読みもの
2020.01.26
特集「クラ活」音楽配信とガジェットを語る会

音楽配信の時代、どんな聴き方がオススメ? クラシックをもっと楽しむヒント

音楽鑑賞はストリーミング配信の時代へ。クラシック音楽にも、ちゃんと(?)その波が来ておりますが、ここに集まったナビゲーターの2人と編集部員は、どのアプリで、どのくらい音質を重要視して、どんな機器を使って、日々聴いているのでしょう?

司会と文
飯尾洋一
司会と文
飯尾洋一 音楽ライター・編集者

音楽ジャーナリスト。都内在住。著書に『はじめてのクラシック マンガで教養』[監修・執筆](朝日新聞出版)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『R40のクラシッ...

ガジェット好き参加者
飯田有抄
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飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

ONTOMO編集部
ONTOMO編集部

神楽坂を拠点に、取材・編集作業をしています。

写真:編集部

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クラシックの音源、聴くのはどこで?

飯尾 音楽配信の時代になって、音楽を聴く手段がずいぶん多様化しているように感じます。どんなハードウェアを使うのか、どの音楽配信サービスを使うのか。人によってぜんぜん答えが違うようなので、今回はみなさんが実際に日々音楽をどのように聴いているのかを、お尋ねしたいと思います。そもそも場所はどこで聴いているのでしょう? 家で、それとも外なんでしょうか。

飯田 基本的に家です。最近、クルマで移動する機会が増えてきたのですが、クルマだとクラシックは向いていないのでラジオですね。でも電車で出かけるときは音楽が欲しくなるかもと思って、聴けるように準備して出かけます。

川上 自分は家でも聴きますが、外が多いですね。スコアを読むのが趣味なので、スコアをiPadに入れて、カフェに出かけて、コーヒーを飲みながら交響曲を1曲聴いて帰ってくる。

飯田 わ、おしゃれ!

愛用の機器をどっさり持ち寄ってくださった飯田有抄さん(右)、外出先では聴かないのでオーディオ機器のご持参なしの飯尾洋一さん(中)、飯田さんと機器がややかぶる編集部の川上。

川上 家ではクラシックじゃないリラックスした曲を聴くことが多いですし、クラシックだとしてもピアノ曲などです。がっつりした曲を聴くときは、まるでコンサートに行く感覚みたいに、出かけて聴く。

飯尾 なるほど、それはおもしろい。なんだか優雅ですね。

川上 いやいや、ぜんぜん優雅じゃありませんよ。1曲聴いて、1時間とかで帰ってきます。

なにを使って聴く? ハードは、ハイレゾは?

飯尾 おふたりがメインでお使いのハードウェアはどんなものなんでしょう。

飯田 私は均等にいろんなパターンがあるんです。「ガチで聴く」のと「今すこし聴く」ので違ってくる。でも「今すこし聴く」ことのほうが多くて、そのときに使うのがソニーのウォークマン。最新のDAP(デジタル・オーディオ・プレーヤー)です。

ソニーのウォークマン。カセットテープのウォークマンから考えると、驚きの進化!

川上 実は私も同じものを持っています。

飯尾 えっ、そうなんですね。これはなにを聴けるんですか。

飯田 ウォークマンというと、飯尾さん、なにを思い出します。

飯尾 カセットテープ(笑)。

デジタルだけど、再生中にカセットテープが回る映像が出てくる。一緒に使用するのはインナーイヤフォンのファイナルのE5000。「聴き疲れしない音なんです」(飯田さん)

飯田 ですよね。でもこれはDAP。mp3もストリーミングも聴ける。SpotifyでもApple MusicでもAmazonでも聴けます。Spotifyはとてもよく使います。

川上 自分はこれと同じ機種を、ハイレゾとリッピングしたCD音源を聴くために使っています。

飯田 私もCD音源は聴きます。家でCDを聴くときはCDプレーヤーで聴きますけど、外で聴くときのためにリッピングします。そこで便利なのが、パソコンを介さずにリッピングできるアイ・オー・データの「CDレコ」。

アイ・オー・データの「CDレコ」。スマホやウォークマンに直接CD音源を取り込めるスグレモノ。

飯尾 素朴な疑問なのですが、CDからリッピングするのではなく、Spotifyで聴くのではダメなんでしょうか。

飯田 CDでしか聴けない音源もありますし、CDから無圧縮でリッピングしたほうが音がいい。

川上 そうなんですよねえ。自分はモノが増えるのが嫌なので、なるべくCDは買いたくない派。そこでハイレゾなんです。ストリーミングで聴いて、これはいいなと思ったり、アーティストを応援したいなと思ったら、ハイレゾを買うことが多いですね。

飯尾 ダウンロード購入するわけですね。ちなみによく使う販売サイトは?

