ライター)
『ヘアスプレー』(ミュージカル&歌部門)
人生最高のミュージカル映画。差別と偏見にNOをつきつけるメッセージ性と、始終アゲアゲのナンバーに心が躍る。これが公開されたとき、全米脚本家協会のストライキがあり、賞レースで目立つことができずあまり話題にならなかったものの、これを超えるミュージカルはないのでは? というほどの完成度。(よしひろまさみち/映画ライター・編集者)
『天使にラブ・ソングを…』(ミュージカル&歌部門)
何度も何度も見ている作品。教会での聖歌隊の修道女たちの敬虔な聖歌が、いつの間にかリズム感のいい歌に早変わりするところが小気味いい。みんながとても楽しそうで、教会に集う人たちも幸せに満ちている。歌うことの楽しさや素晴らしさが詰まっている。ウーピー・ゴールドバーグが最高にイケテル。厳格に生きているシスターたちがノリが良くてはじけて、こんなに楽しめる作品はなかなかない。(岩崎由美/ジャーナリスト、フリーアナウンサー)
番外編:ONTOMOナビゲーターのイチオシ!
水野蒼生・選(クラシカルDJ・指揮者)
『ベルリンフィルと子供たち』(ドキュメンタリー)
2004年、当時まだ音楽監督になったばかりのラトルとベルリン・フィルの、壮大なプロジェクトの模様を描いたドキュメンタリーフィルム。 その壮大なプロジェクトとは、総勢250名の多様な子どもたちが、ベルリン・フィルをバックにストラヴィンスキーのバレエ《春の祭典》を踊り共演するというもの。もちろん、その子どもたちにバレエの経験はない。例えば、アフリカから命からがら逃げてきた難民の子であったり、他者に触れられることが怖いと感じる子であったり、彼らは本当に多種多様な背景を背負いながら身体表現を通じて脆く淡く不安定なティーンエイジをサヴァイブする。そんな内的成長と芸術のつながりを考えさせられるこの映画は、僕にとって本当に大切な一本。音楽だって世界を救う手助けができる。そうだ、この映画はこれから音楽界を担う僕らに、紛れもない希望を見せてくれた。
東端哲也・選(ライター)
『キャンプ』
ミュージカル俳優養成のためのサマー・キャンプに集う米国のティーンエイジャーたちを描いた、トッド・グラフ監督の『キャンプ(原題:Camp)』がおすすめ。ドラマ『glee/グリー』の世界を先取りしていたかも。劇中、爽やかでハンサムな少年ヴラッドがストーンズの〈ワイルド・ホース〉をギターで弾き語るシーンが素敵。彼を演じたダニエル・リタールくんに注目していたけれど、その後消えてしまったのが残念ですわ。
小室敬幸・選(作曲・音楽学)
『SR サイタマノラッパー』
個人的にはシリーズ3作目以上に1作目の衝撃が大きくて忘れ難い。フィクションなのに、ヒップホップに求められるリアルを体現してしまっているという驚異的な名作。ある意味ではミュージカル映画でもある。
『アナと雪の女王』
オペラに匹敵するリブレットと音楽の緻密な構成は、傑作の多いミュージカル系ディズニー映画のなかでも歴代最高傑作。分析すればするほど凄みが明らかになる作品だ。
飯尾洋一・選(音楽ライター・編集者)
『ディーバ』
『めぐり逢う朝』
『白いたてがみのライオン』
オヤマダアツシ・選(音楽ライター)
『ジーザス・クライスト・スーパースター』
『ザ・ビートルズ イエロー・サブマリン』
『君も出世ができる』
『エレキの若大将』
『グレン・グールドをめぐる32章』
山﨑隆一・選(ライター)
『NINE』(ミュージカル)
『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』
『ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男』
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