読みもの
2018.04.28
音楽で楽しむ『スーパーマリオ』シリーズ

音楽がゲームの世界を演出『スーパーマリオ オデッセイ』

皆さんお馴染みの名作『スーパーマリオ』シリーズの最新作をご紹介します。ゲーム音楽の最先端と元祖ピコピコサウンドが彩る世界の旅をお楽しみ下さい。

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hide/永芳英敬
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hide/永芳英敬 フリーランスライター

ゲーム音楽の分野を中心に活動するフリーランスライター。ゲーム音楽作曲家へのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事などを多数執筆しています。好きなゲーム作品:...

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2017年に任天堂から発売された『スーパーマリオ』シリーズの最新作、『スーパーマリオ オデッセイ』(Nintendo Switch用ソフト)の音楽面にスポットをあててご紹介したいと思います。

『スーパーマリオ』シリーズは、主人公マリオが、宿敵クッパにさらわれたピーチ姫を助けるために冒険を繰り広げるアクションゲームで、1980年代から30年以上にわたってテレビゲームという娯楽の最前線を走り続けている作品です。そして、ゲーム機の進化とともに、ビジュアル面やゲームシステムだけではなく、音楽面も進化を遂げてきました。

 

ミュージシャンの演奏で彩られる、マリオの冒険

皆さんは、テレビゲームで流れる音楽、すなわち「ゲーム音楽」に、どのようなイメージをお持ちでしょうか? 1980年代に発売されたファミリーコンピュータ(ファミコン)のような、ピコピコした電子音のイメージをお持ちになる方もいらっしゃるかもしれません。しかし近年はゲーム機の性能向上により、生の楽器でレコーディングされた演奏がゲームから流れてくることが多くなってきました。今回ご紹介する『スーパーマリオ オデッセイ』もそのひとつで、本作の音楽はミュージシャンの演奏によるものが収録されています。

本作のコンセプトは「世界の旅」であり、結婚式を挙げるためにピーチ姫を連れ去ったクッパを追いながら、主人公マリオが世界を旅するという内容です。マリオは、滝が流れる大平原や、ピラミッドのある砂漠、ビルがそびえ立つ都市、海岸のリゾート地など様々な国を訪れるのですが、各地で流れる楽曲群も、各国のさまざまなロケーションや世界観をより引き立ててくれるものが揃っており、マリオの旅を盛り上げてくれます。ここからは、本作の楽曲をいくつかピックアップしてご紹介していきましょう。

各国の様子を彩る楽曲たち

https://twitter.com/mario_odysseyJP/status/971504514351087616

冒険の序盤で訪れる、大きな滝が流れる平原の国「ダイナフォー」で流れる音楽です。開放感と爽やかさにあふれたオーケストラの旋律が、水と緑の大自然に満ちた雄大な景色を鮮烈かつ印象的に表現しています。

 

https://twitter.com/mario_odysseyJP/status/969325908082372608

一面がまっしろな雪の国「パウダーボウル」の町で流れる音楽は、アイルランド発祥の縦笛・ティンホイッスルによる、かわいらしい音色で奏でられています。この町には、まるまるとした姿をした種族が住んでいるのですが、彼らが持つのんびりとした雰囲気も含めて楽曲で表現されているかのようです。シャンシャンというやさしい鈴の音色も、寒い土地の雰囲気を演出しています。

 

https://twitter.com/mario_odysseyJP/status/979476291949907968

料理が盛んな国「ボルボーノ」。この国の中心部にある「ペロンツァ広場」で流れる楽曲は、マンドリンとアコーディオンによる演奏で、まるでお料理番組のような雰囲気になっています。なお、包丁でまな板を叩く音や、おたまでお鍋のフタを叩く音といった調理器具を使用したサウンドも取り入れられており、徹底して“料理”をテーマにした音楽演出がなされています。

