ルプーが生み出すストイックな空気
音楽家を撮りつづけるカメラマンたち。写真の背後にはどんな物語があるのだろうか。撮影者自ら音楽シーンを語ります。
1971年、東京生まれ。東京でのスタジオ勤務などを経て90年代後半、人物ポートレート、ニュース写真の撮影からカメラマンの道へ。ほどなくして、父(故堀田正實)、叔父(故...
ラドゥ・ルプー(ピアニスト)
ルーマニア出身のピアニスト、ラドゥ・ルプー、2012年11月1日、武蔵野文化会館 小ホールでのコンサートです。
ステージ上に演奏者と撮影者を隔てる壁がありませんでした。普段、多くのコンサートでは壁の小さい窓から撮影することが多いのです。それがないため、演奏しているルプー氏からこちらが見えていたはずです。
カメラマンとしてはとても撮りづらいと感じながらも、その状況のなかで撮ることこそがルプー氏の個性を撮影することになったのだと思います。照明にも強いこだわりがあると思しく、余計な光はなくピアノのあたりにだけピンスポットが当たっていました。写真の表情からも、ひたすら演奏に集中する氏のストイックさが伝わってくるような気がします。
最近はシャッター音のしないカメラを使っていますが、当時は音を消す(小さくする)ために消音ケースを使っていました。この写真を見ると、演奏者、観客、他の撮影者、隣にいたテレビカメラ……にと、今よりもずっと気をつかっていたことを思い出します。
撮影者としての必要な気遣いを私に思い起こさせ、原点に引きもどしてくれる写真です。
ルーマニア生まれ。6歳でリア・ブスイオチアヌのもとでピアノを始め、12歳の時、自作のみを集めたプログラムで初公演を行った。数年間、フロリカ・ムシチェスクとチェラ・デラブランチアのもとで学んだのち、1961年に奨学金を得てモスクワ音楽院に入学し、ガリーナ・エギャザロヴァ、ハインリヒ・ネイガウス、その息子スタニスラフ・ネイガウスに師事した。
7年にわたるモスクワ音楽院での研鑽中、1967年にジョルジェ・エネスク国際コンクールで優勝。前述のとおり、その前後にはヴァン・クライバーン国際コンクールとリーズ国際コンクールの覇者ともなった。1989年と2006年に、イタリア批評家協会から名誉あるアッビアーティ賞を贈られた。2006年には、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ賞を授与されている。
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