コントラバス奏者が自宅スタジオの湿度を毎時計測してつぶやくbotを作ってみた。
コントラバス奏者がガチで湿度計測システムをプログラミングしてみた! 「大人の本気の自由研究」に挑戦するのは、若手ベーシスト・小美濃悠太さん。音楽を作るだけでは飽き足らない? ミュージシャンDIYレポートです。
1985年生まれ。千葉大学文学部卒業、一橋大学社会学研究科修士課程修了。 大学在学中より演奏活動を開始し、臼庭潤、南博、津上研太、音川英二など日本を代表する数々のジャ...
弦楽器奏者にとって、湿度の変化は常に悩みの種である。湿度があると鳴りが悪くなるし、乾きすぎると楽器が割れてしまう。楽器のコンディションを保つために、自宅の湿度管理にはあれこれと気を遣っている方は少なくないはず。
その一人でもある私は、自宅スタジオの湿度を自動的に計測してTwitterにつぶやくシステムを作ってみた。愛器のコンディション管理に心砕く諸兄には、ぜひご一読いただきたい。
事の発端
2016年の夏、「夏休みの宿題は終わりませんでした2016」というイベントで演奏することになった。これは、3組の出演者がそれぞれ演奏とともに夏休みの自由研究を発表するというもの。
個人の研究ではなく、バンド全員で一つの研究を発表すればよかったのだけれども、暑さですっかり脳が煮えていた私は「個人でそれぞれやろうぜ! おれ本気のヤツやるから!」と、うっかり大見得を切ってしまったのだ。夏の悪魔の仕業である。
ちょうど夏場の湿度管理をどうするか考えていたこともあり、電子工作で温湿度計を作って発表することにした。といっても、プログラミングも電子機器の組み立ても未経験だった私は、寝食を忘れて(楽器の練習も忘れて)温湿度計の製作に取り組んだのであった。
Raspberry piで作る温湿度計
ただの温湿度計なら、100円ショップで事足りる。私が目標としたのは以下の3点である。
- 定期的に温度と湿度を計測する
- Twitterにそれをつぶやくbotを作る
- botに話しかけるとその時点の温湿度を計測してつぶやく
つまり、自宅スタジオの温度と湿度をつぶやくbotを作ろう、というものだ。これがあれば、家を離れていても湿度の変化がわかる。
今回はRaspberry Piというシングルボードコンピュータを使用した。これは名刺サイズの基板に、いわゆるパソコンの基本的な機能を詰め込んだもの。これに加え、電子回路の実験・試作に使われるブレッドボード、温湿度センサーBME280、そしてRasberry Piとブレッドボード、センサーをつなぐジャンパワイヤーを購入。
技術的なことはここでは省略するが、ざっくり言うとセンサーで温度と湿度を測って出力するプログラムを書き、それを1時間ごとに実行するように設定して、結果をTwitterで自動的につぶやくようにすればOK。
しかしスムーズに進むはずはなく、うっかりキリル文字の言語に設定してしまったり、
ワイヤーのオスとメスを間違えて購入してたりして、
本格的に挫けそうになりながらも、どうにかこうにか完成!
ついでに、話しかけると返事をしてくれる機能を実装。「教えて!」と話しかけると断られて、「お腹すいた」と話しかけると肉汁滴るステーキ画像を返信してくれる、やや意地悪な仕様となった。
話しかけるとその時点の温湿度を計測してつぶやく機能は、技術的な壁が高すぎて惜しくも断念。
結果
ベーシストという立場を完全に忘れ日々開発に勤しみ、どうにか温湿度自動計測システムを作った結果は以下の通り。
- 我が家の湿度をみんなが心配してくれるようになった
イベントで自由研究を発表した後、多くの方がTwitterを通じて我が家の温度と湿度を知ることとなり、「今日小美濃くんの家の湿度80%超えてたけど大丈夫?」と気を遣ってくれるようになった。若干恥ずかしい。
- 長野県松本市でコンサートを開くことになった
この手作り湿度計側システムの情報が、高精度温・湿度計を手がける株式会社T&D様に伝わり、その流れで、なんと社屋の中にあるお洒落なイタリアンレストランal cieloで私のコンサートを開催していただく運びに。世界20ヶ国で温湿度計を販売し、圧倒的なシェアを誇る企業が、ミュージシャンの思いつきを面白がってくれて、しかもコンサートまで開いてくれるとは!
翌2017年も、al cieloを中心に信州ライブツアーを企画。このコンサートを機に結成されたのがピアノトリオ“tryphonic”であり、今夏1stアルバムを発売、秋〜冬にはリリース記念ツアーを予定している。
自宅の湿度管理に興味がある方へ
もし楽器のコンディションを保つために湿度管理をしたいなら、株式会社T&D社の温湿度データロガー「おんどとり」を迷わずお勧めする。自動的に計測を行い、クラウド上にデータを残してくれるので便利だ。わざわざ湿度計を自作したことを後悔するほどに、使い勝手がいいのである。
そんなわけで、湿度をつぶやくbotである@ominobotはお役御免となった。製作過程は同アカウントでつぶやいているので、興味があればそちらを参照していただきたい。
@ominobot https://twitter.com/ominobot/media
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