ラレンタンド:実はレントの動詞形! 19世紀の定義では「ウトウトしてしまうような様子」
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
こちらの言葉も、アッチェレランドと同じく、歴史の浅い言葉です。
もともと18世紀まではLentando(Rallentandoと同義語)が使われていましたが、19世紀になってからは、強調の接頭句(ra-)がくっついたRallentandoが使われるようになりました。楽譜の中では、rall.という略も使われます。
しかし驚くことに、32曲あるベートーヴェンのピアノ・ソナタの中で、最後にラレンタンドが使われたのは、ピアノソナタ第3番で、それ以降使われることはありませんでした。
19世紀の音楽学者、グスタフ・シリング(1805~1880)が編纂した音楽事典では、「ラレンタンドは、疲れて一瞬ウトウトしてしまうような様子」と定義されています。
譜例をよく見ていただくとわかるかもしれませんが、ラレンタンドが書いてある部分には「Rallentando- – – – -」や「Ral – len – tan – do」のように、単語を引き伸ばしたり、点々を書くことによって、ラレンタンドの範囲が示されている場合が多いです。
この例からもわかる通り、ラレンタンドは、その指示が書かれている部分で、段々と遅くするのです。
その後、ラレンタンドはあまり使われなくなったものの、フランス語でのralentir(ラレンタンドの元の言葉rallentareと同じ意味)が使われるようになりました。
何か楽器を演奏される方なら、一度は、「これすごくいいメロディだから、ちょっとゆっくり時間をとって、いい感じに弾きたいなぁ」なんて思ったことはないでしょうか……?
特に近代のフランス音楽では、楽譜に事細かに指示を書かれることが多いのですが、作曲者が「いい感じのメロディなのはわかるけど、絶対遅くしないでね!」と、釘を刺す言葉として sans ralentirが使われました(sansは「〜なしで」という意味)。
テンポを遅くする用語は、ほかにもいくつかありますが、追ってご紹介していきます。その微妙なニュアンスの違いにも、今後ご注目ください!
ラレンタンドを聴いてみよう
1. ベートーヴェン:ピアノソナタ第3番 ハ長調 作品2-3〜第4楽章
2. ショパン:夜想曲 ヘ短調 作品55-1
3. ラヴェル:ソナチネ〜第2楽章
4. プーランク:「メランコリー」
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