川上 Presto Musicというイギリスのサイトをよく使います。

飯尾 あっ、Presto Musicは僕もよく使っています。僕の場合はハイレゾではないんだけど、ダウンロード購入するときの第一選択肢がPreto Music。

飯田 私は日本のmoraでハイレゾ音源を買っています。

飯尾 今、音源を聴くにはクオリティ別に3つのステージがありますよね。まずはSpotifyのようなストリーミングを使って一般的な圧縮音源で聴く。次にWAVやflacなどで、CDと同等の音質で聴く。そして、CDを超えるハイレゾがある。やっぱりハイレゾで聴きたいものですか。

飯田川上 うーーーーん(声をそろえて考え込む)。

飯田 ハイレゾはいいんですけど、実は意外とSpotifyもいい(笑)。

川上 あっ、そうかもしれませんね。自分はApple Musicをよく使っていて、iPhoneとワイヤレスのヘッドフォンもよく使う。操作性がいいんですよね。

川上のお気に入りセットは、パナソニックのワイヤレスヘッドフォンRP-HD610NとiPhoneのApple Music。

飯尾 じゃあ、しつこいですけど、やっぱりハイレゾじゃなくてもいいのでは?

川上 そこは曲やジャンルを選びますね。ストリーミングがダメなわけではなくて、気楽に聴きたいものもあれば、ハイレゾで聴きたいものもあるということ。特に古楽器系のオーケストラだと、圧縮音源では内声がギャンとつぶれてしまうんです。それがハイレゾだと大理石で演奏している様子、音の感触が伝わってくる……ような気がします。

飯田 ああ、それはわかります。それとハイレゾは好奇心を刺激するんです。でもストリーミングでも、ヘッドフォンだとかイヤフォンだとか出力する機材がよければ満足度はぐっと上がります。

フォステクスのヘッドフォンTH610。黒胡桃無垢削り出し材を使用しており、価格は83,000円。
「ストリーミンング音源でも、適度な深みを与えてくれて、オーディオで聴いているみたいなんです!」と、このヘッドフォンに出会ったときの衝撃を語る。

ハードウェアには趣味が出る

飯尾 僕は家でしか聴かないので、パソコンとオーディオ機器をUSB-DACでつなげて、ストリーミングもCDも同じ環境で聴いています。これが今よくある形だと思っていたのですが、どうなんでしょう。この形ならすでにあるオーディオ機器を生かせます。ただ、USB-DACを導入しなければならないのが、ひと手間かかる感じでしょうか。

川上 むしろこれからは無線にいくのでは。直接受信できるアクティブ・スピーカーとか。

飯尾 それはシンプルですよね。実は最近、アンプとCDプレーヤーが一体となったネットワークCDレシーバーを導入したら、パソコンが起動していないときでもスマホやタブレットからSpotify等を使ってストリーミングで再生できて、とても便利だなと実感しています。

川上 自分は家でもスピーカーではなく、ヘッドフォン、イヤフォンです。若い人はそういう人が多いかも。

飯尾 そういえば、パソコンの普及率は下がっているんですよね。たいていのことはスマホでできるようになってきたから。そうなると、パソコンなしの環境が前提になってくる。

飯田 若い子向けの商品なんですけど、蔦屋家電のCDプレーヤーがあるんですよ。CDしか聴けないんですが、おしゃれな感じなんです。私たちの世代だとまだ普通にCDを聴きますけど、若い世代向けのレトログッズみたいな雰囲気があるんですよ。

飯尾 ええっ!CDプレーヤーがレトログッズって。レコード・プレーヤーみたいな感じじゃないですか。

飯田 そうそう! 若い子たちが「懐かしいね、これなら持ってるCD、使えるね」くらいの感じですよ。Bluetoothも使えますが、有線でAKGのヘッドフォンをつなげて聴いています。これはいいですよ。

蔦屋家電のBCPLAY_(ビーシープレイ)はヘッドフォンとBluetooth接続できるCDプレーヤー。価格は12,000円。ヘッドフォンはAKGのもの。
AKGのヘッドフォンは飯尾さんもご自宅で愛用中。圧迫感がなく、耳が疲れない音だそうだ。

 

飯尾 本当にいろんな機材を使ってるんですね。

飯田 ほかにもiPadをつなげるように改良された古い真空管ラジオがあるんです。これ、かわいいでしょう? 

