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2020.03.19
「音大ガイド」2.音大の受験対策

(9)楽器別で見る 音大入試・受験の実技課題曲例

音大入試では、実際にどのような曲が課題曲となっているのでしょうか? ここでは、声楽も含め主要な楽器ごとに、課題曲としてよく出題される曲をピックアップしました。

*記事は内容の更新を行っている場合もありますが、基本的には上記日付時点での情報となりますのでご注意ください。

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『音楽大学・学校案内』編集グループ 音楽之友社

執筆:堀内亮(音楽大学講師)、荒木淑子(音楽ライター)、各編集グループスタッフ。音楽之友社および『音楽大学・学校案内』編集グループは、1958年に年度刊行書籍『音楽大...

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ピアノ

ピアノ専攻の入試は、J.S.バッハの作品から1曲、練習曲、古典派のソナタという組み合せで出題されることが多いです。

〈J.S.バッハの作品〉
《平均律クラヴィーア曲集 第1、2巻》(プレリュードとフーガ、またはフーガのみ)がもっとも多く、《二声のインヴェンション》や《三声のシンフォニア》もよく出題されています。

〈練習曲〉
ショパンの《練習曲》op. 10やop. 25がよく出題されますが、ツェルニー《練習曲50番・60番》、モシュコフスキー《15の練習曲》、クラーマー=ビューロー《60の練習曲》、クレメンティ《グラドゥス・アド・パルナッスム》などもよく選ばれています。

〈ソナタ〉
ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなどの作曲家のソナタがよく選ばれています。

声楽

声楽専攻の課題曲の定番はイタリア歌曲。日本歌曲やドイツ歌曲が課題曲となっていることも多いです。複数の曲目のなかから任意の曲を選ぶパターンが多く、一例は次のとおりです。

〈イタリア歌曲〉

  • ジョルダーニ:Caro mio ben(「カロ・ミオ・ベン」)
  • スカルラッティ:Già il sole dal Gange(「ガンジス川に陽は昇り」)

〈日本歌曲〉

  • 山田耕筰:かやの木山の
  • 信時潔:北秋の

〈ドイツ歌曲〉

  • シューベルト:An die Musik(「音楽に寄す」)
  • シューマン:Die Lotosblume(「はすの花」)

フルート

よく出題されるのが、アンデルセン《24の練習曲》です。次に多いのがケーラー《35の練習曲》op.33 第2巻です。ほかにも、イベール《無伴奏フルートのための小品》や、モーツァルトの《協奏曲 第1番 ト長調》K313、《協奏曲 第2番 ニ長調》K314などもよく課題曲となっています。

オーボエ

多くの音大でフェルリング《オーボエのための48の練習曲》が出題されています。次に多いのがヴィーデマン《45の練習曲》。ハイドン《オーボエ協奏曲 ハ長調》、クロンマー《オーボエ協奏曲 ヘ長調》、ルブラン《オーボエ協奏曲 第1番 ニ短調》などもよく出題されます。

クラリネット

クラリネット専攻の課題曲にはウェーバーの作品が多くの音大で選ばれ、《クラリネット小協奏曲 変ホ長調》op.26、《協奏曲第1番 へ短調》op. 73、《協奏曲第2番 変ホ長調》op.74などが出題されています。また、ローズ《32の練習曲》が課題となることも多いです。

ファゴット

多くの音大で、ヴァイセンボーン《バスーン練習曲》op. 8 第2巻が課題曲となっています。ほかに、テレマン《ソナタ へ短調》第1、3楽章や、シュターミッツ《協奏曲 ヘ長調》第1楽章などがよく出題されています。

サクソフォーン

もっともよく出題されているのが、フェルリング/ミュール《サクソフォーンのための48の練習曲》。次によく選ばれているのが、モーリス《プロヴァンスの風景》、グラズノフ《サクソフォーン協奏曲》op.109、クレストン《サクソフォーン・ソナタ》op.19 第1楽章などです。

ホルン

ホルンの課題曲の定番は、モーツァルトのホルン協奏曲。そのなかでもとくに《ホルン協奏曲 第3番 変ホ長調》K447 第1楽章が課題となることが多いです。コプラッシュ《60の練習曲》もよく出題されています。

トランペット

アーバン《12の幻想曲とアリア》が多くの音大で出題されています。ヘンデル《アリアとヴァリエーション》、コレッリ《ソナタ第8番 ニ短調》が課題となっていることも多いです。

トロンボーン

もっとも多く出題されるのが、コプラッシュ《60の練習曲》。ロッシュ《旋律的練習曲》や、ギルマン《交響的断章》op. 88が課題曲となることも多いです。

ユーフォニアム

もっとも多く出題されるのが、ロッシュ《旋律的練習曲》。コプラッシュ《60の練習曲》(トロンボーン)、アーバン《14の特別な練習曲》もよく出題されます。

テューバ

コプラッシュ《60の練習曲》が多くの音大で課題曲となっています。次に、ボルドーニ《43のベルカント練習曲》が選ばれることが多く、ブラゼビッチ《テューバのための70の練習曲集》や、J.S.バッハ(W.ベル編曲)《アリアとブーレ》が課題の音大も多いです。

ヴァイオリン

協奏曲が課題の場合、モーツァルトの《協奏曲第3番・第4番》、ブルッフ《協奏曲第1番》、メンデルスゾーン《協奏曲 ホ短調》op.64がよく選ばれています。練習曲などの場合は、パガニーニ《24のカプリス》op.1、クロイツァー《42の練習曲》、ローデ《24のカプリス》、ドント《24のエチュードとカプリス》がよく出題されています。ほかに、ラロ《スペイン交響曲》、J.S.バッハの《無伴奏ソナタ》、《無伴奏パルティータ》などもよく課題となっています。

ヴィオラ

カンパニョーリ《41のカプリス》、シュターミッツ《協奏曲 ニ長調》op.1、ホフマイスター《協奏曲 ニ長調》が多くの音大で出題されています。J.C.バッハ《協奏曲 ハ短調》もよく選ばれています。

チェロ

J.S.バッハ《無伴奏チェロ組曲》や、ハイドン《チェロ協奏曲 第1番 ハ長調》第1楽章が多くの音大で出題されています。また、デュポールの練習曲や、ローブ《音階とアルペジオ》などもよく選ばれています。

コントラバス

コントラバスの課題は自由曲となっていることが多いですが、課題曲が決められている場合はシマンドル《30の練習曲》、カプッツィ《協奏曲 ニ長調》がよく選ばれています。

打楽器

基礎として、小太鼓は基礎打ち(一つ打ち、二つ打ち、五つ打ち、ロールなど)、ティンパニはチューニングや基本奏法(ロール)、マリンバは音階が課題となることが多いです。楽器別に頻出の課題曲は次のとおりです。

小太鼓

  • シローン:ポートレイト・イン・リズム
  • ウィルコクソン:オール・アメリカン・ドラマー 150のルーディメンツ・ソロ

ティンパニ

  • ホッホライナー:ティンパニ・エチュード 第1巻

マリンバ

  • ゴールデンバーグ:シロフォン・マリンバ・ヴィブラフォーンのための現代教本
  • 三善晃:組曲「会話」
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執筆:堀内亮(音楽大学講師)、荒木淑子(音楽ライター)、各編集グループスタッフ。音楽之友社および『音楽大学・学校案内』編集グループは、1958年に年度刊行書籍『音楽大...

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