 

https://twitter.com/mario_odysseyJP/status/976938570928869376

今回、ゲームの終盤でマリオが乗り込むことになる「クッパ城」は、これまでのシリーズ作品とは大きく異なる、和風のデザインになりました。それに合わせて音楽も尺八や和太鼓、三味線といった和楽器を使用してレコーディングされており、風格が漂うクッパ城の雰囲気や、マリオが敵の本拠地へ乗り込む際の緊張感が演出されています。

 

これまでご紹介した以外にも本作にはさまざまな国が登場しますが、どの楽曲も、各国のロケーションにぴったりマッチしており、マリオの冒険を盛り上げてくれます。

『スーパーマリオ』シリーズ初のボーカル楽曲

「Jump Up, Super Star!」

 

本作の楽曲で筆者が特にお勧めしたいのは、『スーパーマリオ』シリーズ初となるボーカル曲「Jump Up, Super Star!」です。総勢17名のミュージシャンによる大迫力のビッグバンド演奏に加え、Kate Davis氏が歌うポップで伸びやかなボーカルが素敵です。

この楽曲は、ゲーム中では「ニュードンク・シティ」というニューヨークを連想させる摩天楼都市で開催される、フェスティバルのシーンで聴くことができます。多くの観客が声援を送る中でマリオが華麗なアクションを魅せる、本作でも屈指の見せ場を、そんな華やかなに演出してくれています。
ちなみに、この楽曲は「ポリーン」というニュードンク・シティの女性市長が歌う設定になっていて、歌詞もマリオの世界観を感じさせるものになっています。楽曲の中に、マリオがジャンプする音や、コインを取った時の音などが入っているのも、聴いていて楽しいですよ。

ちなみに、ゲーム中にはこのフェスティバルの開催前に、街のミュージシャンに声をかけて人を集めていく場面があるのですが、「声をかけたパートのメンバーが1人ずつ参加していって、演奏が少しずつにぎやかになっていく」という仕掛けもあります。ミュージシャン全員がそろうと、音楽ホールで初代『スーパーマリオブラザーズ』のとある楽曲がバンド演奏されるイベントがあるのですが、これが非常にジャジーで華やかなアレンジになっていてワクワクしますよ!

マリオが“ドット絵”に変身すると、音楽もピコピコに

もうひとつ、このゲームならではの音楽的な仕掛けとしては、「マリオが昔なつかしい“ドット絵”の姿に変身すると、ピコピコサウンドになる」という点が挙げられます。

ステージの途中に時折設置されている、緑色の「土管」に入って壁の中の世界に入ると、マリオが昔なつかしい二次元の“ドット絵”の姿に変身することがあります。その際には、音楽がレコーディングされた演奏のものから、ファミコンのようなピコピコサウンドにシームレス(つなぎ目なし)に変化するのです。そしてマリオが土管から出て、もとの三次元の姿に戻ると、音楽もまたレコーディング演奏のものへとシームレスに戻ります。実際にゲームをプレイてみると、音の切り替わりをまったく感じさせることのないスムーズな移行が非常に気持ちよく、ユニークなゲーム体験ができますよ。

レコーディングされた演奏と、昔懐かしいピコピコ音。その両方が入り混じり、ゲームならではのインタラクティブな演出も加わった『スーパーマリオ オデッセイ』の音楽は、まさに『スーパーマリオ』サウンドの集大成と言える出来栄えです。“遊び心”に満ちあふれた、冒険心をかき立ててくれるワクワクサウンドが詰まっています。

 

目玉がついた不思議な帽子の相棒「キャッピー」の能力を借りて、マリオを敵に乗り移らせ、敵を自由に動かすことのできる新システム“キャプチャ”など、ゲーム面も非常に面白い作品です。ぜひゲームとセットで音楽に触れてみてください。

 

なお、本作のサウンドトラックCD『スーパーマリオ オデッセイ オリジナル・サウンドトラック』も発売中です。本作の楽曲群が、CD4枚組、全136曲のボリュームでたっぷり収録されています。ご興味をおもちでしたら、こちらもチェックしてみてくださいね。

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