音大や音楽を学べる大学の種類(国立、公立、私立)
私たちが一般に「音大」と呼ぶ場合、私立の単科の音楽大学や国公立の音楽学部を指す場合が多いですが、広くは私立の総合大学の音楽学部、国立大学教育学部の音楽専攻などまでを指すことがあります。ここでは、それぞれの「音大」について、説明していきましょう。
*記事は内容の更新を行っている場合もありますが、基本的には上記日付時点での情報となりますのでご注意ください。
執筆:堀内亮(音楽大学講師)、荒木淑子(音楽ライター)、各編集グループスタッフ。音楽之友社および『音楽大学・学校案内』編集グループは、1958年に年度刊行書籍『音楽大...
「音大」=「音楽が学べる専攻・コースのある大学」は、全国に80校以上ある!
『音楽大学・高校 学校案内』(音楽之友社)では、「音楽を学べる大学」として、全国の国公立と私立を合せて約80校、「短期大学」は約15校が紹介されています。
私立の音楽大学の多くは多様な音楽の専攻・コースを持つ
多くの私立の音楽大学(音楽単科の大学)では、多種多様な音楽の内容を学べます。内容は、器楽、声楽、指揮、作曲、ミュージカル、バレエなどを学ぶ「実技系」、音楽そのものを学問として研究する「音楽学系」、教員養成、合唱・吹奏楽などの指導者養成、音楽療法などの「教育系」、アートマネジメント・舞台音響などを学ぶ「ビジネス系」の4つなどに大別できます。くわしくは、「音大の学科、「音大の学科、専攻、コースの種類(ピアノ、声楽、管楽器ほか)」をご参照ください。
<おもな大学>
徹底した少人数制による細やかな教育を実践。大学3年次生の「ウィーン研修」、演奏専攻においては4年間を通して毎年、年2回ウィーンに赴きレッスンなどを受けている。社会人基礎力を身につけることが目的の、独自のキャリア教育「東邦スタンダード」により、音楽家・演奏家はもちろん、その他の分野でも活躍できる人材育成を目指している。
「演奏学科」と「音楽総合学科」による教育体制で、専攻実技や専門分野の科目を充実させることはもちろん、音楽理論や音楽史などの基礎科目の充実、徹底をはかり、学生のさまざまな進路に応じて、専門科目や自由科目を横断的に履修する選択肢を広げている。毎年多くの著名な外国人音楽家を客員教授として招聘。オーケストラ、ウィンドアンサンブルなどの演奏旅行を毎年全国各地で開催。
1・2年次の基礎課程で音楽の基礎能力・知識を鍛え、3・4年次の専門課程で専門性をより高める教育を行なう。専門課程の「コース制」により学科・専修(専攻)によらず、31種類のコースから専門分野をさらに探究する。専攻外のコースを選択してダブルメジャーを目指すなど、自分の志向に合せて将来の職業選択の幅を広げられるシステムとなっている。
「子供のための音楽教室」を土台とした大学までの一貫教育が大きな特色。充実した専攻実技指導とともに、基礎としてのソルフェージュ教育や、オーケストラや室内楽、オペラ、合唱などのカリキュラムを設け、総合的な音楽能力の育成に努めている。演奏教育では公開演奏を重視し、オーケストラや各種アンサンブルは練習の成果を演奏会で披露して単位を付与する形をとっている。
クラシック音楽を中核に、幅広い教養科目を選択し、複数の外国語を習得できるカリキュラムが組まれる。平成29年に音楽・教養・英語を融合した「ミュージック・リベラルアーツ専攻」、令和2年に吹奏楽のすべてを体系的に学べる「吹奏楽アカデミー専攻」、同3年に新生作曲「ミュージック・メディアコース」をスタート。同6年度より、新専攻「ミュージックビジネス・テクノロジー専攻」を新設。
(以上、東京)
優秀な教授陣による少人数制の教育が特色。年間を通じて学内、学外での演奏会を数多く公演。平成29年度から音楽芸術表現学科を設置。新たに「作曲・音楽デザイン」「ピアノミュージッククリエイター」「ウインドシンフォニー」、令和3年度に「ピアノ音楽」、同6年度より「声とことばの創造表現」の各コースを新設。音楽芸術運営学科では、アートマネジメント、舞台スタッフ、音楽療法、ミュージカル、バレエ、音楽教養の各コースを設置。
