時代に思いを巡らせ、メモリアルイヤーを感じるCD
タワーレコードのクラシック担当バイヤーが、本Webマガジンの4月の特集「春、体感する音楽」をテーマに合った1枚をピックアップ! さらに、月刊誌「レコード芸術」が特選盤に選んだCDの中から、さらに優れた2枚を推してもらった。
2010年からはタワー企画盤のセレクトと制作、監修も兼任。趣味も音楽一辺倒。ソフト所有数は膨大すぎて不明。中学1年から吹奏楽、高校からはオケでトロンボーンを演奏(現在...
レコード「板」の「倉」を守る「重」たい「雄」です。「レコード芸術」購読歴は40年、レコード業界歴は24年。現在タワーレコード株式会社、商品本部洋楽部勤務。SPレコード...
春、50年前のプラハに思いを馳せる ~特集「春、体感する音楽」タワーレコード編
■スメタナ:連作交響詩《わが祖国》全曲
「春」といえばプラハに思いを馳せる。
毎年5月12日にスメタナの《わが祖国》で幕を開ける「プラハの春」音楽祭は、チェコ・フィルの創立50周年にあたる1946年に第1回目がスタートした。国際コンクールも開催され、その後、ほぼ毎年にわたって世界中から多くの演奏家が参加している著名な音楽祭だ。1990年にはクーベリックの1948年以来となる共演が実現し、日本でも大いに盛り上がったのは記憶に新しい。
政治的にも1968年に起こったいわゆる「プラハの春」から数えて、今年は半世紀に当たる。
その年ひとりの指揮者が亡命した。アンチェルである。その後、当人として艱難辛苦の末に安住の地を見つけられたかどうかは結局我々には知る由もないが、第二次大戦中に彼が味わった悲惨な経験含め、今は「春」とは言え、重い空気が身を包むことは確かだ。
1963年にチェコ・フィルと収録された本作は、アンチェルらしい意思の強さに貫かれた純音楽的表現が心を打つ。美しさと表裏一体の残酷さをも併せもつことに気付くと、よりこの名盤を体感できるだろう。ちょうど50年前の「プラハの春」音楽祭は、アンチェル指揮で幕を開けたのだった。
(タワーレコード商品本部 北村 晋)
現代のチェコ像を描く《わが祖国》 ~「レコード芸術」2018年4月号「新譜月評」特選盤より
■スメタナ:連作交響詩《わが祖国》全曲
2017年5月に惜しまれつつ亡くなったチェコの名指揮者ビエロフラーヴェク(1946-2017)の文字通り遺作となったCD。
19世紀後半に、チェコの独立を願って書かれた《わが祖国》を、彼は繰り返し、演奏、録音していますが、この録音はその集大成と言える名演です。チェコ・フィルの響きは清々しく、爽やかで、コクもあり、旋律のしなやかな描き方に旨みを感じさせます。自然な音楽の流れの中に、巧まずして作品の偉大さを描き出す指揮者の手腕は素晴らしく、音楽的な美しさと迫真の表現を両立させた〈モルダウ〉のクライマックスや、力みを排して誇らしく謳い上げられる〈ターボル〉のコラールなど、その好例と言えるでしょう。
〈モルダウ〉でのティンパニ改訂や、〈シャールカ〉のクライマックスで弦のトレモロを抜くといった、チェコの伝統的な解釈を受け継ぎながら、真の独立を得て平和を謳歌する現代チェコに相応しい《わが祖国》像を見事に描き出しています。
(タワーレコード商品本部 板倉 重雄)
ドビュッシー記念イヤーを代表する1枚 ~「レコード芸術」2018年4月号「新譜月評」特選盤より
■ドビュッシー:前奏曲集第2巻、白と黒で
2018年ドビュッシー没後100年というアニヴァーサリー・イヤーにふさわしいマウリツィオ・ポリーニの新録音は、まさに今年を代表する新譜のひとつとなるだろう。
《前奏曲集》第1巻以来、約20年振りとなるこのドビュッシー録音は、《前奏曲集》第2巻と息子ダニエレ・ポリーニと2台ピアノで共演した《白と黒で》を収録。
独創性に満ちた“第2巻”を、現代音楽も得意とするポリーニが、瑞々しさと円熟味が絶妙に混ざり合い、颯爽と躍動するキレ味鋭いタッチで、透徹とした響き、残響さえも美しく聴かせる。楽曲ごとに緻密にニュアンスを変えるところもさすが。作品を研究し尽くし、何度も演奏してきたこの作品を録音した今作は、ポリーニらしさという魅力がヒシヒシと感じられる。
(タワーレコード商品本部 上村 友美絵)
2010年からはタワー企画盤のセレクトと制作、監修も兼任。趣味も音楽一辺倒。ソフト所有数は膨大すぎて不明。中学1年から吹奏楽、高校からはオケでトロンボーンを演奏(現在...
レコード「板」の「倉」を守る「重」たい「雄」です。「レコード芸術」購読歴は40年、レコード業界歴は24年。現在タワーレコード株式会社、商品本部洋楽部勤務。SPレコード...
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