 

突如、iPadで自宅のオーディオ環境についてプレゼンを始める飯田さん。
これがどうしても伝えたかった、古い真空管ラジオの写真や配線図。
iPadにつなげるために改良され、飯田さん宅で現役!

飯尾 えっ、そんな改良ができるんですか。

飯田 そういう改良をしてくれるお店があるんです。これでルービンシュタインのピアノだとか古い録音を聴くと、すごく味わい深い。モノラルの懐かしい感じの音がする。

飯尾 もう完全に趣味の世界ですね。

飯田 あとはアメリカのMuzenというメーカーのラジオ。Bluetoothでつながるのですが、けっこういい音がするんです。

川上 レトロなデザインで、かわいいですね。ピクニックとかに持っていくと楽しそう。

飯尾 ハイファイオーディオの世界とはまた別の、ガジェットとしての魅力があるんでしょうね。

ストリーミングサービスとの付き合い方

飯田 Spotifyなどのストリーミングだと、プレイリストがあるじゃないですか。あれは使います?

飯尾 実は使っていません。自分で選ばないと気が済まない性質なので。

飯田 あれがいいんですよ。たとえば私はジャズに詳しくないから、プレイリストを頼りにしている。最近すごく気に入っているプレイリストがジャズ・チル。

飯尾 ああ、そんなふうにプレイリストを使うんですか。

川上 クラシックやジャズだったら自分で選びたいけど、ポップスとかR&Bとかヒップホップだったら、プレイリストに任せちゃう。

飯尾 自分があまり詳しくないジャンルこそ、プレイリストが役立つのかも。いろんなストリーミング・サービスがありますが、みなさん複数のサービスを使い分けていますね。

飯田 いちばん使うのがSpotify。次にApple Music。Naxos Music Library、Amazon Music Unlimitedも使います。

飯尾 僕も今はSpotifyが基本です。でも、クラシックの新譜をチェックするときはApple Musicのほうが品ぞろえがいいので便利。総合力のSpotify、新譜コーナーが強いApple、検索能力と日本語対応がすぐれているNaxos。どれも欠かせません。

川上 Apple Musicの新譜コーナーで聴いて、気に入ったからハイレゾで買うことがよくあります。

 

Apple Musicの新譜コーナー「ニューアルバム」。

飯尾 僕は家にCDがあっても、同じ音源をよくSpotifyで聴いちゃう。CDを棚から探し出すのが面倒なせいもあるけど、CDって1回買ったら支払いはそれっきりでしょう? でもSpotifyで聴くと、微々たるものだけどアーティスト側に支払いができる。コンマ何銭の世界でしょうけど、昔購入したCDを応援するみたいな気持ちであえてSpotifyで聴いたりするんですよ。Spotifyって、そのトラックが何回再生されたかとか、わかるじゃないですか。あそこの目盛りが低いほど、応援したくなる(笑)。

川上 わかります。自分も昔からフランソワ=グザヴィエ・ロト指揮レ・シエクルが好きで、ストリーミングで聴いて、CDも買って、ハイレゾも買ってしまう。

飯尾 もうお布施ですよね。ストリーミング・サービスは自分の好きなアーティストに一票入れるみたいな気持ちで音楽を再生できるのが楽しいところです。

 

フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮 レ・シエクルのラヴェル曲集

司会と文
飯尾洋一
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飯尾洋一 音楽ライター・編集者

音楽ジャーナリスト。都内在住。著書に『はじめてのクラシック マンガで教養』[監修・執筆](朝日新聞出版)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『R40のクラシッ...

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飯田有抄
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飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

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神楽坂を拠点に、取材・編集作業をしています。

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