読みもの
2020.11.17
大井駿の「楽語にまつわるエトセトラ」その29

マエストーソ:イタリア語で「荘厳な」。ワーグナー的には「いきいきと闊歩する様子」

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

モーツァルト:ピアノ協奏曲第3番 ニ長調より第1楽章Allegro maestosoの自筆譜。

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マエストーソは、イタリア語で「荘厳なまたは「堂々としたという形容詞で、音楽の歴史のなかでは新しい言葉に分類されます。主に使われるようになったのは18世紀からです。

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ドイツの音楽理論家ヴァルターの音楽辞典(1728年)には、「豪華で堂々とした様子で演奏され、多少テンポが遅くなることもある。しかし、いきいきとした表現を伴う」とあります。

“堂々としているのに、さらに生き生きとする”……なんだか矛盾しているようにも思えますが、ワーグナーは自身の論文《指揮について(Über das Dirigieren)》のなかで、このことについて言及しています。

私の楽劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》の前奏曲にはSehr mäßig bewegtという言葉が登場します。これはもともとアレグロ・マエストーソのドイツ語訳です。この曲は4拍子で書いてありますが、4つのビートはいきいきと闊歩する様子で演奏されるべきです。そして、それはほぼ2拍子(アラ・ブレーヴェ)なのです。

ワーグナー:楽劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》〜前奏曲

ワーグナー 楽劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》〜前奏曲の冒頭 (H.v.ビューローによるピアノ譜)。

堂々としている様子を想像すると、どうしてもどっしり構えたような感じがしてしまいます。しかし、風を切るように闊歩する様子も、また堂々としているのでしょう!

マエストーソを聴いてみよう

1. モーツァルト:ピアノ協奏曲第3番 ニ長調 KV40〜第1楽章 Allegro maestoso
2. モーツァルト:フルート協奏曲第1番 ト長調 KV313〜第1楽章 Allegro maestoso
3. ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 作品125〜第1楽章 Allegro maestoso
4. ヴェルディ:歌劇《アイーダ》より第2幕〜凱旋行進曲 Allegro maestoso
5. ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 作品15〜第1楽章 Maestoso
6. ヴァイル:組曲《三文オペラ》〜第1曲 序曲 Maestoso

ヴェルディの歌劇《アイーダ》第2幕より「凱旋行進曲」の冒頭。
大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

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