日本の音大ではじめてジャズコースを設置以降、音楽・音響デザイン、現代邦楽、ミュージカル、ロック&ポップスの各コースを新設。現在は声優アニメソング、音楽環境創造の各コースなど新たな音楽領域を含めた幅広い教育フィールドを整えている。大学教員と共に学修計画を立てるアカデミック・アドバイジング制度により、卒業後の進路も見据えた指導を行なっている。
(以上、神奈川)
平成27年度より開設されたピアノ演奏家コースは、一流指導者による月330分のダブルレッスン制に加え、コース独自の授業科目や豊富な演奏会経験により、研鑽を深めることができる。講義や演習はコースの枠を超えて自由に履修することができ、吹奏楽指導者育成のためのプログラムや、小・中・高すべての教員免許の取得を目指すことができるカリキュラム構成により、多様なニーズに応える。
2024年度から「地域創生ミュージックマネジメント専攻」がスタート。2023年度には「シンガーソングライティング・コース」を新設。音楽・エンターテインメント業界のプロフェッショナルを育成する「ミュージックビジネス専攻」や、商業音楽を作曲する「ミュージッククリエーション専攻」も設置し、演奏者の育成とあわせて、“音楽で働く”ことを意識した教育も行なっている。
私立の総合大学の音楽学部・音楽学科は、学部間・学科間交流がさかん
私立大学には、一般の学部・学科と並行して音楽学部・音楽学科を設置している学校があります。総合大学のなかの学部の一つとして、音楽学部があるのです。このタイプの音楽学部は、一般的に音楽以外の他学部とのさまざまな交流がさかんで、音楽以外にも多彩な分野について学べるケースが多くなっています。
<おもな大学>
演奏や創作を専門的に学んで希望のキャリアを実現する「音楽表現メジャー」、教員や指導者を目指す「音楽教育メジャー」、音楽療法士を目指す「音楽療法メジャー」、プロの演奏家やクリエーターを目指す「プロ・アーティストメジャー」の1学科4メジャー制。3年次には海外研修旅行としてウィーン等を訪れて研鑽を積む。キャリアデザイン科目やキャリア支援体制により、就職率100%を達成している。
写真、映画、美術、音楽、文芸、演劇、放送、デザインの8学科を擁する芸術学部は、2021年に創設100周年を迎えた。総合大学のなかの音楽学科として、豊かな教養を培いながら、幅広い人間形成を考えた教育計画を立て、創造的音楽文化の担い手となる音楽芸術家の養成を使命としている。
音楽に関わる専門分野の技術、知識を身につけることはもちろん、総合大学においてさまざまな分野に役立つスキルを習得し、創造的な発想を生み出すことのできる表現者および音楽表現を現代社会とともに創ることのできる能力を備えた教育者を養成する。演奏・創作、ミュージカル、音楽教育の各コースがある。
音楽芸術学科は、アート・マネジメント、デジタルコンテンツ制作、地域社会と音楽、音楽ビジネス、心/脳と音楽、音楽療法、演奏表現、舞台制作と実演、音楽指導法など、多様なニーズに即した科目を開講。音楽に関連するビジネス領域を実践的に学ぶワークショップやゼミを充実させ、英語による授業も。また、各種実技レッスンやアンサンブル、ミュージック・テクノロジー・ラボなどの科目も多彩に展開。
演奏専攻は個人レッスンのほか、オペラ・合唱・室内楽・管弦楽・吹奏楽などを経験し、演奏の学修成果は、学生自身が企画・運営するオペラ・クラス公演や定期演奏会などで発表。音楽文化専攻は、幅広く学びながら専門性を深めることができる自由度の高いカリキュラム。3つの科目群(音楽学、音楽療法、音楽創作)を設置し、声楽やピアノの実技科目を4年間履修することが可能。
年間を通して学内外でさまざまな演奏会が開催され、在学中に多くの演奏機会を得られる。全学的な年130回の就職や進路選択に関する講座やセミナーを開催し、近年3年間の音楽学部卒業生の就職率は100%を維持する。2024年4月、従来の器楽/声楽/ミュージック・クリエィション分野をますます充実させた「音楽表現専攻」に再編。それに加えて「音楽キャリアデザイン専攻」も新設し、二専攻体制に。
