サイモン・ラトル、「人生を変えた」バイエルン放送響の首席指揮者に就任決定
ドイツ・ミュンヘンに本拠地を置くバイエルン放送交響楽団は、2023/24シーズンの首席指揮者にイギリス出身の名匠サー・サイモン・ラトルが就任することを発表した。2019年に急逝したマリス・ヤンソンスの後任として、歴代6人目の首席指揮者となる。
就任決定に際して発表されたラトルのコメントやバイエルン放送交響楽団との関係について紹介したい。
1955年1月19日、イギリス・リヴァプール生まれ。ロンドン王立音楽院で学ぶ。フィルハーモニア管など英国の主要オーケストラに客演、早くから注目を集め、80年バーミンガム市立響の首席、90年に音楽監督に就任。2002年から2008年はベルリン・フィルの音楽監督を務める。2017年9月にロンドン交響楽団音楽監督に就任し、現在に至る。
1994年、30代の若さでサーの称号を得る。
ラトルとバイエルン放送交響楽団の出会いは、1970年、まだ10代で指揮者を夢見始めた頃だったという。出身地リヴァプールで、ラファエル・クーベリック指揮によるベートーヴェンの「第九」を聴き、衝撃を受けた。
「このコンサートに居合わせたことは、自分の人生を変えた」という。すでにクーベリックのファンだったラトルは、多くの録音をもっていて、バイエルン放送交響楽団のことは知っていたが、リヴァプールで生で聴くことができて、大変感銘を受けたそう。「指揮者と奏者のあいだにある共生関係、統一感のあるコンセプトと哲学を体感して、音楽家が生み出す真の喜びとしか言いようのないものだった」この経験は、彼の音楽家人生の目標となったと語る。
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱付き》(クーベリック指揮/バイエルン放送交響楽団)
それから40年近く経った2010年、ラトルはバイエルン放送交響楽団との初共演を果たす。「当時と同じメンバーは数人しかいなかったけれど、たしかに同じ精神を感じた」そうだ。
「このような素晴らしいオーケストラや驚異的な合唱団とコラボするのは楽しみなわけだが、その際、これまでこのオーケストラに携わり、あたたかみと人間性を創り上げてきた比類なき音楽家たちに、敬意を表したい。オーケストラのメンバーは変わる。しかし、エトス(精神)は残るのだ」と、今後の共演への期待を語った。
バイエルン放送交響楽団総監督のウルリッヒ・ヴィルヘルムも、「マリス・ヤンソンスの後任としてサイモン・ラトルを迎えるのは、バイエルン放送交響楽団と合唱団にとって、この上ない喜び」と歓迎。「シューマンのオラトリオ《楽園とペリ》で初共演して以来、ラトルとオーケストラはとてもいい雰囲気で、互いに高く評価し合ってきた。これから、バロックからムジカ・ヴィヴァ(注:ミュンヘンで開催される現代音楽を取り上げる音楽祭)まで、幅広いレパートリーで共演できるのを楽しみにしている」と語っている。
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