読みもの
2024.02.10
ドラマチックにする音楽 vol.20

オーケストラと親子関係を温かく描く『さよならマエストロ』とリンクするクラシック音楽

地方のアマチュアオーケストラの再生と親子関係の修復を描く、日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』。主人公を指揮者に据え、オーケストラでさまざまなクラシックが演奏されています。その作品たちは、物語の展開と重なる点も? 登場作品を紹介しながら、紐解いていきます。

桒田萌
桒田萌 音楽ライター

1997年大阪生まれの編集者/ライター。夕陽丘高校音楽科ピアノ専攻、京都市立芸術大学音楽学専攻を卒業。在学中にクラシック音楽ジャンルで取材・執筆を開始。現在は企業オウ...

©️TBS

この記事をシェアする
Twiter
Facebook

オーケストラと家族、2つの再生の物語

主人公は、5年前に何らかの“事件”で活動をやめてしまったものの、かつては海外を拠点に若くして活躍していた指揮者の夏目俊平(西島秀俊)。離婚寸前の妻に呼び戻されて日本に戻ったところ、巻き込まれる形で晴見フィルハーモニーに関わることに。

「晴見フィル」はバブル期に優秀な音楽家で結成されたものの、現在は自治体から補助金を打ち切られ解散間近のアマチュア・オーケストラだ。終わりを見据えながら音楽の高みを目指すオーケストラと、過去の事件に関連してヴァイオリンをやめてしまったとみられる娘の響(芦田愛菜)と、いかに関係性を紡ぎ、それぞれの人生を動かしていくのか……そんなヒューマン・ドラマが繰り広げられている。

俊平(西島秀俊)と響(芦田愛菜)
続きを読む

俊平と響の親子関係の修復がドラマの屋台骨になっている一方で、オーケストラならではの「あるある」や人間関係などが丁寧に描かれているのが、本作の特徴。作曲者の意図や楽譜の裏を読み解く楽しさに奏者がワクワクしたり、オーケストラに欠かせないライブラリアンがフューチャーされたり、時には音楽に向き合う姿勢の違いでトラブルが起きたり……。同じ音楽を愛する人間であっても、それぞれに人生があり、悩みや葛藤を抱えている。それでも「音楽」があるからこそ、分かり合えるかもしれない——そんな可能性を信じたくなるドラマだ。

晴見フィルの楽団員である森大輝(宮沢氷魚)と羽野蓮(佐野緋美)

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