平成12年4月「モスクワ音楽院特別演奏コース」を同院の全面協力のもとに開設し、伝統の指導法(メソッド)をロシアと同じ条件で学ぶことができるようになった。また同23年4月より同コースを修了した者は、モスクワ音楽院に編入することが可能となった。同25年度から、モスクワ音楽院特別演奏コース、演奏芸術コース、教育文化コースの3コースを設置。
毎年冬に外国人講師による講習会・演奏会を開催し、短期留学生と長期交換留学生をウィーン国立音楽大学へ派遣。米国における音楽療法の研究で著名なマイケル・J・ローバッカー博士を招聘し、音楽療法教育のための研究・実践を継続して実施している。毎年、各地で演奏会を開催しており、ウィーン国立音楽大学出身のジュゼッペ・マリオッティ学部長を中心に真摯に学生を指導している。
これまでの50年を超える音楽教育の伝統をベースに多彩な教授陣を揃え、世界に通用する国際レベルで活躍できる演奏技術を持った人材育成と、地域の音楽文化の創造発展に寄与する人材の育成を目指す。
私立大学の教育学部系でも音楽を学べる学校がある
教育学部で音楽を学べるコースは、後述する全国の国立大学が主流ですが、私立にも教育学部系を有する学校があります。
<おもな大学>
私立大学で最初に誕生した教員養成のための学部で、専修ごとにクラスが編成されている。音楽専門科目は、ソルフェージュ、声楽、合唱、ピアノ、アンサンブル・スタディ、伴奏法、指揮法、音楽理論、作曲、音楽史総合、西洋音楽史、和楽器演習など。
音楽に関する多彩な引き出しを手に入れ、地域社会の生活文化に貢献できる人を目指す。確かな知識・技術のもと、音楽を通じて豊かな感性を育むことのできる音楽教諭や指導者、オーケストラ奏者、音楽関連企業で活躍できる力を養う。実技の授業では、ピアノや声楽、管打楽器のレッスンを通して演奏技術を高める。
幼稚園、小学校、中学校、高等学校の教育現場において、即戦力となるうる音楽特性に優れた教員を数多く送り出してきた。受験する者はある程度音楽の素養を必要とされるものの、入学後の学習の取り組みによってその才能を開花させることに重点を置いている。そのためには、それぞれの専門の指導者が責任をもって指導すると同時に、音楽の基礎となる人間性の陶冶も心がけている。
国公立大学の音楽学部は、私立の音大に近い
国公立大学には、下記4つの音楽学部があります。これらの学校は、私立の音楽大学とほぼ同様の専攻・コースを持っています。国公立であり、ブランドもあり、学費が安いため、入試の倍率も私立より高くなっています。
<国公立大学の音楽学部>
東京藝術大学音楽学部(国立)
音楽の専門的研究・教育のための唯一の国立の高等教育機関として、日本でもっとも古い歴史と伝統を誇る。なかでも邦楽科は日本伝統音楽を教授する国内唯一の高等教育機関。平成14年に新設された音楽環境創造科は、音楽や音響の理論を基礎に、従来の枠を超えた発想による音づくり、身体空間や舞台・映像と音のコラボレーションの探求、文化環境を刷新するようなアートマネージメントの実践などを目指す。
愛知県立芸術大学音楽学部(公立)
確かな演奏技術や音楽作品を制作するための表現技法、音楽の学問的研究など、学生が豊かな感性を養うと同時に、表現技術を習得できるよう、学部1年次から個人レッスンを中心とした基礎教育を行なう。3、4年次は将来の幅広い活動を支えるだけの応用力を養うべく、実践的なカリキュラムが組まれる。世界的な芸術家や研究者を招く特別講座やアーティスト・イン・レジデンスなどを通じ多様な経験を重ねる。
京都市立芸術大学音楽学部(公立)
小規模校の利点を最大限に生かしたきめ細かいマンツーマンの個人レッスンを行なっている。毎年海外の演奏家や指導者による特別講座を開催するほか、ドイツ・ブレーメン芸術大学、フライブルク音楽大学、ウィーン国立音楽大学と交換留学、チェコ・プラハ芸術アカデミーと留学生派遣や派遣演奏を行ない、ロンドン王立音楽大学と交流協定を結んでいる。
沖縄県立芸術大学音楽学部(公立)
音楽学部の特色の1つに、沖縄の伝統音楽・芸能を教育研究の対象とした琉球芸能専攻を持っていることが挙げられる。専門実技の授業はコース別に行なわれるが、関連科目として、ピアノやソルフェージュの授業、琉球音楽論、琉球芸能史、音楽理論史、楽劇理論、楽劇演出論、日本音楽史などを履修する。このほかに、音楽表現、音楽文化の2専攻がある。
