読みもの
2018.05.01
タワレコ・バイヤー推し! の3枚

100年前のクラシックの潮流を感じる1枚 & 「レコード芸術」特選盤より再選!

タワーレコードのクラシック担当バイヤーが、5月の特集「100年」のテーマに合った1枚をピックアップ! さらに、月刊誌「レコード芸術」5月号が特選盤に選んだCDの中から、さらに優れた2枚を推してもらった。

推した人
板谷祐輝
推した人
板谷祐輝 タワーレコード オンライン事業戦略部

2011年タワーレコード入社。オンラインショップのマーケティング・事業戦略を担当。好きな音楽はクラシック、現代音楽、アンビエント、欅坂46。趣味は作曲、ピアノ、クラリ...

板倉重雄
板倉重雄 タワーレコード商品本部洋楽部

レコード「板」の「倉」を守る「重」たい「雄」です。「レコード芸術」購読歴は40年、レコード業界歴は24年。現在タワーレコード株式会社、商品本部洋楽部勤務。SPレコード...

上村友美絵
上村友美絵 タワーレコード商品本部

音大を卒業後、タワーレコードに入社。クラシックに限らずピアノものが好き。趣味は映画に舞台鑑賞。

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未だに前衛!? 当時のクラシック潮流 ~特集「100年」タワーレコード編

■新ウィーン楽派ピアノ作品集

100年、文化が進化するには十分な時間だ。

今から100年前にクラシックはどんな音楽だったかと考えると、ちょうど新ウィーン楽派が十二音技法を編み出した時期ではないかと思い至る。

十二音技法とは、いわゆる古典・ロマン派音楽が重きを置いていた調性から脱却して、理論的に無調音楽を作る方法だ。

わかりやすくいうとピアノの鍵盤はドからその上のドまでの間に黒鍵・白鍵含めて12個の音が存在する。その12個の音が均等に現れれば調性は生まれない、つまり無調になるといった具合である。

新ウィーン楽派と呼ばれるシェーンベルク、ウェーベルン、ベルクらがこの十二音技法を創始した。シェーンベルクの「5つのピアノ曲op.23」はその過渡期と言われているし、ウェーベルンの最初の実験作「子供のための小品」は見事な十二音技法作品なのである。

本盤は前述の2曲も含めた3人のピアノ作品を網羅して2枚組CDに収めている。調性が円熟した楽曲から完成された十二音技法まで、新ウィーン楽派の粋を集めたピアノ作品集である。

高橋悠治の名演もさることながら、連弾曲には坂本龍一が参加しているというのも面白い。

十二音技法から100年、そしてこれからの100年で音楽はどのような進化を遂げるのか。おそらく僕は半世紀生きるのが精々だろうが、若い世代たちがどんな新しい音楽を生み出すのか、ワクワクしながら生きていくだろう。

(タワーレコード オンライン事業戦略部 板谷祐輝)

新ウィーン楽派ピアノ作品集

 

ピアノ:高橋悠治
COCO-73171

被爆したピアノがチャリティーCDに ~「レコード芸術」2018年5月号「新譜月評」特選盤より

■MUSIC FOR PEACE~Plays on Akiko's Piano(J.S.バッハ、モーツァルト、ショパン)<タワーレコード限定>

1945年8月6日、勤労奉仕のため広島市の中心地に出ていた19歳の河本明子さんは被爆。郊外の自宅に辿り着いたものの、そのまま気を失い、翌日亡くなった。

彼女が愛奏した米ボールドウィン社製アップライト・ピアノは、爆風で傷を負いながらも損壊せず、両親によりそのまま保管された。この「被爆ピアノ」は、2005年に平和団体により修復され、広島交響楽団も保全活動を支援。同団と共演したピアニストたちに試奏の機会を与えてきた。

なかでもピーター・ゼルキンは、このピアノの独特な「声質」を気に入り、バッハ、モーツァルト、ショパンを立て続けに演奏。それを録音し、保全活動のチャリティーCDとしたのがこの1枚である。

実際、このピアノの音色には人肌のぬくもりが感じられ、ゼルキンの演奏自体も——例えば、ゴルトベルク変奏曲のアリアでの装飾音をたくさん付けた入念な弾き方——19世紀の巨匠が蘇ったような味わいに満ち、聴き応え十分の演奏が展開されている。

(タワーレコード商品本部 板倉 重雄)

MUSIC FOR PEACE~Plays on Akiko's Piano(J.S.バッハ、モーツァルト、ショパン)

 

ピアノ : ピーター・ゼルキン
KJ-26201 <タワーレコード限定>

ギタリストによるスタンダードと委嘱の作品 ~「レコード芸術」2018年5月号「新譜月評」特選盤より

■Harmonia -ハルモニア-

人気クラシック・ギタリスト、朴葵姫(パク・キュヒ)3年振りとなるアルバム「ハルモニア」。ハッと気持ちが解されていくような温もりのある音色。身を音に委ねたくなる気持ち良さ。

セルジオ・アサドや、アンドリュー・ヨーク、ローラン・ディアンス、ケヴィン・カラハンなど、ギタリストとして世界的に活躍しているアーティストが作曲したギター作品を取り上げています。アンドリュー・ヨークの《サンバースト》やセルジオ・アサドの組曲《夏の庭》などの名曲のほか、日本を代表する2人のギタリスト(渡辺香津美、押尾コータロー)に委嘱した初収録曲2曲にも注目です。

ギタリストへの提供は初となる押尾コータローの《ハルモニア》は、まるでギターが歌っているようなポップでキャッチーなメロディが魅力的。雄大な世界観とパク・キュヒのトレモロが美しい渡辺香津美の《ペガサス》。20世紀に生まれたクラシック・ギターのスタンダード曲が満載です。

(タワーレコード商品本部 上村 友美絵)

Harmonia -ハルモニア-

 

クラシックギター:朴葵姫(パク・キュヒ)
COCQ-85415

推した人
板谷祐輝
推した人
板谷祐輝 タワーレコード オンライン事業戦略部

2011年タワーレコード入社。オンラインショップのマーケティング・事業戦略を担当。好きな音楽はクラシック、現代音楽、アンビエント、欅坂46。趣味は作曲、ピアノ、クラリ...

板倉重雄
板倉重雄 タワーレコード商品本部洋楽部

レコード「板」の「倉」を守る「重」たい「雄」です。「レコード芸術」購読歴は40年、レコード業界歴は24年。現在タワーレコード株式会社、商品本部洋楽部勤務。SPレコード...

上村友美絵
上村友美絵 タワーレコード商品本部

音大を卒業後、タワーレコードに入社。クラシックに限らずピアノものが好き。趣味は映画に舞台鑑賞。

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