シェアハウスの共有空間になじむデザインのスピーカーを試作! 音を鳴らしてみた。
前回紹介した、神楽坂駅ほど近くに立つシェアハウス「SHAREtenjincho」。建築家クマタイチさんの設計による、バーチ(白樺)の木をふんだんに使った空間です。
今回は、オーディオ・アクティビスト生形三郎さんのアドバイスのもと、共有空間になじむスピーカーを2パターン用意して、試聴してみました。
箱型でないスピーカーのカタチを、ご覧ください!
まずは一般的な箱のスピーカーで聴いてみた
生形 まずは、一般的なエンクロージャー(箱)で聴いてみてください。オンラインショップ ONTOMO Shop で販売している小型のエンクロージャー(箱)です。
生形 スピーカーユニットは、マークオーディオという香港のブランドで、アルミニウムの振動板を採用したOM-MF4です。6cmと小さいわりに、けっこう低音が出る設計になっているんですよ。振動板を前後に動かすことで音が出ています。
クマ 前後運動なんですね。
生形 はい、振動板が大きく動くユニットほど、低音が出やすくなります。
クマ この箱の下の部分が少し空いていますね。ここが空いているのと、閉じているのとでは、何が違うのですか?
生形 スピーカーの音は、前からだけでなく、実は後ろからも出ているんですね。
この場合は、後ろに出た音が箱の中を通って、低音だけ、このスリットから出ていきますが、このように穴をつくって出す場合と、音を箱の中に閉じ込めて響かせる場合では、音の聴こえ方が違ってくるわけです。
あと、スピーカーの前から出た音と後ろから出た音が合わさってしまうと音が打ち消されてしまうので、それを防ぐために箱や板を挟まないといけません。そういったことを考慮しての形式の違いですね。
バーチ(白樺)の板を利用して空間を鳴らす
クマ 「空間で聴く」ということでピンと来たのが、この曲です。
Cornelius「Music」
クマ コーネリアスって、間をデザインしていると感じるんですよね。音が鳴っていない瞬間が面白い。建築もコンクリートをベタっと打ってしまわずに、柱や壁にすき間をつくることで気持ちのいい空間になるんですよね。それに通じるところがあるのでは。
生形 私もコーネリアスを聴きますが、時間と空間の使い方が秀逸ですよね。……思ったよりよく鳴ってますね。音に広がりがありますね。
クマ いやぁ、気持ちいいなぁ。この部屋の広さ、外から聴こえる音や吹き抜ける風、そういったところも含めての音楽。まさに空間で聴く音楽ですよね。普段は“ながら聴き”が多いんですけれど、まるで温泉に入っているかのよう。音を「浴びる」感覚ですよね。
シェアハウスは、家具も床もバーチ(白樺)の耐水合板で統一しているということもあって、デザイン的な相性もいいし、音が向かってこないで、まわりこんで聴こえてくるのが心地いいですよね。
——今回のテーマのひとつでもある「気配を感じさせる」という視点ではどうでしょうか。
クマ 音量を下げて、もっとBGM的にするというのもアリですね。あるいは、いろいろな場所に複数配置しても面白そうです。
——壁や天井に?
クマ そうですね。
——板の大きさはどうなんでしょうか、大きいほうが音のバランスがいいですか?
生形 板は大きいほうが低域が出ますね。聴き疲れしにくくなると思います。あとは好みですね。
クマ 板の厚さは関係あるのですか?
生形 板は厚いほうがしっかりした音になりますが、あまり分厚いと振動しなくて硬い音になりがちなんです。逆に薄いと、板自体がどうしても鳴ってしまうのですが、実はそれはそれがいい方向に作用することもあって、どちらがいいかは結局これも好みということになります。
今回用意したバーチ耐水合板は9mmで、ちょうどいい厚さですね。
クマ これ、動かしたいときに、板だから手軽にパッと立てかけられていいですよね。場所を変えて鳴らしてみると聴こえ方が変わって面白いし、これが箱だとなかなかそうもいかない。
生形 どういうふうに音をデザインするか、配置するかを考えながら置く場所を決めるといいですね。それこそ、このシェアオフィスみたいなフレキシブルな空間には合っていますね。
クマ アンプが無線で持ち歩きできるタイプなら屋外でもいけそうですね。A看板(※よく飲食店などの前にあるスタンド看板)にはめ込んだりして。
生形 確かに! それは新しいですね。
心地よく鳴る場所を探せ! 振動スピーカーで鳴らすベストな素材は
生形 次は、この振動スピーカーユニットにケーブルをつないで鳴らしてみましょう。いろんな素材に押し付けて振動させることで音が鳴る原理です。
このバーチのテーブルはどうでしょうか。
クマ この大きなテーブル、鳴らしたいなあ!(笑)
生形 うーん……鳴るところと鳴らないところがあるなぁ。机の板同士が固定されている部分だとほとんど音が鳴らないんですが、そうでない部分だと鳴ってますね。
生形 椅子はあまりテーブルと変わらないかなぁ……。あ、これ使っていいですか?
クマ ダンボールですか?
生形 こういう軽い素材のほうが音がよく響くんですよ。
クマ 本当だ! ダンボール、味わいがありますね。
生形 柔らかい音。ダンボールでも横や端じゃなくて、真ん中が一番響いていますね。
クマ いいッスね!(笑)
生形 いいッスよね!(笑)あ、ロッカーもいい。ロッカーの上にある掃除機のダンボールが……もっといいかな?
クマ ダンボールが最強ですね。これを部屋に仕込むとしたら、ダンボールの形をデザインするのがいいかな。小さな箱にして本棚に置いたら、なじみそうですね。
生形 先ほどの「立てかける板のスピーカー」と比べて、使い勝手や音の感じはどうですか?
クマ 振動スピーカーのほうは、振動させるモノの「味」が出ますよね。
生形 板材はダイレクトに音源が聴けますが、振動スピーカーは取り付けた「モノの音」を聴けるので、そういった面白さはありますよね。
クマ ありますね!
生形 板と振動スピーカー、使い分けするのか、同時に鳴らすのか、どちらがいいのでしょう。
クマ 板のほうは、これ自体が家具という要素があると思うのですが、振動スピーカーはもともとある家具を楽器にできるというのが面白いですよね。だから、使い分けはできるんじゃないでしょうか。
リアルに部屋で使うとしたら、本棚に入れたり、作業空間に入れたりしてみたいですよね。
この板のスピーカーと振動スピーカー、どちらかを、あるいは両方をうまく使うことで、「どこから鳴っているんだろう」と思わせるような「気配」が作れそうな予感。
クマさんにはしばらく、これらのスピーカーを使っていただき、次回はさらにブラッシュアップ。リアルに共有空間で日々使うスピーカーを作り、設置する模様をお届けします。お楽しみに!
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