読みもの
2020.07.14
大井駿の「楽語にまつわるエトセトラ」その12

ピアノ:元の名はクラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ! どんな意味?

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

カピローラのリュート曲集より「Non ti spiaqua l'ascoltar」 の自筆譜。
最上段右よりその下の段にかけてtocca più piano (弱めに弾いて)と書かれている。

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前回はチェンバロという楽器についてご紹介しましたが、チェンバロは鍵盤を下ろすと、ツメが楽器内部の弦を引っ掻いて音を出します(ギターを想像してみてください!)。鍵盤のタッチに関わらず、強弱が付けられない仕組みになっています。もしくは、弱い音専用と強い音専用の2段の鍵盤を持つチェンバロでは強弱がつきますが、その中間はなく、モノトーンな強弱しか出せませんでした。

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そこで、イタリアのB.クリストフォリという楽器製作者が「いろいろな強弱が自由に出せるチェンバロがあったら面白いかもしれない」という一心で、1700年にクラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテという楽器を発明しました……長い名前ですね!

この名前はイタリア語で「弱い音も強い音も出るチェンバロ」という意味で、まさに楽器の特徴を表しているのです。あまりに長いので、一般的にはイタリア語で「弱い」という意味のピアノだけで呼ばれるようになりました。そしてジュスティーニというイタリアの作曲家が1732年に初めてピアノのための作品を書きました。

もともとこの長い名前は、フォルテピアノと略して呼ばれていましたが、1770年代のアメリカで「ピアノ」という略や、「ピアノフォルテ」という名称が使われるようになりました。その影響でのちに、フォルテピアノは革のハンマーで弦が強く張られていない当初のもを指し、ピアノ(またはピアノフォルテ)は産業革命以降に製造された金属のフレームをもつ新しいものと、分けて使われるようになりました。

楽譜の中で「弱く」と強弱を指示する場合に用いられる「ピアノ」は、歴史は楽器よりも古く、1517年にカピローラというイタリアの作曲家がまとめたリュート(ギターのような楽器)のための作品集に“tocca più piano (弱めに弾いて)”と指示したのが強弱記号としてのピアノの初出とされています。

カピローラ:リュート曲集 より Non ti spiaqua l’ascoltar

こうして強弱を指す楽語が登場したことにより、音楽に奥行きが生まれ、その後の音楽が大きく発展する1つのきっかけとなったのです。

クリストフォリが1720年に製作したピアノの元祖。(ニューヨーク・メトロポリタン美術館蔵)
1828年にオーストリアで創業した老舗、ベーゼンドルファーのピアノにもたれかかるブラームス (1867年撮影)。

いろいろなピアノを聴いてみよう

()内はピアノの製造年と製作者

1.  ジュスティーニ:ピアノソナタ第5番〜第4楽章コレンテ(1726年、クリストフォリ)
2. W.A.モーツァルト:ピアノソナタ KV331〜第3楽章「トルコ行進曲」(1785年、ヴァルター)
3. ベートーヴェン:11のバガテル Op.119〜第11番 (1818年、ブロードウッド)
4. ショパン:練習曲 Op.25-1(1836年、プレイエル)
5. ブラームス: 間奏曲 Op.119-3 (1871年、J.B.シュトライヒャー)
6. ラフマニノフ:練習曲《音の絵》 Op.39-5 (1934年、スタインウェイ)

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

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