読みもの
2023.01.18
特集「ラフマニノフ」

ラフマニノフ《パガニーニの主題による狂詩曲》作曲者による“できすぎた”筋書きの謎

ラフマニノフを代表作のひとつ、独奏ピアノとオーケストラによるラフマニノフ《パガニーニの主題による狂詩曲》。この作品には、振付師・フォーキンがバレエ化を打診したときに作曲者本人が考案した筋書きがあります。各変奏にあまりにぴったりと合う筋書きの内容とは……?

増田良介
増田良介 音楽評論家

ショスタコーヴィチをはじめとするロシア・ソ連音楽、マーラーなどの後期ロマン派音楽を中心に、『レコード芸術』『CDジャーナル』『音楽現代』誌、京都市交響楽団などの演奏会...

ドラクロワが描いたパガニーニ(1831年)

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ラフマニノフがピアノとオーケストラのために書いた《パガニーニの主題による狂詩曲》(1934年)は、彼の代表作のひとつだ。イタリアの伝説的なヴァイオリニスト・作曲家、ニコロ・パガニーニ(1782〜1840)の作曲した《カプリース第24番》の主題が24回にわたって変奏される作品だ。

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パガニーニ:《カプリース第24番》

ところで、この曲のためにラフマニノフ自身の考えた筋書きというのがある。正確に言うと、この曲をバレエとして上演するために、ラフマニノフが有名な振付師ミハイル・フォーキン(1880〜1942)にあてた手紙(1937年)の中で提案した筋書きなのだが、これがちょっとおもしろいので紹介しよう。

ラフマニノフ考案のバレエの筋書きは各変奏にぴったり

物語の主人公はパガニーニ自身で、ほかに「パガニーニが、芸術における完璧さとある女性への愛のために魂を売った」悪魔が登場する。《カプリース》の主題はパガニーニ自身、そしてもうひとつの重要な主題、グレゴリオ聖歌の「怒りの日」に基づく「ドシドラシソララ」という主題は悪魔を表す。

グレゴリオ聖歌「怒りの日」

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