読みもの
2023.03.27
こんな便利なオペラのポータルサイトがほしかった

世界の歌劇場の公演動画が無料で見放題! OPERAVISIONでおうちオペラを満喫

広瀬大介
広瀬大介 音楽学者・音楽評論家

青山学院大学教授。日本リヒャルト・シュトラウス協会常務理事・事務局長。iPhone、iPad、MacBookについては、新機種が出るたびに買い換えないと手の震えが止ま...

プッチーニ《トゥーランドット》(フィンランド国立歌劇場)の舞台 ©Ilkka Saastamoinen - Finnish National Opera

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世界の歌劇場の公演動画が見られるポータルサイト“OPERAVISION”

コロナ禍の期間、どこにも出かけられないとき、世界各地のオペラハウスは、自分たちがこれまでに撮ってきた公演の数々を、動画として積極的に提供してくれました。これらを自宅で鑑賞することで、生のオペラを聴くことができないという焦燥感を、どれだけ癒すことができたかしれません。

でも、ときどきは罰当たりなことを考えたものです。さまざまな歌劇場のホームページに片っ端からアクセスしているけれど、これらの動画が一箇所に集まっていると、本当は便利なのにな……、と。そんなポータルサイトがあればいいな、と。

実はそんなサイトは、コロナ禍の前からすでに存在していました。OPERAVISION、といいます。5年前から始まったサービスですが、いまやそのコンテンツは大きく膨らみ続け、オペラを愛するひとならば、もはや決して避けて通れない規模へと成長を遂げました。

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YouTubeチャンネルも便利。一部日本語字幕も

その特徴はいくつもありますが、まずは、提供されている動画をすべて無料で観られることは特筆せねばなりません。歌劇場によっては有料のサブスクリプションサービスを自前で用意しているところもありますが、ここに登録されている歌劇場での公演動画は、指揮者や歌手、演出家などのインタビュー、作品解説など充実した数々の動画も含め、すべて見放題。週1回、新しいコンテンツが追加されるので、これから観始めてもすべてを追いかけることができるかどうか……、といった規模に膨れあがっています。

過去にアップされた動画の中では、プッチーニ《トゥーランドット(フィンランド国立歌劇場)、ヴェルディ《ファルスタッフ(フィレンツェ五月祭)が、日本人にもっとも視聴された動画だったとのこと。後者は日本語字幕がついていたことも理由のひとつに挙げられそうです。

ヴェルディ《ファルスタッフ》(フィレンツェ五月祭)は日本語字幕が付いていることもあり、日本人にもっとも視聴されている © Michele Monasta-Maggio Musicale Fiorentino

OPERAVISIONにはもちろん自前のホームページがありますが、YouTubeにもチャンネルがありますので、そちらも登録しておいて、環境に合わせて使い分けるとよいでしょう。YouTubeを使う利点は、英語字幕しかついていないコンテンツであっても、YouTube自体のオート飜訳オプションを利用すれば、日本語で鑑賞することも可能です。

新国立劇場の昨年の話題作《ボリス・ゴドゥノフ》が早くも追加

日本発の舞台を提供すべく、新国立劇場がこのプロジェクトに参加しています。すでにグルック《オルフェオとエウリディーチェが公開済。これははじめから日本語字幕がついています。また、昨年上演された中でももっとも話題を呼んだ、ムソルグスキー《ボリス・ゴドゥノフも、つい最近追加されました。

新国立劇場《ボリス・ゴドゥノフ》の舞台。演出は、映画監督出身で、現代的な解釈と美的感覚で音楽の本質的な美しさを引き出し、欧米で目覚ましい活躍をしているマリウシュ・トレリンスキ、指揮は新国立劇場の芸術監督、大野和士。《ボリス・ゴドゥノフ》はムソルグスキーが完成させた唯一のオペラで、ロシア民謡やロシア正教の教会音楽に基づいた斬新な和声が用いられ、ロシア国民音楽の金字塔といわれる傑作 ©Rikimaru Hotta

2023年4月には、ヴェルディ《アイーダ》(ローマ歌劇場)、ベッリーニ《夢遊病の女》(ライン・ドイツ・オペラ)、モンテヴェルディ《オルフェオ》(ハノーファー歌劇場)が公開予定とのこと。皆さんも、ご自身がお好きなオペラ、歌劇場が登録されているかどうか、いちど検索されてみてはいかがでしょう。

テレビの大画面でおうちシアターも楽しめる

2023年3月現在で観られる演目の中で、リヒャルトものが大好きな筆者は、ワーグナー《パルジファル(ベルゲン・フィル)、シュトラウス《ばらの騎士(モネ劇場)などを、思う存分堪能しました。

テレビでYouTubeを観られるように設定すれば、大画面で迫力のオペラを、自宅に居ながらにして愉しめます。ハイレゾやサラウンドなど、最新の音響にこそ対応はしていませんが、アンプとスピーカーをしっかり揃えれば、かなりの没入感を誘う音質になっています。各歌劇場の響きの違いなども、体感できるかもしれません。

ノートパソコンで鑑賞する、というひとも、直接つなげるタイプのアクティヴスピーカーか、ヘッドフォン、イヤフォンを用いれば、かなりよい感じの音響で愉しめるはずですよ。そうそう、その際は、部屋の照明を暗くすることも忘れずに。

広瀬大介
広瀬大介 音楽学者・音楽評論家

青山学院大学教授。日本リヒャルト・シュトラウス協会常務理事・事務局長。iPhone、iPad、MacBookについては、新機種が出るたびに買い換えないと手の震えが止ま...

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