ますますドロ沼に? デザイナーの自作スピーカーを「stereo」編集長と試聴!
通の世界と思われがちなオーディオ工作に、気軽に挑戦してみよう!!
「自由研究」というテーマで始まった、デザイナー・江村史子さんのスピーカー工作。製作編につづき、今回は試聴編をお届けします。
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
かわいい見た目のスピーカーたち、実力のほどは?
デザイナー江村史子さんが挑んだ、4つのスピーカー工作。コンセプトや製作過程はスピーカー製作編をお読みいただくとして、実際に音を聴いてみるべく、音楽之友社のChamber of Secretことstereo試聴室に集結しました。
見た目はとてもかわいいスピーカーたち、どんな音がするのでしょうか。
「stereo」編集長・吉野 ラフを見て、これができたらすごいよねと思っていましたが、ここまでラフ通りに精密なのができてくるとは思いませんでした。
スピーカーを作った人・江村 木材を使ってガチで作ったスピーカーは、設計した図面をIllustratorのデータにして、レーザー加工機でカットしています。あまり誤差はないんですけど、実際に組み立てると木材の反りもあったりして、寸法通りにいかないことがあり、何回か作り直しました。
編集W では、一つひとつ聴いていきましょう。試聴音源はどうしましょう?
吉野 試聴は、自分が好きな曲が好きな音で鳴るかどうかを聴くのが一番です。クラシックにもロックにも合う楽器なんて存在しないのと同じです。今回はこちらの音源で聴いてみましょう。
子どもの自由研究用、うさぎスピーカー
江村 なんかウサギ見ながら聞いてると変な気分(笑)。
編集W 実際に聴いてみて、どうですか?
江村 思ったよりちゃんと鳴ってるなとは思ったんですけど、昔のラジオを聴いているような音がするなと思いました。発散されていく感じはしない。
吉野 どうしてもモノラルっぽくはなりますよね。左右のユニットが近くて、同じボディなので。でも、モノラルにもメリットはあります。ステレオだと左右のスピーカーの真ん中で聴くのがベストで、いる場所次第で音の聴こえ方が変わりますが、BGM的に聴くときはモノラルでも良いです。場所もとりませんしね。
(※例えば飲食店の天井などについているスピーカーはモノラル。1か所から聴こえてくるので、左右のバランス差などは関係なくなる)
江村 上のフタあたりにも隙間が空いているから、音がもれちゃってるかなと。子ども向けに中が見えると仕組みが見えていいかなと思って開けました。
吉野 もしもうちょっとしっかり聴きたいのであれば、ユニットをしっかりネジで固定すると、ビビリも減り、低音もガッと聴こえます。
今は箱が紙ですが、ユニットを留めるところだけ木にするとか、ユニット部分を分厚い木や金属で固定すると、それだけで5倍くらい、いい音になります。
ダンボールでギターを作れないのと同じですね。上の透明部分をアクリルやガラスなど硬い素材にすると良いです。もしくは、ダンボールを分厚くするだけでも音は良くなります。ダンボールは固有の音のクセが少ないので悪い素材ではないです。
アートみたい? 張り子の雲型スピーカー
江村 これは張り子で雲みたいなのを作って、部屋に置けるスピーカーにしたらいいかなと思って。底を閉じてなくて抜けちゃってるから、どれくらいちゃんと音が響くのかな。ちゃんと密閉されてないっていう不安はあります。
吉野 おもしろいですね。いいアイデアです。こういう作り方もあるんだなぁと思いました。
江村 編集部から「自由研究」というテーマをもらったので、素材が柔らかめの張り子の振動を感じとるだけでも、けっこう学びになるかなと思いました。
意外にも、うさぎのときより音が響いて聴こえて、空間に広がっている感じはしたんですけど、2曲目はビビっていましたね。
吉野 形状がいいですね。適度に抜けているのでいい音がします。中途半端に抜けないと音がぐしゃぐしゃになる。吊るすともっとよく聴こえるんじゃないでしょうか。
吉野 音は直進に動くので、四角い箱だとユニットの後ろから出た音と反射した音が打ち消しあってしまいます。理想は球面です。空気の流れがぶつからないようにカーブしています。コンサートホールなどもカーブしていますよね。
2つ作ってステレオにして部屋に置いてみると、面白いかもしれませんね。紙の素材が、嫌な音がしないというか、変な癖がないですね。
江村 もっと丸い形にして吊るすといいんですね。これより大きいのも作れます。やってみます。
編集S 吊るすと、解放感のある音になっていいですね。
編集K 四角と丸でも音が変わるんですね。丸いとふわっとした広がりがあっていいと思いました。
