
読みもの
2019.09.20
9月特集「秘密」
引用魔・ショスタコーヴィチの秘密——15の交響曲がすべてが引用された最後の作品ヴィオラ・ソナタ

自作の曲にたくさんの引用を残し、その意味や答えは出さずに世を去った「秘密」多き作曲家ショスタコーヴィチ。
今回、増田良介さんが紹介してくれるのは、ショスタコーヴィチ最後の作品、ヴィオラとピアノのためのソナタ。そこに隠された30年以上誰も気づかずにいた、大きな秘密です。
これらの引用から、皆さんはどんなメッセージを受け取りますか?

増田良介 音楽評論家
ショスタコーヴィチをはじめとするロシア・ソ連音楽、マーラーなどの後期ロマン派音楽を中心に、『レコード芸術』『CDジャーナル』『音楽現代』誌、京都市交響楽団などの演奏会...
今回のテーマは「秘密」だ。ということで、ショスタコーヴィチのある作品に込められた、驚くべき、しかしあまり知られていない秘密をひとつ紹介する。
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ショスタコーヴィチは、作品の中に、他人や自分の作品の一部を引用するということをよくやっていた。それは、単なるジョークのこともあれば、誰か(まあ、たいていは意中の女性)へのメッセージだったりもしたが、どういう意図だったのか今もわからないままのものも多い。

20世紀ソヴィエト連邦時代の作曲家ドミートリイ・ショスタコーヴィチ(1906–1975)。
©Holger Eklund / Lehtikuva(Taken on 9 October 1958)
©Holger Eklund / Lehtikuva(Taken on 9 October 1958)
ただ、引用はどの曲でも均等にあるわけではなく、とくにいろいろな曲が引用されている曲というのがいくつか存在する。弦楽四重奏曲第8番や交響曲第15番、そしてヴィオラ・ソナタなどがそうなのだが、これらは、おそらく彼の自伝的な内容を持っているのではないかと考えられている。
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