また、大分県立芸術文化短期大学音楽科は、音楽科を有する唯一の公立の短大です。
多くの国立大学には音楽教員を目指す教員養成課程がある
小学校、中学校、高校(幼稚園)などの学校の音楽教員になりたい場合、各都道府県にほぼ1校設置されている国立大学の教員養成課程があります。
<国立の教育大学>
音楽教育学を基盤にしながら、授業を実践していく上で必要とされる「子どもを理解する力」「学校を理解する力」「音楽文化を理解する力」「音楽を実践する力」を身に付け、子どもの学びや成長を目指す授業の作り方・実践の方法を学ぶ。
音楽専修では、ピアノ、管打楽器といった器楽、声楽、作曲のほか、音楽史や音楽理論など音楽そのものについて学ぶことと、学んだことをどのようにして児童・生徒に伝えるかという音楽教育について学べることが特長。また年間を通して大学祭での自主企画コンサート、学内演奏会、卒業・修了演奏会などが行なわれている。
初等教育教員養成課程では、幼児教育、小学校教育、人文・社会教育、理数教育、芸術・実技教育の各プログラムで募集する。目指す教員像に応じて学生自身が4年間の学びをデザインでき、必要な単位を修得することにより、複数の教員免許状が取得可能となる。中等教育教員養成課程では、中学校および高等学校教諭免許状を取得する課程として、各専攻別に募集する。
ほか
<国立大学の教育学部>
小中専門教科コースは音楽科教育分野など4分野別に募集される。附属小中学校をはじめとする協力校との教育実習生の指導、教育研究開発、地域貢献など連携協力が特に充実しており、さらに教育ボランティア体験など実習科目の拡充を図っている。音楽科の教育専門科目には、ソルフェージュ、声楽(独唱)、器楽(ピアノ)、指導法、音楽史、作曲、合唱、合奏がある。
教育学部は、学生の多様な学習ニーズや卒業後の幅広い進路に柔軟に対応するために、「類・コース制」をとる。入学後は自分の目的意識に沿った専門的教育を受け、他コースや他学部の授業も履修できる。第四類音楽文化系コースは、個人レッスン、講義の他に、合唱やオペラ実習、吹奏楽、オーケストラなどのアンサンブル科目が充実している。
学校教育教員養成課程には、初等教育コースと中等教育コース、特別支援教育コースがあり、初等教育コースと中等教育コースのそれぞれに音楽教育講座がある。入学後は初等教育コース(小学校教諭一種免許取得に対応)、中等教育コース(中学校・高等学校教諭一種免許取得に対応)それぞれの履修コースに進む。音楽科の研究・教育分野には、声楽、器楽、音楽学、作曲、音楽教育学がある。
ほか
「実技系」の内容を学べる国立大学もある
専攻・科・コースによって「実技系」の内容を学べる国立大学もあります。
<おもな大学>
北海道教育大学教育学部岩見沢校 芸術・スポーツ文化学科音楽文化専攻
〈声楽コース〉では声楽曲を学び、「オペラ舞台文化論」「舞台表現演習」「重唱」等の科目がある。〈鍵盤楽器コース〉では毎週ソロのレッスンを受け、アンサンブルや指導法の科目もある。〈作曲コース〉では「作曲理論」「作曲実技」「コンピューターと音楽」等の科目がある。〈管弦打楽器コース〉では個人レッスンとオーケストラや吹奏楽。ほかに〈音楽教育・音楽文化コース〉がある。
お茶の水女子大学文教育学部 芸術・表現行動学科音楽表現コース(ピアノ、声楽、音楽学のみ)
音楽表現コースは教員養成課程ではなく、音楽の学問的研究と演奏の実践的習得を重視する。音楽学では、専門の授業はすべてゼミナール形式なので、きめ細かな指導を受けて研究を進めることができる。演奏学はピアノと声楽にわかれ、実技を主体とした研究で卒業演奏が必修。海外への留学や大学院への進学希望も多く、専門的研究への関心が高いのが特色。また、一般企業への就職もある。
第四類音楽文化系コースは、個人レッスン、講義の他に、合唱やオペラ実習、吹奏楽、オーケストラなどのアンサンブル科目が充実している。なかでも、専門の楽器に関わらず、1年次は弦楽器を必修としており、その後のオーケストラの経験は各専門楽器の学習を深めるのに役立っている。
ほか
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