読みもの
2020.07.21
大井駿の「楽語にまつわるエトセトラ」その13

パヴァーヌ:語源はパドヴァか孔雀? 16世紀にエリザベス1世も愛した踊り

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...

エドウィン・オースティン・アビー《パヴァーヌ》(1897年)

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パヴァーヌとは、16世紀(ルネサンス期)から宮廷で踊られていた踊りですが、はたしてどのような踊りなのでしょう。その起源はイタリアにあるとされ、現存する最古のパヴァーヌとして、1508年にダルツァというイタリアの作曲家が書いた「フェラーラ風パヴァーヌ(Pavana alla ferrarese)」が残されています。

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1588年にフランスの司祭アルボが「パヴァーヌはとても簡単な踊り」と記した通り、基本的に男女の対で踊られるシンプルな踊りで、同時代にイギリス(イングランドとアイルランド)の女王だったエリザベス1世がこよなく愛したと言われています。

最古の記録がイタリアであることから、フェラーラから70kmほど離れたイタリア北部のパドヴァに関連を持つとされ、イタリア語で「パドヴァのpadovana)」がフランス語になってから訛り、「パヴァーヌ」になったという説が有力です。

一方で、女性の踊る様子が孔雀が尾羽を振っている様子に似ており、孔雀(イタリア語のpavona、もしくはスペイン語のpavón)に起源を持つという意見もあります。

ゆったりとした踊りのパヴァーヌは、似た踊りで速さを持つアルマンドに人気を奪われ、17世紀半ば以降はあまり踊られなくなってしまいました。

しかし、ゆったりと格調のある、そしてどこかミステリアスな雰囲気の漂う曲調は、後世の作曲家に気に入られ、踊るためではなく音楽作品としてのパヴァーヌが書かれるようになりました。

フランスの司祭アルボが著した『オルケゾグラフィ』のパヴァーヌのイラスト
『オルケゾグラフィ』に収められているプレトリウスの「スペインのパヴァーヌ」の振り付け。メロディーの一音一音に対して細かい動きが記されています。
ラヴェル《亡き王女のためのパヴァーヌ》初版の表紙

パヴァーヌを聴いてみよう

1.  ダルツァ:フェラーラ風のパヴァーヌ
2. ジェルヴェーズ:イギリス風パヴァーヌ
3. アテニャン:パヴァーヌ
4. プレトリウス:スペインのパヴァーヌ
5. フォーレ:パヴァーヌ Op.50
6. ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...

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