島田奈央子のJazzy Note Vol.3

秋の始まりに聴く、「枯葉」と哀愁のノラ・ジョーンズ

読みもの
2018.09.07

猛暑過ぎ去り、俄かに秋めいてきた9月。いつものプレイリストも、哀愁を帯びた音楽に装いを変えたい気分になってきました。そんなときオススメしたいシンガーといえば、ノラ・ジョーンズ。魅力的なハスキーボイスをもつ彼女の音楽を、ジャズライターの島田奈央子さんがご紹介します。

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写真:CHRISTIE GOODWIN
ナビゲーター
島田奈央子 音楽ライター/プロデューサー
島田奈央子
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島田奈央子 音楽ライター/プロデューサー
音楽情報誌や日本経済新聞電子版など、ジャズを中心にコラムやインタビュー記事、レビューなどを執筆するほか、CDの解説を数多く手掛ける。自らプロデュースするジャズ・イベン...

今年の夏は格別に暑くて、無性に秋が恋しく感じました。虫の声が変わり、暑さもようやく落ち着いてくると、聴く音楽もそろそろ替えたほうがいいかな、なんて思ってしまいます。夏は自然と、元気な曲だったり、爽やかな音楽を求めてしまいますが、秋は哀愁を感じる美しいメロディの曲だったり、心暖まるような優しいヴォーカルだったり。なんとなく美しい秋の景色に誘われて、旅に合う曲なんかも聴きたくなります。

スタンダード中のスタンダード、「枯葉」。誰の演奏がお好き?

ジャズにも、秋らしい曲があります。ご存知の方も多いと思いますが、日本では「枯葉」と呼ばれる《Autumn Leaves》。最初から最後まで哀愁を感じるこのメロディは、秋にピッタリだし、ジャズの大スタンダードといっても過言ではありません。でも実はこの曲、元はフランスで生まれたシャンソンの曲。イブ・モンタンを始め、多くの歌手が歌い大ヒットした名曲です。メロディの美しさゆえ、ジャズのミュージシャンも取り上げ、アレンジを変え、歌い継がれ、知らず知らずのうちにジャズの色が濃くなった1曲でもあります。

ジャズの中でも特によく耳にするのは、サックス奏者のキャノンボール・アダレイの1958年のアルバム《サムシン・エルス》。そして、ピアニスト、ビル・エヴァンスが発表した1959年の作品《ポートレイト・イン・ジャズ》に収録されたもの。

《Somethin’ Else》キャノンボール・アダレイ

《Portrait In Jazz》ビル・エヴァンス・トリオ

どちらも名盤で、特にこの《枯葉》は、名演奏で名アレンジと言われていますが、2人のミュージシャンはまったく違う色のイメージで残しています。アダレイは、ちょっと妖しい雰囲気のイントロから始まり、メロディで哀愁を帯びたマイルス・デイヴィスのミュートトランペットが登場します。とにかく、とことん渋くて、カッコイイ雰囲気。
一方、軽快で小粋な雰囲気のエヴァンスの《枯葉》。でも軽いだけじゃない、洗練されたセンスとテクニックが組み込まれた演奏は、おもわずため息が出てしまいます。

よくジャズファンの間で、「どっちが好きか?」という論争がありますが、どちらも素晴らし過ぎて、選ぶのに困ってしまうほど。同じ曲でもプレイヤーによって、アレンジも演奏も変わる、まさにジャズの面白さがわかる作品です。

《枯葉》づくしプレイリスト。いろいろなAutumn Leavesをお楽しみ下さい(編集部編)

夏の終わりに聴きたくなるシンガー、ノラ・ジョーンズ

また、夏の終わりの季節にどうしても聴きたくなるシンガーっていますよね。「この素晴らしき世界 (What a Wonderful World)」を歌うルイ・アームストロングなんかは、私の中でまさにその頂点にいる感じです。最近のシンガーなら、ジャズとカントリーをブレンドした歌を歌う、ノラ・ジョーンズがすぐに頭に浮かびます。彼女の甘くて深いハスキーな歌声は、秋のノスタルジックな雰囲気に合います。

ノラ・ジョーンズといえば、2002年に《Don’t Know Why》が大ヒットし、数々のグラミー賞を獲得するなど、一躍有名に。その後、全作詞作曲を手掛けた作品をリリースし、シンガーソングライターとしての活躍が増えてきました。また、さまざまなジャンルのアーティストとコラボした作品も発表。女優としての活動も始めるなど、一つのジャンルには括れない個性的な活動が目立ちます。

現在もジャズという枠には収まらない活動をしていますが、それでもここ数年は、またジャズへの回帰を意識した作品を発表したり、ライブを行っている彼女。以前の青々としたフレッシュな雰囲気も魅力的でしたが、現在の落ち着いた、包み込むような歌も心に染みて、深い秋のような味わいを感じます。

 

そんな今の彼女を存分に知るならば、この春にリリースされたばかりのDVD《ライヴ・アット・ロニー・スコッツ》を観るのがお薦めです。イギリスの名門ジャズクラブ、ロニー・スコッツで行った、2017年の貴重なライブの模様を映像化したもので、とてもアットホームな雰囲気のライブが楽しめます。
ジャズ界のトップミュージシャンであるドラマーのブライアン・ブレイド、ベースのクリス・トーマスという2人を従えてのピアノ・トリオでの演奏で、これまでの彼女のヒットナンバーを含む名曲をジャズで聴かせるという、とってもとっても貴重な映像。時折、メンバーの手元や、ノラの幸せな表情が大きく映されたりと、まるで会場の1番前の席に座っているかのような錯覚を起こしてしまうほど、臨場感に溢れています。

《枯葉》とノラ・ジョーンズの歌に酔いしれながら、夏を惜しむのもいいですよね。

ノラ・ジョーンズ『ライヴ・アット・ロニー・スコッツ』
UCBQ-1003(DVD) ¥3,780(税込)
UCXQ-1003(BD) ¥4,860(税込み)

ノラ・ジョーンズ(p, vo) クリス・トーマス(b) ブライアン・ブレイド(ds)
★2017 年9 月25 日、26 日 ロンドン、ロニー・スコッツにてライヴ収録

〈収録予定曲〉

1. スリーピング・ワイルド Sleeping Wild
2.ドント・ビー・ディナイド Don’t Be Denied
3. アフター・ザ・フォール After The Fall
4. シンキン・スーン SinkinSoon
5. アウト・オン・ザ・ロード Out On The Road
6. アンド・ゼン・ゼア・ワズ・ユー And Then There Was You
7. イッツ・ア・ワンダフル・タイム・フォー・ラヴ It’s A Wonderful Time For Love
8. アフリカの花 Fleurette Africaine (African Flower)
9. フリップサイド Flipside
10. デイ・ブレイクス Day Breaks
11. ナイチンゲール Nightingale
12. トラジディ Tragedy
13. リトル・ブロークン・ハーツ Little Broken Hearts
14. キャリー・オン Carry On
15. ドント・ノー・ホワイ Dont Know Why
16. アイヴ・ガッタ・トゥ・シー・ユー・アゲイン Ive Got To See You Again

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