吉野 振動を抑えすぎちゃうとつまらなくなる。鳴らない楽器みたいになる。その工夫が楽しいわけですよ。でっかいスピーカーで振動を浴びると気持ちいいじゃないですか。ヘッドフォンと違うのは、全身で浴びる感じ。音単体の気持ちよさ、音楽を聴くバランスだと思うんですよね。
江村 雲はまたリベンジしたいです! 2個作ってステレオにして。
植木鉢スピーカー
江村 2個になっただけでステレオ感が出ますね。ボディが小さいぶん、雲よりはコンパクトな感じの音ですね。
吉野 家でスピーカーを見せたくない人にはいいんじゃないですか。いかにもなスピーカーがでーんと鎮座していると、
底に穴があいていて配線を通していますが、これも密閉しないほうが逆にいい音になる。植木鉢は曲面なところがいいです。でかい鉢にすると大きな音になります。
ユニットを固定すると、もっとしっかり音が鳴りますし、内部に綿をつめて吸音してあげるのもいいです。音がビビってしまっているのは、ケーブルが下に抜けるようにしたらいいと思います。
いいですね。なんか、可能性を感じます。
江村 家具の足とかにつけるフェルトを付けて、きれいに抜けるようにしてもいいかもしれないです。
編集M 作るときは意識していませんでしたが、視聴して細かなところで差が出るとわかったので、ぎゅっと押し込んだ部分をもっとぎゅっと押し込めばよかったなと思いました(笑)。陶器なのに、イメージしていたよりもまろやかな音でした。
編集K カフェとかに良さそう。
編集M 植木鉢スピーカー、家に欲しくなりました。ダンボール部分をグレードアップするにはどんな素材が良いですか?
吉野 とりあえずMDF(註:木材チップを成形したもの)ですかね。加工もしやすいし、ある程度の硬さがありますし。
ホーン型トリプルバスレフスピーカー with リス
吉野 ONTOMO Shopで販売しているダブルバスレフ・キットが中に入っているんですよね。D.I.Y.マニアがやるような設計ですね(笑)。
江村 本体に剛性があるといいと本で読んだのですが、うさぎや雲のスピーカーは当てはまらないから、ちゃんと鳴らないかなと思って、この1個はガチで設計してみました。
吉野 このユニット自体が素晴らしいんですよ。応用が効く。
江村 元のキットの精度がよくてびっくりしました。作るにあたって実測するんですけど、ほとんど誤差がないし、板の角を45度にカットしてあって、それを合わせて組み立てるという、けっこうマニアックな加工がしてあって。
吉野 ビビリを改善するには、ユニットと後ろの板をしっかり固定して、ネジも留めないと。空気のエネルギーって凄まじいので、かなりがっちり締めないと崩壊するんですよ。大音量で聴いているとぶっ壊れたりします。
江村 そうなんですね! 今回は設計の説明や調整ができるように留めないでおいたのですが、どのスピーカーもビリビリいうのが気になりすぎます。ちゃんとした音で聴いてもらいたいので、箱を押さえておいていいですか?
吉野 素晴らしいですね。自作ホーンでうまく鳴らすのは、なかなか難しいですが、これは上手くいっていますね。カーブがいいのか、いい感じに鳴っている。しっかり作れば結構いいスピーカーになるんじゃないですかね。
江村 ホーンは本やネットでいろいろ見て、大体これくらいかなというカーブにしてみました。
吉野 カーブが失敗すると、メガホンみたいにこもった感じになってしまうんですけど、これは大丈夫ですね。元のキットと比べても、音に高級感が増しました。湿度とかで音が変わったりするので、どこかを開けてチューニングできるようにしておくのがベストです。
編集W もし改良できる点があるとしたら?
吉野 トリプルバスレフに意味はあるのか……。
吉野 下の部分はないほうがいいかもしれません。低音がボケちゃっているので。聴く音量によっても違ってきますが。
江村 その場合、部屋をなくして、筒状のバスレフポートを延長するほうがいいですか? 今はスリットのポートにしているんですけど。
吉野 う〜ん……ポートを延長すると、低音の量感がなくなりそうなので、そこは難しいところですね。ちなみに、自作スピーカーでは人気がある方式としてバックロードホーン型があるので、聴いてみましょう。
吉野 ユニットの後ろに、ラッパのように徐々に太くなる音道を作って、低音の量感を出しています。好みは分かれるところですが。
江村 次回作では、雲の改良とフロントロードホーンをもっとがっちり使って極めたいです。
デザイナー江村さんのスピーカー工作への挑戦はこれからも続く……!?
stereoでは、毎年「自作スピーカーコンテスト」を開催! 江村さんにつづき、目指せ、オーディオマスター!
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